- Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488567026
作品紹介・あらすじ
そこは奇妙な学校だった。入学してくるのは、異世界へ行った、不思議の国のアリスのような少年少女ばかり。戻ってはきたものの、もう一度“不思議の国”に帰りたいと切望している彼らに、現実と折り合う術を教える学校なのだ。転入生のナンシーも、そんなひとり。ところが死者の世界に行ってきた彼女の存在に触発されたかのように、不気味な事件が。アリスたちのその後を描いた、ヒューゴー賞など三賞受賞のファンタジー3部作開幕。
感想・レビュー・書評
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ファンタジー3部作の1作目。
異世界へ行って戻ってきた少女たちが集まる学園での物語。
いくつも異世界があるという異色の設定が光ります。
転入生のナンシーは、学園に足を踏み入れる。
突然、「死者の殿堂」という異世界に飛び、ナンシーには何年もそこで過ごして順応した記憶があるのだが、現実には半年間の行方不明。両親に何を話しても、空想としか受け止めてもらえないまま。
この学園は、異世界に戻りたい気持ちを抱いている子のためのものだった。
学長のエリノア自身、異世界に行った経験がある。しかも、何度も。
それは異例なことで、普通は行くのは一度だけで二度と戻れないため、そのことをだんだんに受け入れ、こっちの世界に馴染む必要があるのだ。
お菓子の国など、不思議の国に近そうなイメージの異世界もあれば、骸骨国など見当がつかない世界、ヴァンパイア、死者など、危険そうな世界もある。
そんな世界の性質を表すのに、「ナンセンス←→ロジック」「邪悪さ←→高潔さ」という指標を使うのもユニーク。
ほとんどが女子だが、妖精の国で王女と扱われていた美少年のケイドのように、男子もいる。
そんな学園で殺人事件が起こり…?
今自分がいる世界に馴染めないでいる10代半ばの子は結構いるでしょう。
感じやすい年齢の少女が黒い口紅やキッチュなドレスで装うゴスロリ・ファッションを思わせるダークさがある世界で、表紙のイラストがぴったり。
設定が変わっている割には短い作品なので、これだけではわからない気もしますが。
1作目では男装しているクールなジャックと双子のジルが異世界にいた当時の話になっている、2作目が面白かったです。
ヒューゴー賞など主要な三賞を受賞している、骨太な作品です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
不思議の国のアリスのように、異世界から帰ったものの
戻りたいと切に願う少年少女たちが、現実と折り合う術を
学ぶための寄宿学校が舞台。
そこに既にある偏見と、起こってしまった殺人事件。
それは連続殺人事件となり・・・
十二国記「魔性の子」を連想しました。
記憶を失ってはいたけど、帰って行った高里と、
強く憧れながらも行けない広瀬。
3部作というからには、続きを読まねば!
●トランクの中に行った双子
●砂糖の空から落ちてきた少女 -
おもしろいいいい
「自分の物語がどうやって終わるか教えられるのは自分だけ」
スミの残したこの言葉にすべてが集約されてるように思える。
物語に魅せられたかつての少女たちはみんなある意味自分の扉に執着しているのかも。
続きも読まなくちゃ!
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17才のナンシーはある日突然異世界(死者の殿堂)へ迷い込み元の世界へ戻された。しかし当然誰もそんな話は信じてくれず、本人にとっては数年の出来事だが元の世界では半年間の失踪、両親は家出と認識、同じような問題を抱えたティーンエイジャーを更生させるための寄宿学校へ入学させる。
その学校にはナンシーと同じように様々なタイプの異世界への扉を開いてしまうも現実世界へ戻された生徒たちが集まっており、校長のエリノア自身もその体験を持っている。その経験を「忘れたい」「忘れて日常生活に適応したい」者は別の姉妹校へ、その別世界を故郷と呼び戻りたがる者はこの学校へ来て、体験を語り合いセラピーを受ける。
お菓子の国から戻ってきたルームメイトのスミや、妖精の国で王女として暮らしていた美少年ケイド、ヴァンパイアの国から戻ってきた双子のジャックとジル、骸骨国から戻ったクリストファーなど、個性的な生徒たちに戸惑いつつも馴染もうとするナンシー。しかし突然の猟奇的な連続殺人事件の勃発、疑われたナンシーは・・・。
まず不思議の国でアリス的体験をした少女たちのその後、という着眼点が面白いですね。古今東西、児童文学からアニメの類いまで含めれば相当の数の異世界トリップものがあるけれど、それらの大半は一種の「行きて帰りし物語」で、異世界での冒険を終えたら現実世界に戻ってくることまでが遠足、無事帰還してめでたしめでたし、となりがちだけれど、もし、そっちの世界から戻って来たくない、そちらのほうが自分の居場所だと思ってしまったら・・・? 時間の流れも違い、神隠し期間の話をしても下手をすれば狂人扱いされ、一生その違和感や喪失感に苦しむことになる。
エリノアの学校は、そんな別世界はありませんよ、夢を見ただけですよ、と否定→説得しようとするのではなく、まず肯定、さまざまな種類の異世界への扉はいたるところにあり、なんらかのタイミングの合致で誰でも簡単にそちらへ入り込んでしまうことは現実に起こるもの、と認めた上で、世界の傾向を分析、生徒たちに、その後の生き方の選択肢を提示し、猶予の期間を与えてくれる場所。ほとんどが少女で、少年が少ない理由というのもなんとなく納得。生徒のセリフでさりげなくナルニアをディスっていたりして、なかなかシニカルな面もある。
日本語タイトルから受けるふわっとした印象と違い(ちなみに原題は『EVERY HEART A DOORWAY』)意外と血なまぐさい事件が起こったり、一言に「少女」といっても主要登場人物はローティーンではなくハイティーン、ゆえに性的に露骨な会話などもちょいちょい出てきて驚いた。連続殺人事件が起こるのでミステリーの範疇だと思うけれど、犯人推理は登場人物が限られているのでそれほど難しくない。謎解きよりはキャラクターと設定を楽しむラノベっぽさもあり、女の子なのに異世界でマッドサイエンティストの弟子になっていたジャックはクールメガネ系男装の麗人、逆に女の子と間違えて妖精国にさらわれたケイドは中性的な美少年、ジャックの双子の片割れジルは典型的なゴスロリなので、萌え絵でアニメ化とかも違和感なさそう。
個人的には南米系で骨笛で骸骨を動かせるクリストファーがお気に入りでした。しかし異世界的なアイテムや能力を彼だけがなぜ現実世界に持ち込めているのかという謎は残る気が。解説によると本書は3部作の1作目で、2作目はジルとジャックの前日譚らしい。ジャックもとても魅力的なキャラだったのでとりあえず2作目翻訳待ちですね。 -
異世界へ行った経験をもつ少女少年たちが集められた寄宿学校。死者の殿堂から戻ったナンシーの転入から事件が起こる。
異界冒険譚の数だけ、訪問者・帰郷者のその後がある。扉の向こうを想い、分析し、現状と向き合う。
ハイファンタジー好きには苦くて楽しい物語。
ナンシー、スミ、ジャックとジル、ロリエル、ケイド。短い物語の中でそれぞれの冒険を追体験した気持ちになる。
エリノアの来し方とその後はどうなるんだろう。
続巻も楽しみ。 -
不思議の国に行ってしまった子供たちがこちらの世界にかえってきた後の物語。
もっとふわふわした話しかと思ったが、不思議の国に帰りたいという気持ち大きすぎて、現実の折り合いをつけることが難しい。
主人公のナンシーは、冥界の世界から戻ってきており、カラフルな色や、食事が苦手。親の思う子供とは違い、親は子供を受け入れることができず、この学校に送り込まれた。
いつでもどこでの親は、子供にこうあってほしいという理想がある、、、
不思議の国というと、キラキラ、ふわふわの世界を思い浮かべていたが、冥界の世界、荒野の世界、などいろいろな世界があるのだな。
殺人事件が起こり、びっくりしたが、最終的には(ナンシーにとって)幸せな結末になったのかなと思った。
三部作の一作目らしいので、続きもちょっと気になります。