時の扉をあけて (創元SF文庫 ハ 10-1)

  • 東京創元社
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本棚登録 : 62
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488714017

作品紹介・あらすじ

昔、住んでいた一家が不可解な失踪を遂げたという、薄気味の悪い言い伝えの残る古い屋敷。それが祖父の遺した唯一の財産であった。いつも飲んだくれている父。気丈ではあるものの、耐えることしかできずにいる母。そんな両親の、屋敷の処分を巡る口論から逃れて、閉ざされた三階へと入りこんだ少年は、隠されていた扉を見つける。それは、五十年前の世界への入り口だった…。

感想・レビュー・書評

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  • やっぱりタイム・トラベルものは良い。そんな気持ちにさせてくれた本書ですが、読後はどこか悲しい感情に打ち拉がれてしまいました。

    主人公はジョン・R・ランド。飲んだくれの父親と、気丈ではあるが父親の暴力に何もできずにいる母親。そんな両親の喧嘩に何もできないジョンは、ひとり祖父が残した屋敷の三階へ。クローゼットの中にある不思議な扉を抜け、その向こうにある階段を駆け下りると、そこは50年前の世界なのだ… 本書は過去へと旅立った少年が贈る悲しみに満ちた運命の物語です。

    「扉を抜けると別世界」というのは、SFに限らず例えばファンタジー作品でも出てくる台詞。大抵は、こちらの世界に何かしらの不満やコンプレックスを抱く主人公が、扉の先の世界でそれを克服していく…という物語が想像されます。本書の主人公ジョンも両親の喧嘩に悩み苦しみます。それに逃避するように扉を抜けるのですが、果たして彼はその悩みを克服できたのか…答えは否。
    ジョンは常に運命に翻弄され、悲劇の真っ只中に身を投じます。最後こそ、大団円のそぶりが見られますが、当初の目的である「母親を救う」ことはついに果たせていません。そんな物語だからこそ、時間を超えても運命は変えられない(むしろ本書は時間を超えるからこそ運命が廻ってしまうのですが…)、そんな運命の残酷さを感じる作品なのでした。

  • ファンタジー的サスペンス的タイムトラベル系作品。ひとつのジャンルに収まらない微妙なバランスの上に立つ作品だけど、テーマは一貫しており、極めておもしろい。その意味では、SFとして読まないほうが純粋に楽しめると思う。タイムトラベル自体は言わば一つの装置であって、作品の主眼はその装置を通して過去や未来に対峙する主人公の心理描写にある。巻末の解説もそうした面から書かれているが、「~こそが~なのだ」と説かれるそれの大部分は解説者の付会。勝手な人物設定をもちこんで作品の読みを狭めてしまうにはもったいない良作。

  • 扉がタイムマシン。
    自分のおばあさんの若いころと・・・
    いいんだろうかとw

  • 両親の喧嘩みるのはもうイヤとメモリーの町時間さまよい」

  • 実際起こったかのようなリアリティがある。
    未だに大好きな作品。

  • 由緒正しきタイムトラベル小説の読後感が得られる。傑作ではないが、作者の緻密に計算された構成から、何度も読み返したくなる良書。

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著者プロフィール

1952年生まれのアメリカの作家。ヤングアダルトから大人向けまで幅広い年代に向けて小説を執筆。日本で紹介されている作品に『時の扉をあけて』『手ごわいカモ』など。『きみのいた森で』で、2019年のエドガー・アラン・ポー賞(児童書部門)を受賞。

「2021年 『きみのいた森で』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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