薫大将と匂の宮 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
3.00
  • (1)
  • (3)
  • (7)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 136
感想 : 8
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488404215

作品紹介・あらすじ

光源氏の正妻・女三の宮の不義の子とされる薫大将と、源氏の孫にあたる匂の宮――源氏の亡き後、二人の貴公子の織りなす物語が『源氏物語』でも名高き「宇治十帖」である。その「宇治十帖」を最後に千年以上に亘り未完とされていたこの物語には、未だ世に明らかにされていない幻の続編が存在した。貴公子たちの恋の鞘当てが招く、美しき姫君たちの死。平安の宮中を震撼させる怪事に、紫式部と清少納言が推理を競う。推理作家にして古典文学者、ふたつの顔を持つ著者のみが書き得た絢爛たる王朝推理絵巻が、いま甦る。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 皆さんのレビューから読みたくて。とっても面白かった!教科書と漫画『あさきゆめみし』での知識しかなかったので冒頭の人物関係図に躊躇したが全く問題なく物語の世界に引き込まれた。女性達がかわいらしく描かれ随所に笑いもある読みやすい文体が70年前発表の作品とは驚き。

  • 薫の大将と匂の宮、源氏物語の宇治十帖には続編が?
    二人の恋の鞘当ての果てに姫君の死。
    自殺なのか他殺なのか、犯人は誰なのか。
    紫式部と清少納言が推理を競う。

    冒頭はクドクドと長く、読み始めたことを少し後悔し始めたのだけど、途中からグッと引き込まれる怪事件。
    薫るからこそ、存在を隠せない二人の確執。
    自己顕示欲の強い、清少納言から挑発するような手紙を貰いながらも、自分の信じたいものを見極めようと苦しむ式部。
    その辺りが断然面白い。

    源氏物語という時代を考えると、現代とは価値観も違うだろうし、実際はどうなんだろうと気になってくる。
    表題の他にも、清少納言と則光のお話、源氏が鯉を食べなくなった話等の小編もあり。

  • 人は源氏物語を読まなければならないと、強く述べている私だが、その理由としてさらに挙げられる証しがあった。
    こんな名著を楽しむことができるのである。

    けれども、申し訳ない。
    初めてこの題を見た時、ライトノベルか、ボーイズラブか、なんにせよ私にはあまり用のないジャンルだなあと思ってしまった。
    作者の名前も、岡田鯱彦などというその字面からして、そんな感じなのである。

    けれども、出版社が、東京創元社であることに驚いた。
    作者名を検索すれば、国文学者であり推理小説家であると出る。
    表題作はといえば、まず1955年に出版された後、数々の出版社から再版されているという。
    これは、けして今時風のかるい読み物ではない。

    国文学者というプロが書いた、
    数々の出版社が埋もれさせてはならないと認める、
    面白い本に違いない。

    手にした! 読んだ! 
    間違いなく、面白かった!

    薫大将、匂の宮という、源氏物語の終盤、宇治十帖に登場する人物が関わるミステリーである。
    探偵役は、紫式部。
    という概略を聞けば、たいていの人は疑問に思うだろう。

    源氏物語を知らないと、面白くないのか? 

    まったく知らなかったならば、混乱するのではないか、というのが私の答えである。

    源氏物語の話、登場人物のあれこれ、紫式部についての説明はあるのだ。
    巻頭には、人物紹介と、家系図まで載っている。
    文中では、その長い経緯を、プロの技で、必要な時々に、簡潔にまとめて説いてある。
    ぼんやりとでも知っている者ならば、はいはいと確認できる優れた説明なのだが、さっぱり知らない人からすれば、これは実はかなり難物なのではないか。

    「大君」と書かれてある。さてそれは誰だろう? そもそもどう読むのだろう?

    オオキミ、タイクンなどと読むのも当たりである。どちらも立派な男性だ。
    しかし、源氏物語の場合、これは「おおいぎみ」と読んで、宇治十帖に出てくる、とある「姫君」のことになる。

    小少将の君、中納言の君、木工の君は、名前に男性的な雰囲気があっても、女性である。

    薫大将、匂の宮は、その名に女性的な雰囲気があっても、男性である。

    そんな人物たちが入れ替わり立ち替わり次々と現れるのだが、しかし、そのたびに、
    これは誰? どんな人? どう読むの? そもそも男? 女?
    などということに頭をひねっていてはだめなのだ。
    これはミステリーなのだから! 
    我々の頭は、事件とその推理に使われるべきなのである。

    ああ、ではやはり、源氏物語を読まなければならないなと思われた方はこちらへ。
    源氏物語について、訳文を比較したもの、漫画を比較したものなど、ガイドとなれるページが、当ブログにはちゃんとある。(※)

    そして、源氏物語を読んだ方、好きな方、熱く語りたい方にとっては、この本は間違いなしに面白く、興味をそそるものと言えよう。

    表題作『薫大将と匂の宮』は、まさに彼らでなければならないミステリーとなっている。
    私は宇治十帖については、実はあまり好みでもなく評価も高くなかったのだが、このミステリー1編で、その本家作品の評価を少し上げてしまったくらいだ。
    源氏物語について、作者紫式部について、知っていればいるほど、作中にこめられたくすぐりを見いだして、笑ったり膝を打ったりできるのだ。

    さらに、収録された短編『「六条の御息所」誕生』においては、まさに読みたかった知りたかったことがテーマにされているのである。
    国文学者という専門家が、源氏物語のファンに対して、程度の差はあれ彼らが気になっているだろうことを、解りやすく面白く物語にして説いてくれるのだ。
    「作者がこしらえた謎でなく、国文学上のほんとうの謎を解く推理小説を書いてくれ」と、友人の国文学者に言われたのが執筆のきっかけだという。(351頁より)
    友人の学者にも感謝である。

    「そういう読み方は知らなかった」
    「うなずけないわけではないが、私は少し違うと思う」
    「私はむしろこうだと思う」
    「見方を変えればああだと思う」などと、語りたい方々の話にさらに拍車がかかること請け合いだ。

    収録作品は以下のとおり。
    『薫大将と匂の宮』
    『艶説清少納言』(ミステリーではない)
    『「六条の御息所」誕生』(推理小説)
    『コイの味』(怪奇譚)

    エッセイ
    『恋人探偵小説』
    『清少納言と兄人の則光』
    『「六条の御息所」誕生ーーについて』

    ところで、作者名になんとはなしにエロさを感じた私も間違いはなかった。
    冒頭に、オッサン的エロ話が少しばかりある。


    ※ 源氏物語について、ブログページへのリンク
    「訳くらべ」
    https://ameblo.jp/konstanze0317/entry-12539752478.html?frm=theme

    「絵巻くらべ」
    https://ameblo.jp/konstanze0317/entry-12541292182.html?frm=theme

    「あれやこれや」
    https://ameblo.jp/konstanze0317/entry-12541585576.html?frm=theme

  • 収録作品は以下の通り。

    薫大将と匂の宮(1950年)
    艶説清少納言(1953年)
    「六条の御息所」誕生
    コイの味
    恋人探偵小説
    清少納言と兄人の則光
    「六条の御息所」誕生 について
    解題
    解説

    解説は森谷明子。
    カバーイラストは千海博美、カバーデザインは山田英春、挿絵は鈴木朱雀。

    清少納言、紫式部が作品を書き綴る様子を国文学者の視点から想像した筋立てで、感情の動きに焦点を当てている。
    感情の描写がやや説明的に感じられる場面があるが、推理の要素がある表題作を含めて、筋がハッキリしている。
    なお、原文がそのまま引用される部分には筆者による現代語訳があり、巻頭の系図とともに、事前知識のない人でも読みやすい構成になっている。

  • 源氏の宇治十帖の登場人物を巡って起こる事件に巻き込まれた紫式部。清少納言との推理合戦など、虚実混じった語りのアイデアが面白い。

  • 初めの方で挫折するのが続き、何度か読み直して今回は読破!

    後書きで気付いた。まんまと著者のパラレルワールドに捉われていたことに..。
    紫式部の主は中宮、藤原彰子。
    二の宮(敦成親王/後一条天皇)
    三ノ宮(敦良親王/御朱雀天皇)
    中宮→明石中宮=今上帝(朱雀帝の子)
    旬の宮→明石中宮の子、二の宮?
    薫→光源氏の子 (柏木と女三の宮の不義の子)

    現代のミステリードラマみたいで面白い。

  • 2020年8月7日購入。

全8件中 1 - 8件を表示

岡田鯱彦の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×