宇宙船ビーグル号の冒険【新版】 (創元SF文庫)

  • 東京創元社
3.41
  • (2)
  • (6)
  • (7)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 78
感想 : 9
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488609177

作品紹介・あらすじ

軍人と科学者1000名が乗り組み深宇宙をゆく探査宇宙船ビーグル号。その行く手には、人類の想像を絶した、恐るべき宇宙生命体たちが宇宙船を乗っとらんとして待ち構えていた。猫のような怪物ケアル、宇宙空間に棲息するリイム人。人類の科学の粋とエイリアンの超能力が、手に汗にぎる死闘を展開する。SF史にその名をとどろかす傑作!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 【注:本レビューは,旭川高専図書館Webサイトの「私の推薦する本」に掲載した文章を,執筆者の許可を得て転載しています】

     高専で何回も就職担当教員を務めていましたが,最も企業が欲しがる人材は,例えば野球部やバスケットボール部などの運動部出身の学生です。成績は問われません。明るく協調性があればほぼ百パーセント合格です。
     それに対して,趣味が音楽鑑賞,読書,パソコンなどとしか記述されていない履歴書の持ち主は,面談や面接で「暗い感じがする」「元気がない」などと言われて入社を断られたりします。私は個人的にも相当の本を読んだ読書家を知っていますが,「百聞は一見に如かず」と似た「百冊の読書は一つの経験に負ける」という言葉が頭に浮かんできます(私が思いついて今,作りました)。
     確かに,9回裏2死満塁ツースリーの局面でホームランを打たれた野球選手の経験を持つ学生が,その後の人生で,つらい局面でも対処できる人間になるのはわかります。それでも言いたいのは,もっと常識外のつらい経験をした時,読書などで教養がある者のほうが,やはり壊れたりパニックを起こしたりしないのではないか,ということです。

     一般に文学者から目の敵にされるSF小説ですが,それでも究極の世界を味わうことで,困難に負けない強い主人公の姿を頭に入れることができます。
     ビーグル号は軍人と科学者千人を乗せた宇宙探査用の船ですが,宇宙生物を船に乗せては,逃げられてヒドい目にあったり,他所の星からテレパシーで歓迎されては,感覚が違うせいでヒトにはそれが精神攻撃になってしまって痛かったり,一つの銀河を支配しているガス状の生物に,オレが生きるために,オマエの星系に行ってオマエらを滅ぼすからついて行くね,と船につきまとわれたのを振り切るために,何もない宇宙空間の虚空を何年間も飛んでみたりと,さんざんな経験をします。昔エイリアンという映画がありましたが,その発想もこの本からも得たものです。
     さて,ビッグバン以前の宇宙を支配していた一匹の生物と,軍人と千人の科学者が行う船内での悲惨な死闘などという,これ以上の戦いの描写は,小説でもあまり読んだことがありません。最後は老日本人科学者が,これぞ学者というある発想でピンチを切り抜けています。勉強になります。加えて人間臭いいじめや組織の問題もあり,負けずに解決する若き主人公の強さは,古典的名作として今も輝きを放っています。
     疑似体験しておくと,何があっても貴方も強く生きられます。
    (電気情報工学科 有馬 達也 先生)

    *本校で所蔵しているのは1964年2月発行の創元推理文庫版です。

    ▽配架場所・貸出状況はこちら(旭川工業高等専門学校蔵書検索)
    https://libopac3-c.nagaokaut.ac.jp/opac/opac_details/?kscode=004&amode=11&bibid=1011528489

  • 未知の生命体と遭遇した時に、その生命体が何をしようとしているのかを探るには、得られたデータから仮説を構築していくしかない。あらゆる分野の学問を総合的に駆使してである。
    進化論を唱えたダーウィンがガラパゴス諸島へと向かった船と同じ名前の宇宙船「ビーグル号」が宇宙の探索に出発し、遭遇する未知の生命と対峙する冒険SF小説だ。
    スタートレックにも影響を与えたであろうと想像できる。1950年に発表された作品であるが、今でも十分楽しめる。SF作品を探している人、本作品はいかがでしょう?

  • 想像を絶する凶悪な宇宙生命体との戦いは『宇宙大作戦』の元ですかね

  •  読み始めたとたんに、まずは「ダーティー・ペア」が頭の中で踊り出した。そういえば、確かにあのシリーズに登場する「ムギ」は、この小説に出てくる生き物を借りていると聞いている。しかし、こんなに突然に、しかも鮮やかに飛び出してくるとは思ってもおらず、そして、野生(?)の彼の力強さとワルっぽさの魅力ったらなかった。参った。
     読み始める前は、もっと学術的なハードSFをイメージしていた。実際にかなりしっかりとしたハードSFの色合いも大きいのだけど、もっと素朴に、手に汗を握る怪獣退治の物語、未知の問題を命がけで立ち向かう冒険活劇の印象が強い。どしっと重さを持っているスペース・オペラとも言えないことはない。
     主人公は情報総合科学者である。この情報総合科学というのは、この小説のオリジナルだろうが、さまざまな学問を横断的にとらえ総合的な判断をするという点で、とても現代的で、この小説が書かれたのが1950年だと思うと、非常に先駆的な視点だと思う。ただ小説の中ではもう一つ納得できる描かれ方はしておらず、どちらかというと魔法じみて見えてきてしまうのは、アイザック・アシモフの「ファウンデーション」シリーズにおける「心理歴史学」と似ているような気がする。(書かれたのも同じ頃だし)
     別々に書かれた中編4つで構成される長編だが、どれもおもしろし、登場する「敵」も個性的だし魅力的だ。ただ、全体のラストだけは、個人的にはもうひとつすっきりしなかった。ラストに至る過程も、なんかもやもやしたし。複雑な味わいの残るエンディングだと思うし、意図しているところもよくわかるのだけど、終わるならもっとさっぱり終わって欲しかったし、でなければ終わらなくてよかったなあと言うのが本音である。
     ともあれ、古典的な名作には、そういわれるだけの理由がある。しみじみとそう思った。

  • SF。
    劇団新感線の中島かずきさんが、若い頃に読んでいれば、と言ったとか、言わないとか、という小説らしく(?)、私も読んでみました。
    簡単に言うと、外宇宙に探検に出ている人類が、さまざまな宇宙生命体との戦いに挑むという話。
    主人公は、総合科学者の男。
    個々の学問の権威がいる中、それだけでは解決できないひらめきを以って、宇宙人との戦いに勝利していく・・・というようなお話でした。
    総合科学すげー!! ってなるようなストーリーでした。
    もっと早くに出会っていたかったなぁ。

    最後がちょっと尻切れトンボな感じがするので、評価は4

  • スタートレックを彷彿とする宇宙探検物語。地球外惑星で異形のモンスターと出会い、ビーグル号の乗組員に犠牲を出しながらも怪物を退治する。宇宙空間で生きられる生物も登場し、ドキドキさせる世界は良い。ただし、このような世界観は今となっては少し古めかしく感じる。難しく考えずに素直に読んで楽しむ作品だろう。子供にも楽しんで欲しい。

  • 科学者と軍人1000人を乗せた球体宇宙船ビーグル号が、深遠宇宙の探検で危機に直面する短編集です。
    敵となる異星生物視点の物語があり、襲われる人類に加えて双方へ同情を誘います。
    又、社会的・人間的な部分が多く、人類同士の嫉妬や諍いも頁を占めています。
    後世のSFに影響を与えた一冊。

  • ハヤカワ文庫のを持っているのを確認しときながら買ってしまった。だって新しいのが好きなんだもの。
    中身で覚えていたのは児童書で読んだざっくりした部分だけだったようだ…(-_-;)

全9件中 1 - 9件を表示

A・E・ヴァン・ヴォークトの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×