土曜はカフェ・チボリで (創元推理文庫 M う 2-3)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 667
感想 : 32
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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488480134

作品紹介・あらすじ

児童書の出版社で働く香衣は、とあるきっかけで“カフェ・チボリ”に通うようになる。そこは土曜日しか営業せず、おまけに店主は高校生という不思議なカフェだった! 美味しいデンマーク料理と温かいもてなしにくつろぎながら、常連客たちと身の回りで起こった謎について語りだす。それらは『マッチ売りの少女』や『人魚姫』など、アンデルセン童話を連想させる出来事で――せわしない日常にひと時の安らぎをもたらす、安楽椅子探偵譚!

感想・レビュー・書評

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  • 児童向け図書を扱う老舗出版社のアカツメクサ出版に勤める笠原香衣は地元の飲み友達石川さんと土曜日しか営業しない”カフェ・チボリ”というデンマーク料理店のお客様、1号2号になります。
    そこに毎週集まる常連客と店長の高校生レンと従業員のシゲさんがアンデルセンの童話に関係ありそうな日常に起こった謎と事件を解き明かします。
    デンマーク料理を食べながら語られる、安楽椅子探偵譚。


    第一話「マッチ擦りの少女」は何て地味な謎なんだろうと思ってしまい、読むのをやめてしまおうかと思ったけれど、第二話、三話と読み進むうちに面白くなりました。

    連作短編集ですが、各話が全部最後につながるのは伏線回収がお見事です。

    第二話の「きれいなあひるの子」はドジな犯人にちょっと笑えるミステリーでした。

    第三話の「アンデルセンのお姫様」の昔、伝説の女優だったレンの伯母の百合子さんの話が私は一番好きでした。

    第四話「カイと雪の女王」はお店存続の危機が起こるハラハラするミステリーです。

    高校生の店長レンのキャラクターが新鮮でとても素敵なのでこんなお店があったら行ってみたくなります。

  • netgalleyにて読了

    カフェ・チボリに集まる人々が身近で起こる謎を解く、アンデルセンの物語に因んだ四話からなる短編集。

    四話目が一番読みやすかった。

    ちょっと辛口になってしまうが、一話、二話は正直なところ、途中で内容に集中出来なくなるような話運びだった。
    アンデルセンの物語に謎解きの発想をあてるのは面白い試みだと思うのだが、登場人物の多さと、内容を盛り込み過ぎなのか少々無理のある展開で、会話が説明調子になり、話に引き込まれない。
    後書きを読んだらその理由が分かり、ちょっと納得した。

    三話、四話では話の運びがすっきりして、物語に集中して楽しめた。
    デンマークの文化や料理、日本語の知識などを学べるところも嬉しい。
    蓮くんと鷲雄伯父さんのその後が気になる。
    2021.4.28

  • 土曜日しか営業しない、店主が高校生のお店のお話し…という設定はすごく好み。
    デンマークやアンデルセンも上手く絡めていて楽しく読めました。
    三話目の『アンデルセンのお姫様』が一番しっくりくる感じです。

  • デンマーク料理を出す土曜日限定のカフェで、常連さん達と謎解きをするという短篇集。

    面白いし、爽やかで読みやすい。
    …けれど、最初の2話はややご都合主義な印象。
    3話からは自然に展開していって、もっと読みたくなった。

    行きつけのカフェはあっても、スタッフさんや他のお客さんと仲良くなれることって今は少ないと思うので、こういうの良いなぁと思う。

  • 土曜日しか開店しない、デンマーク料理を出すカフェでの日常の謎

    収録は4作

    ・マッチ摺りの少女
    ・きれいなあひるの子
    ・アンデルセンのお姫様
    ・カイと雪の女王


    児童書の出版社で働く香衣
    たまたま見つけた「カフェ・チボリ」の一人目のお客さんとなった縁もあり、土曜日しか開店しないというそのカフェに毎週通い続けることになる
    美味しいデンマーク料理と、デンマーク語でくつろぎ、居心地の良い空間を意味する「ヒュッゲ」を提供するお店で
    常連客たちの身の回りで起こったアンデルセン童話を連想する日常の謎を推理する
    初老の男性と高校生のレンが営む店で出会う日常の謎と安楽椅子探偵の物語

    店名のチボリの由来はデンマークの首都・コペンハーゲン駅の目の前にある公園の名前である「チボリ公園」から


    ・マッチ擦りの少女
    教会で起こったお金の紛失事件と、部屋で一人マッチを擦っていた女の子

    ・きれいなあひるの子
    陶芸教室で作った素人の作品を貸して欲しいといった美術商
    別荘の時計と共に皆に見せたいというが、その真意は?

    ・アンデルセンのお姫様
    オーナーの叔母で元有名女優が、昔にデンマークのバーで出会った女性の正体は何か?

    ・カイと雪の女王
    最近よく起こっている放火事件、そしてカフェ・チボリの常連客での不審な出来事や脅迫状
    犯人は誰か?そして本当の目的とは?



    カフェが成立している設定に色々と無理があるものの
    そこはフィクションと割り切れば、私好みの日常の謎の物語が残る
    謎だけでなく、カフェの料理やドリンクなど、とても美味しそうに感じる
    これを読んで、酒屋で見かけたカールスバーグを実際に買ってしまった

    謎に関してはまぁそこそこ
    3話目の真相に関して、最終的に真相は不明のままという事だけど、物語の構造としてはやはりレンの推理が正しいのでしょうね
    個人的には王女様という香衣さんの推理が面白いと思う

    最後の謎というか、解決編の香衣さんの収め方がとてもよい
    聡明な探偵でも真相を当てられるとは限らないし、事件そのものを納める事までは考えていない
    そして何より自分や周囲の感情の機微には疎かったりする不思議
    灯台下暗しのように、近い人の心情こそよく見えないということなのでしょうかね

    でもまぁ、その辺の展開はこの手の物語の定番ですからねぇ



    デンマークやアンデルセンについてちょっと知識が得られる

    そう言えば、アンデルセンのエピソードで
    自身の葬儀の際に、音楽のリズムは子供たちの小さな歩みに合うようにしてくれと生前に言っていたというのがあるけど、本当ですかね?

  •  連作短編小説。
    あらすじ
     児童書の出版社に勤める香衣。三十歳女性。一人暮らしで家族とは距離を置きたい。十歳下の弟は見た目もよく優秀。そのため弟が生まれてからは、自分は家族から余計ものに感じている。飲み仲間のおじさん石川さんと、偶然、公園のような邸宅の中にあるカフェ、「カフェ・チボリ」を見つける。またお客さん第1号グループとして、元大学助教授の如月さんとも知り合う。そこは高校生がオーナーで、土曜日だけ営業している。デンマークにちなんだ料理を提供し、家具などもデンマークにちなんでいる。

    「マッチ擦りの少女」・・・石川さんの謎解き相談。石川さんは教会の子供会の手伝いをしている。古い教会の建物で女の子がマッチをするのを見かけた。同時に、付き添いできていたシングルマザーのお金がなくなっていた。石川さんは、女の子がお金を燃やしたのではないかと気にしている。その謎を解き明かしたのが、お店の店主高校生レンくん。彼は実はすごいお金持ちのご子息で、私立の超進学校でトップクラスの生徒らしい。彼が言うにはマッチを擦っていたのは臭い消しのためだという。

    「きれいなあひるのの子」・・・石川さんが連れてきたお客様、松山さん。趣味は陶芸。陶芸教室に出入りしている美術商の上条夫人は少し派手だ。あるとき上条夫人は松山さんが作った鳩モチーフのカップを気に入り、別荘に招待してくれた。そこにある鳩時計などに並べて飾り、お客様をもてなしたいのだという。ところが泊まった次の日から様子がよそよそしかった。
     チボリの面々は色々と相談し、またもやレンが解決。松山さんが作品をくるんでいた布、それは骨董品に興味があった父親が母親にプレゼントしたもの。古い印度更紗というもので、小さなハギレでもものすごい価値がある。おそらく上条夫人は美術評論家の田中とと一緒になって盗もうと計画した。しかし松山さんのお母さんは、布の裏側に名前を書いていたので盗めなかったというのだ。

    「アンデルセンのお姫様」・・・店に来ていた元女優百合子。彼女は20代の時に一世を風靡した女優。そしてレンの叔母。彼女からのミステリー話。若い頃、映画監督と一緒にデンマークに滞在した時、訪れたバーでの出来事。監督がこっそり会っていた、デンマーク人女性とは何者だったのかという話。結末・・・百合子と監督が実は両想いだったのではないかという話。肝心の?絵画盗難・返却事件の犯人は誰かということは分からず?

    「カイと雪の女王」・・・馴染みの教会ではクリスマスに向けて子供たちの劇の演出が始まっている。しかし練習場所の古い会館が燃えてしまう。事故か事件かは不明。また香衣にはガラス入りの封筒が届けられたり、カイの友人のユイには謎のEメールが届いたりする。結末・・・ガラス入り封筒の犯人は美術評論家の田中。彼はお世話になっている上条夫人の実家、粟家のコレクションを手に入れるため、カフェ・チボリを閉店させようとしていたのだった。結局教会の火事は事故。またユイへのメールはレンのことを心配した、レンの伯父からのものだった。

    《感想》ゆるいミステリーだった。ミステリーと言えないものもある気がするし、解決してないものもあると思う。人間関係が書き込まれているかと、そういう感じもあまりしなかった。例えば香衣と家族との関係はあやふやなまま、香衣が納得しているようだったし、香衣が好きになった相手は、カトリック教会の神父さまというオチもあっさりついてしまった。全体的にコレという特徴のない作品だったけれど、一つ、デンマークというものを中心に置いているところが面白かったので最後まで読む。美しい庭園や、美味しそうなパン、ふわふわのルームシューズの様子なんかが書かれていて、それらにつられて最後まで読んだ感じ。

  • タイトルに惹かれて読んでみました。
    最初は「こんな感じで最後までいくのかな」と思いましたが、最終章は面白く読みました。
    現実的ではない設定でしたが、最後はあたたかな終わり方で優しい気分になれます。

  • 表紙の装丁が素敵!と思って手に取りました。アンデルセン童話になぞらえた謎を、ちょっと風変わりなカフェの店主が解決するお話。
    店主である高校生のレンくんが、大富豪の一族であるという設定からして興味を惹かれるのだけど、最後の方は店員のシゲさんの存在の方が気になって仕方なかった。
    もちろん「カフェ」というだけあって、美味しそうな描写もたっぷり。デンマーク料理が食べてみたくなりました!

  • おもしろくない

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