- Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488564070
作品紹介・あらすじ
仄暗い土俗の闇から浮上する怪談文芸。時を超えた地霊の囁きに耳かたむける作家たち。天空から飛来する恐怖の大王(テロリズム)が全世界を戦慄させた、二十世紀から二十一世紀への巨大な転換期にあって、平成日本の怪奇小説シーンは、日本と日本人の深淵へ肉迫してゆく……平成時代に生まれた怪奇小説の名作佳品を、全三巻に精選収録するアンソロジー第二弾!
感想・レビュー・書評
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少し気負って1巻目を読み始めたのに比べ、2巻目は肩の力を抜いてページを繰って楽しく読み終わることができました。
これまでジャンルとして意識してこなかったホラー、「怪奇小説」ですが、ここのところ少し読み慣れてきて、怪異やできごとの正体がはっきりしないものが読んでいて怖く、起承転結がきっちりしているものはホラーというよりミステリだったりファンタジーだったりとして読むことができ、幻想的なもの、足元が揺らぐようなものは自分にとっては読みにくい…と、自分が読むとそんな感じになるようです。
あと、京都とか、尾道とか、氷川神社とか、具体的で実在する地名と結びついている作品には心惹かれます。
以下、収録作品別一言コメント。
「匂いの収集」小川洋子
「博士の愛した数式」は読んだことがありますし、芥川賞を受賞されたことも存じ上げていますが、こんな怖い話を書かれているとは知りませんでした。
恋人同士の戯れの会話が、実は文字どおりの意味を含んでいることに思い至った時が一番ショッキングでした。なにしろ指を切り落とすことに許諾を与えてしまっているのですから…。
「一文物語集」飯田茂美
愛してやまないサイト「デイリーポータルZ」に「書き出し小説大賞」なる企画があるのですが、これを超えてきました。
1つ2つなら自分にもできそうな気がするところがポイントなのでしょうか。これだけの数をこれだけの質でそろえるのはただ事ではないと頭ではわかっているのですが…。
あと、全然読み足りません。もっとたくさん読ませてほしい。
「空に浮かぶ棺」鈴木光司
既読。内容も覚えていました。
「リング」「らせん」「ループ」のシリーズも既読。シリーズ3冊を読んだ時の気持ちまで何となく思い出しました。当時はミステリとして読んだように思います。
それよりも、ついこの間まで「貞子」が一般的な名詞として人口に膾炙しているなんて思いもよりませんでした。長いストレートヘアに前髪を垂らして顔が隠れている状態を「貞子」と形容している人がいたのですが、その「貞子」がこの「貞子」だとは全然思わなかったのです。何ででしょうねw。
シリーズから1編だけアンソロジーに抜粋されると、どう読んでいいのか悩みますが、今回はシリーズ全体を把握していて、「リング」シリーズをこの一編に代表させちゃっていいの?って少し心配になりました。
「グノーシス心中」牧野修
「嫌われるために生まれてきたような子供だな」ってなかなかのパワーワードだと思いますが、そんなことを言われて当然の千秋にもカグヤマにも全く感情移入できません。主人公に全く共感できない作品って、正直どう読んでよいのか見当がつきません。ホラーを読むきっかけになった『贈る物語 Terror みんな怖い話が大好き』収録の「パラダイス・モーテルにて」を読んだときも同じようなことを思いました…。
「水牛群」津原泰水
蕎麦屋でいきなり「伯爵を呼べ」というのだから現実ではない世界なのかと思って読み始めたらそうではありませんでした。
編者は「彫心鏤骨」という言葉をこの作品と「グノーシス心中」と「水牛群」に使っていますが、辞書を引いて初めて知ったこの言葉に、なるほどと思いました。
「幽明志怪」というシリーズから一編を抜いたもので、ある程度シリーズの背景を知っていればまた別の感想があったかもしれません。
でもとりあえず蓋が見つかり、料理も食べることができてよかったね、と安心しました。
「厠牡丹」福澤徹三
厠で想像したのも、私も、同一人物?
じゃあその人はどうやってこれを書き残したんだろう…?なんて考えてしまいます。
「海馬」川上弘美
「おおかみこどもの雨と雪」だなあ。本来生きていくべきところに帰る日はやっぱり大嵐の日。海に帰っていく子供を見ているうちに「私」も帰りたくなったのかしら。しんじつの名前、忘れていなかったんですね。
「海馬」に人魚的なものを想像していましたが、たてがみがあるんですね。文字どおり、馬を想像すべきなのかなあ。
「乞食柱」岩井志麻子
乞食柱を超えてきた乞食は、何の象徴だったんでしょう。アダムとイブにリンゴを食べさせた蛇?
独りサトは真の闇に取り残された、の喪失感が染みます。
「トカビの夜」朱川湊人
トカビとの交流と楽しげな様子に、生前にもっと一緒に遊んでおけば、意地悪するんじゃなかった、っていう取り返しのつかなさがどんどん膨れ上がります。
三十余年経った私には見たくても見えないものになったトカビは、きっと、パルナスの歌や、怪獣図鑑や、リモコン戦車と同様、手元から失われてしまってもふとした拍子に鍵が開く子供時代の思い出です。失われて取り返しがつかないからこそ、今の自分にとってかけがえのない物なのではないでしょうか。
「蛇と虹」恩田陸
会話…というか、お互いに対する呼びかけが進むにつれ、徐々に輪郭がはっきりしてくる事件…。最初ちょっと流し読み気味だったのが、途中から正座モードで読みましたw。
蛇と虹、似てますよね。
「お狐様の話」浅田次郎
なによりもまず、文体に感じ入りました。どうしたらこんな折り目正しくも迫真の文章が書けるようになるのか、素人にとってはもはや不思議としか言いようがありません。編者は「達意の筆」と賛辞を送っています。作品によって自在に筆を使い分けるさまが見事です。
そして、「狐憑き」の手加減のなさに息をのみます。普段ラノベ・ファンタジー界隈で見かける狐憑きはもっとヌルい感じのものが多いのですが、この作品ではこれぞ「怪力乱神」というべきでしょうか。腹が減ってあれやこれや飲み食いして、最後に食ったものが…。
浅田次郎、結構たくさん読みましたがこういった系統のお話は初めてです。
「神坐す山の物語」買って読みたいです。
「水神」森見登美彦
この後京都の話が2つ、尾道の話が1つと、いずれも具体的な地と切り離せない作品が収録されています。その中では具体的な実在の地名やランドマークをこれでもかとばかりに盛り込んだこの話が一番好きです。
てか、森見登美彦さんって何となく京大ミステリ研究会出身かと思ってたけど違うんですね(そう言えばミステリは書いてらっしゃらないw)。でも、京大出身の方が描く京都っていかにも「学生にとっての京都」っぽく見えて大好きです。
最初から最後まで文字どおりの意味で生臭いお話ですが、京都の水道水って特に夏は臭くて飲めたものではないので、そんなところからアイデアを得た…そんなことないかw。
「帰去来の井戸」光原百合
尾道のお話です。誰もが尾道を思い浮かべるだろう舞台を仮の名前にしてしまう意味がわかりません。帰ってきたくなる地なのですから、尾道のままでいいのでは?って思ってしまいます。
満月の夜に起きることの描写が舞台も相まってとてもイメージしやすく、頭の中で絵コンテを描きながら読みました。
自分も船に乗って帰ってきてみたいがために敢えて市外の病院を選んだ七重叔母さんは、どんな姿で帰ってくるのでしょうか。
「六山の夜」綾辻行人
京都のお話。やっぱり地名やら事物は架空の名前になっていますが、現実の京都と「ちょっとずれている」ことが気持ち悪さの核になっているように思えます(例えば送り火の文字なんかがそうです)ので、これはこれでいいのかも。
連作短編集から一編だけを抜いて掲載しているので、座りが悪いように思えます。読者としてどんな姿勢で読めばいいのか決めかねます。
ただ、上にも書いた「ちょっとのずれ」が見事に気持ち悪さを演出しています。
「歌舞伎」我妻俊樹
不穏です。
でも掌編なだけあって、不穏なまま終わってしまいます。尾を引く不穏さが狙いなのかも。
「軍馬の帰還」勝山海百合
故郷に帰ってくる話。
人も帰ってくるのだから馬も帰ってくるのかもしれませんね。
「芙蓉蟹」田辺青蛙
いつの間にか視点が逆転しているパターンのお話。こういうパターンでいつも思うのは「このお話を書いたのは誰?」。怖さを和らげようと無意識に逃避しているのかも。
「鳥とファフロッキーズ現象について」山白朝子
ストーリーに異様な力があって引き込まれました。
この鳥っていったい何でしょう。彼が忠誠を誓う人が欲しいと望んだものを何であろうと持ってきて、空から落としてくれる鳥。リモコンのような具体的なものから、もう二度と顔を合わせたくないと思った相手の心臓まで。そんな鳥と暮らすことが当たり前となっている不思議な日常。
ちなみに、見た目的には松本零士の描く鳥さんのイメージです。
平成怪奇小説傑作集2(創元推理文庫)収録作品一覧
「作品名」 (作者名『収録書名』)
「匂いの収集」(小川洋子『まぶた』(新潮文庫2004)
「一文物語集」(飯田茂美『一文物語集』(e本の本2011)
「空に浮かぶ棺」(鈴木光司『バースデイ』角川ホラー文庫1999)
「グノーシス心中」(牧野修『忌まわしい匣』集英社文庫2003)
「水牛群」(津原泰水『蘆屋家の崩壊』ちくま文庫2012)
「厠牡丹」(福澤徹三『再生ボタン』幻冬舎文庫2004)
「海馬」(川上弘美『龍宮』文春文庫2005)
「乞食柱」(岩井志麻子『魔羅節』新潮文庫2004)
「トカビの夜」(朱川湊人『花まんま』文春文庫2008)
「蛇と虹」(恩田陸『いのちのパレード』実業之日本社文庫2010)
「お狐様の話」(浅田次郎『あやし うらめし あな かなし』集英社文庫2013)
「水神」(森見登美彦『きつねのはなし』新潮文庫2009)
「帰去来の井戸」(光原百合『扉守 潮ノ道の旅人』文春文庫2012)
「六山の夜」(綾辻行人『深泥丘奇談』角川文庫2014)
「歌舞伎」(我妻俊樹『てのひら怪談 ビーケーワン怪談大賞傑作選』ポプラ文庫2008)
「軍馬の帰還」(勝山海百合『てのひら怪談 ビーケーワン怪談大賞傑作選』ポプラ文庫2008)
「芙蓉蟹」(田辺青蛙『あめだま 青蛙モノノケ語り』青土社2013)
「鳥とファフロッキーズ現象について」(山白朝子『死者のための音楽』角川文庫2013)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
平成怪奇小説傑作選2巻。平成10年~19年までの作品を収録。
1巻の作品は全部未読だったけど、2巻では読んだことのある作品がちらほら出て来ました。
思えばブクログを始めたころ(10年前!!)は朱川湊人さんの本にはまっていて良く読んでいたなぁと「トカビの夜」を読んで思い出した。最近読んでないから久々に読みたくなりました。
未読の作品では、岩井志麻子「乞食柱」光原百合「帰去来の井戸」が好きです。飯田茂美「一文物語集」も面白い。
3巻にも期待。 -
ホラーアンソロジー2巻。今巻は初読みの作家さんが少ない…4人。「そうか、この作品はホラーカテゴリでも読めるんだ…」とおもったりしました。
既読の作品は6作品でしたが、聴いてるポッドキャスト『ハードボイルド読書探偵』で「シリーズもののうちの1つが多い」って指摘されててハッとしました。そうだ。。
津原泰水さんの「蘆屋家の崩壊」、しっかり読みたくなりました。綾辻行人さんの深泥丘シリーズは完走済。
今回の収録作が入ってる、小川洋子さん「まぶた」、川上弘美さん「龍宮」、森見登美彦さん「きつねのはなし」は蔵書にあるのでまんまと再読しました。好き。
気になったのは、飯田茂実さん「一文物語集」。収録作の奇妙な世界にもグッときて、編者解説でこの存在を教えてくれたのが二階堂奥歯さんだと書かれていて完全に撃たれました。舞踏家さんなのかな、すごいな。
3巻も楽しみです。 -
第2集は平成10年~19年までの18作。1集はほぼ既知の作家だったけれど(作品を読んだことがなくても名前は知っていたり)今回は名前すら初めて知る作家が数名。昭和生まれのおばちゃんには、時代が新しくなるほど知らない作家が増える可能性(笑)最終巻が楽しみ。
まずは既読のものから。小川洋子「匂いの収集」は最後の数行でサーっと血の気が引く恐怖。川上弘美「海馬」は一種の異類婚姻譚。海から来た生き物より人間のほうがおぞましい。津原泰水「水牛群」は猿渡くんと伯爵のシリーズ中の一編。個人的に同シリーズならもっと好きな短編もあるし、とっつきやすい話もあるので、アンソロ収録にこれは不向きのような気がちょっとした。森見登美彦「水神」はおなじみ京都が舞台。『きつねのはなし』は既読なのにほとんど覚えていなくて新鮮な気持ちで読んだ。
鈴木光司は『リング』と『らせん』くらいまでは流行ったときに読んだ。収録されている「空に浮かぶ棺」は未読だったけど『リング』シリーズの外伝のひとつ。『リング』は日本の映画含むホラー業界のターニングポイントというか商業的に大成功した作品なので、平成を振り返るコンセプトのアンソロジーにはやはり関連作品を収録する意義があるのかも。
飯田茂実「一文物語集(244~255)」はタイトル通り一文で完結していてとても面白いと思った。現代ならtwitterでこういう試みをしている人はいそうだけど、こちら最初の出版は1998年らしいのでまだtwitterなかった頃ですね。当時なら自由律短歌の変形みたいな感じだったのだろうか。初めて知る作家だけどプロフィール見ると本業は舞踏家、演劇畑の人らしい。
朱川湊人「トカビの夜」は昭和の大阪の風情がいい。私も関西人なので「パルナス」には大興奮(笑)そうそうあの歌、モスクワの味、影絵のCM、お菓子屋さんなのになんぜあんなに暗くて悲しかったのだろうと思うけど今も口ずさめるのだからすごいインパクトがあったのは間違いない。という余談はさておいても、こちらいわゆるテンダーもしくはジェントルゴーストストーリーというやつなので、怪異は起これど感動的な逸品。
岩井志麻子「乞食柱」は志麻子さんならではの土着的な泥くさい怖さ、そしてエロ(笑)同じように蛇が出てきても恩田陸「蛇と虹」になるとちょっとオシャレだもんね。浅田次郎「お狐様の話」はさすがの読み応え。いわゆる狐憑きが、精神的な病ではなく本当に何か憑いてるのが怖い。
和製SFをあまり読まないのとホラーは苦手だから回避するのとで、全く知らなかった作家が牧野修、福澤徹三。しかし福澤徹三「厠牡丹」は面白かった。トイレで牡丹の花のことは考えないようにしよう…。牧野修「グノーシス心中」は収録作中で唯一はっきり好みではないと思った。こういう表面的な、サイコパスなら何でもありの単なるスプラッタはどうかと思う。
綾辻行人「六山の夜」はこれまた京都。『深泥丘奇談』シリーズの一編らしく、これ1作だけ読んでもわからない部分が多いのでちょっと消化不良。光原百合「帰去来の井戸」は尾道が舞台の優しいファンタジー。収録作では一服の清涼剤のような。
我妻俊樹「歌舞伎」、勝山海百合「軍馬の帰還」、田辺青蛙「芙蓉蟹」はそれぞれ2ページ程度の掌編。全員初めて知る名前。いずれも本書の編者・東雅夫が審査員を務めたビーケーワン怪談大賞から派生したてのひら怪談とやらだそう。余談ながら田辺青蛙って円城塔の奥さんなんですね。山白朝子「鳥とファフロッキーズ現象について」は、鳥が健気だった。乙一よりは山白朝子のほうが好きかもしれない。
※収録
小川洋子「匂いの収集」/飯田茂実「一文物語集(244~255)」/鈴木光司「空に浮かぶ棺」/牧野修「グノーシス心中」/津原泰水「水牛群」/福澤徹三「厠牡丹」/川上弘美「海馬」/岩井志麻子「乞食柱」/朱川湊人「トカビの夜」/恩田陸「蛇と虹」/浅田次郎「お狐様の話」/森見登美彦「水神」/光原百合「帰去来の井戸」/綾辻行人「六山の夜」/我妻俊樹「歌舞伎」/勝山海百合「軍馬の帰還」/田辺青蛙「芙蓉蟹」/山白朝子「鳥とファフロッキーズ現象について」 -
なんて幸せな読書。芳醇で美味な幻想小説のアンソロジー。もちろん中には肌の合わない作品もあるけれど、それは好みの問題。「傑作集」の名に恥じない名品揃い。飯田茂実の作風には驚嘆した。小川洋子や川上弘美の作品は「さすが」としか言いようがない。浅田次郎の大傑作には素晴らしさに涙。そして朱川湊人、光原百合、山白朝子の作品には文字通り泣かされた。東雅夫兄のおられる方角にはまこと足を向けて寝られぬ。え! まだ一冊あるの? なんて幸せな。
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18編の短編集ですから当然と言えば当然かもしれませんが、面白い物も面白く無いものも色々です。中では川上弘美さんの「海馬」がいいと思いました。朱川湊人さんの「トカビの夜」も好みです。
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平成三十年の間に発表されたホラー小説を、東雅夫氏が精選収録したアンソロジーの全三巻。第ニ巻の今巻は平成十年の小川洋子「匂いの収集」から平成十九年の山白朝子「鳥とファフロッキーズ現象について」までの十八作。
「匂いの収集」
静かに確実に這い寄る怖さがいい。猟奇的な未来を予想させる結末。そして、その未来を知ってもなお、その場その関係から、逃げ出せない逃げ出さないと感じさせる、つながりがいい。最後の結末を知って、危うい関係にあると知るのだが、そこに逃れられない魅了させる何かを感じます。
「一文物語集」
語られてきた物語を、記録した趣。新耳袋の感覚。後半の『てのひら怪談』から収録の「歌舞伎」「軍馬の帰還」「芙蓉蟹」も掌編小説といったボリュームだが、その短い中で惹きつける力があるのは、怪奇・怪異の魅力だと思う。
怪奇・怪異だけが、そうではないのはもちろん。
ここに収録された「一文物語集」の中では、247、249、255がぞわりとさせる一文。
「グノーシス心中」
どうにも苦手な作品。サイコキラーは、読んでいて共感が得られない。おそらく、千秋とカグヤマに対峙する存在がいなかったからでないかな。一方的に殺人を繰り返し、やりたいことだけやって消えてゆく、開放感が千秋たちにはあったかもしれないが、自分には違和感。警察小説の中では、サイコキラーは嫌いでないのだけど。
「帰去来の井戸」
二巻収録作品の中で、一番好きな作品。ほっこり怪異は好き。怪異に対して、敬意を払いながら接しているという、人々のスタンスもいい。静かに、確実に引き継がれてゆく想い。二人が語り合うラストシーンが欲しかったけども、そこはこちらが想像を働かせる余韻というものか。
二巻が収録している平成年間は、ちょうど自分が怪談小説を読み始めた時期でもある。「蛇と虹」「お狐様の話」や『てのひら怪談』の作品は、馴染みがある。田辺青蛙との出会いはここから。 -
怪奇小説なかでもホラージャパネスクが好き。
ただ怖いだけでなくこの世に残された情念までも感じられるような作品がいい。
でもあまりにも怖いのは夜には読まないことにしてる。 -
平成の時代のホラーアンソロジー。やっぱり粒よりの内容に大満足。
既読だけれど綾辻行人「六山の夜」、恩田陸「蛇と虹」、朱川湊人「トカビの夜」、山白朝子「鳥とファフロッキーズ現象について」が秀逸としか言いようのない作品。何度読んでも素晴らしいです。
読んだことがないものの中で一番響いたのは飯田茂実「一文物語集」。このたった一文から想像がとことん広がります。これ、もっと読みたいなあ。