夜の写本師 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488525026

感想・レビュー・書評

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  • 魔術師アンジストに育ての親エイリャと村の幼馴染フィンを殺された主人公カリュドウが「夜の写本師」になり復讐を果たすファンタジー。

    カリュドウが写本師になるまでの出会いと別れが辛かった。とりわけ魔術師として修行していたときの。結構インパクト強くて、人の闇、自分の闇との付き合い方。覚悟。

    後半は「月の本」。千年もの因縁、3人の魔女の話は、ずっとクライマックスなので息を呑む展開。魔術師アンジストの若き日の話もあり、最終的に救済へ。カリュドウを見守っている魔導師ケルシュがいい。続き読みたい。

  • 王道のファンタジー。
    清濁合わせのみながら、ファンタジーらしく勧善懲悪を推し進める。最後に過去の話で救いが見つかり大団円へ。
    続けて読む気配濃厚なシリーズファンタジー。

  • 右手に月石、左手に黒曜石、口のなかに真珠をもって生まれてきたカリュドウ。育ての親と友人を目の前で惨殺した大魔導士アンジストに復讐を果たすべく<夜の写本士>となる。

    世界観、雰囲気がとても好きだった。ため息がでる素敵さ。
    冒頭から「右手に月石、左手に黒曜石、口のなかに真珠」と、おしゃれ…!
    実は、アンジストに力を奪われた女(たち)の生まれ変わりだったカリュドウ。月と闇と海の力は既に奪われ、カリュドウが持っているのは闇の月のみ。オサレすぎる…。しびれる。終始、雰囲気が素敵。

    カリュドウはなぜ男として産まれかわったのか、アンジストは幼きカリュドウの力をなぜ見破れなかったか(ガエルクのもとで魔導師の修行をしている時に、魔導師としての才能が爆発していたのに…)などなど、腑に落ちないところもあった。
    魔導師の道が閉ざされ途方に暮れていたカリュドウに声をかける兄弟子たちの言葉や、アンジストとの戦いに向かう前のヴェルネ(同僚の写本士)の言葉が好きだった。アンジストは孤独だが、カリュドウには助けてくれる仲間が多くいて、カリュドウはそれを受け入れることができたのだ。
    あと、ケルシュが悪戯好きのおちゃめなお爺ちゃん(実は強い)という感じで、好き。

    カリュドウの修行の話や、カリュドウの前世の女性たちの話は壮大で読み応えがあった。逆に、その後のアンジストとの戦いはあっけなく終わったように感じる。
    結局、アンジストを救う形で決着がつくが、そのことがラストのカリュドウが涙して受け入れるシーンと、最後の締めの言葉につながり、千年もの戦いに終わりがあってよかったと思う。

    ”時はめぐり、やっと満ちた。
    月の光と闇と海のように。”(p334)

  • ファンタジーらしいファンタジーでとても満足。
    明るい話ではないし、人格者みたいな人もいないけど、
    世界に浸れる。
    話の展開はややわかりづらい部分もあったけどそれもファンタジーとして楽しめた。

  •  予想以上に壮大なファンタジーでした。読み終えた時には最近味わったことのない重厚な感じで心が一杯に。

     物語の面白さだけなら星5つですが、少しわかりにくい描写が何箇所かあったので(カリュドウが闇に染まった時の見た目の変化とか)、星4つにしました。

     魔道師に対抗するために、魔道師になるのではなく、魔法を操る「夜の写本師」となる、というのが面白い着想。綺麗な飾り文字で書かれた書物に魔法が宿っているという設定は魅力的です。

     カリュドウは夜の写本師としてアンジストと戦ったけど、その後は魔道師になったようですね。

  • タイトルに惹かれて購入~。ど派手で容赦のない魔法の顕現や何種類もの魔術の手法や修行についての詳細な描写が面白くて、どんどん読み進められました。
    物語では主人公のカリュドウと三人の魔女、そして大魔道師アンジストの千年にわたる宿命が明らかにされていきます。
    「書物の魔法」…本そのものやページの紙片や書かれた文章が魔力を持つなんて、とても魅力的ですね。

  • 久々にファンタジーらしい、ハイファンタイジーを読んだような気がした。文化風土が違うから無理なんだろうなと思っていたタニス・リー的なファンタジーを日本人が書けるようになったんやなぁ。

    井辻朱美が解説2本を掲載するぐらいの気合の入れよう、それに合いふさわしいボディのしっかりした内容。

    写本と魔術の関わりとか、ところどころ疑問符付くところもあるし、途中で人間関係(特に生まれ変わりの因果関係)が分かりづらい難点はあるものの、冒頭の登場人物紹介を都度見開けば思い出すレベル。

    ボディがしっかりしてる分、ボーッと読んでると置いてかれる感じがあるので、読むのに少々の集中力が必要だけど、しっかり読めば読んだ分の手ごたえは感じられる。この作者このシリーズ要注目だなこりゃ。

  • いつの間にやらこの世界観に没入してしまっていた。徐々に引き込まれていった。ずっと読んでいたいような感じがした。終わってしまったのが寂しかった。魔法の種類や仕組みなどもおもしろかった。

  • 良作。写本師という珍しい題材だが、描写にはリアリティと説得力がある(魔法のメカニズムとかをもっと詳しく知りたかったなとは思うけど)。途中でいきなり過去の話が始まったときは面食らったが、読み終えるとそういうことだったのかと納得した。救いのある終わり方が良い。

  • 硬派で格調高い大人向けのハイ・ファンタジー。
    千年にわたる生まれ変わりと復讐の物語を、最低限度の濃密な描写で一冊におさめているので、だらだらと日をまたいで読むよりは一気読みがおすすめ。
    文体が格調高すぎてたまに読みづらい感じがあるけど(「全けき」とか)、それで退屈になったり内容がダレることもなく、展開についていけなくなることもなく(登場人物の名前は何度か確認しましたが)、描写が説明的でうるさく感じることもなく、魔法の系統や各国の雰囲気の違いもすんなり頭に入ってくる。構成・設定がしっかりしていて、かつ抑制がきいているからだと思う。

    写本師という設定が絶妙で、この世界観をもっと楽しみたいと思える一冊だった。

著者プロフィール

山形県生まれ。山形大学卒業。1999年、教育総研ファンタジー大賞を受賞。『夜の写本師』からはじまる〈オーリエラントの魔道師〉シリーズをはじめ、緻密かつスケールの大きい物語世界を生み出すハイ・ファンタジーの書き手として、読者から絶大な支持を集める。他の著書に「紐結びの魔道師」3部作(東京創元社)、『竜鏡の占人 リオランの鏡』(角川文庫)、『闇の虹水晶』(創元推理文庫)など。

「2019年 『炎のタペストリー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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