ファシズムとロシア

  • 東京堂出版
4.06
  • (8)
  • (4)
  • (3)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 149
感想 : 15
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784490210644

作品紹介・あらすじ

冷戦終結から30余年、欧米主導の一極化した国際秩序への反発から、世界各国で反リベラリズムの潮流が湧き起こっている。そんな中、プーチン・ロシアは、ウクライナへの軍事的干渉、クリミアの併合をはじめ旧ソ連の周辺諸国に対して軍事的圧力をかけるなど強権的な言動をとり続け、国際秩序に揺さぶりをかけている。そのようなロシアの行動は、西側諸国からファシズムと批判されている。本書は、「ファシズム国家」とのレッテルが貼られるロシアを、幅広い視野から冷静に分析、プーチン体制の構造とロシアの地政学的戦略をわかりやすく読み解く。今のロシアを、そしてヨーロッパの将来を占うための必読書であり、混迷する国際情勢の分析にとって貴重な手がかりとなる作品である。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ◆理解を諦めぬ知性[評]菅原琢(政治学者)
    ファシズムとロシア マルレーヌ・ラリュエル著:東京新聞 TOKYO Web
    https://www.tokyo-np.co.jp/article/172100?rct=book

    「ファシズムとロシア」書評 プーチン体制の本丸を見誤るな|好書好日
    https://book.asahi.com/article/14599419

    【書評】トラウマとイデオロギー──マルレーヌ・ラリュエル『ファシズムとロシア』評|乗松亨平 - ゲンロンα
    https://www.genron-alpha.com/bookreview_003/

    Dr. Marlene Laruelle
    https://www.marlene-laruelle.com/

    ファシズムとロシア - 株式会社 東京堂出版 限りなく広がる知識の世界 ―創業130年―
    http://www.tokyodoshuppan.com/book/b599344.html

  • 普段この分野の本をほとんど読まないため非常に難しかったが、https://www.genron-alpha.com/bookreview_003/
    等を参照しながら読み進めた。歴史、背景を知識として、今何が起きているのかを冷静に見つめられる第三者でありたい。

  • 数十年いろいろなファシズム関連の本を読んできた経験に基づくと、一方的に決めつけることなく、本書はウクライナ侵攻の現況下において的確な判断を下している。
    プーチン政権への高い支持率も本書を読めばわかるだろう。まさに現実政治の達人だ。
    終戦後に攻め込み日本の領土を奪いながら堂々としている国でもある。日本の政治家は学ぶべき点がかなりあるのではないか。
    また、正教会へ経済制裁された理由もよくわかる。
    ウクライナ=善、ロシア=悪と無条件に思ってる人にこそ読んでほしい。
    本書は値段が高いので図書館で借りた。読む気があればタダで読める。

  • 桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/volume/1304059

  • ふむ

  • Is Russia Fascist?
    Unraveling Propaganda East and West
    http://www.tokyodoshuppan.com/book/b599344.html

  • ロシアとウクライナ(あるいは欧米)との間で互いを「ファシズム」「ナチス」だとする非難の応酬が続いている。「ファシズム」という言葉がその内実を示すより、「悪」のレッテル貼りとして政治的に利用されているようにみえる。はたしてロシアは「ファシズム」国家なのか?その疑問を解くためにこの本を手に取った。
    ロシアでは、独ソ戦の勝利はファシズムへの勝利であり、ナチ・ドイツを破りヨーロッパの平和をもたらすためにロシア国民は多大な犠牲を払ったと考えられている。ロシア国民の間では「ファシズム」は「悪」であると認識されているし、第二次世界大戦におけるファシズムに対する勝利こそが、ロシアがヨーロッパの一員であることを保証していると考えられている。他のヨーロッパ諸国と同様にネオナチと呼びうる極右勢力はロシアにも存在するが、クレムリンに影響を与えているわけではない。
    プーチン政権は、「反対派リベラルを非合法化することに注力し、反体制の原動力となり得る国民の怒りを回避するために非政治的表現には可能な限りの自由空間を許容しつつ、プライベートで忙しい市民や生活に満足している個人を歓迎している」が、これらは権威主義体制の典型であり、ナチ・ドイツのようなアーリア人による世界支配といった人種主義的な思想もない。ファシズム研究の立場から言えば、ロシアはファシズムではない。
    筆者は「ファシズム」論争の背景には、ロシアと西側諸国との間に歴史の参照点に対するすれ違いがあると指摘する。
    ロシアにとっては、ヤルタ会談により大陸を二つのブロックに分け、その後何十年も続いた冷戦期(ヤルタ体制)こそが「正常な状態」である。「それは同国に、あらゆる主要な国際問題について打診され、尊重される大国の地位を与えていた時期であり、ヨーロッパでは多大な影響力を有し、ファシズムに対して勝利したアメリカ合衆国の同盟国とみなされた状態である。」
    一方西側諸国にとっての「正常な状態」とは、1990年代初頭のソ連の崩壊とともに「鉄のカーテン」がなくなり、EUが拡大していく状態である。
    「誰がファシストか」というレッテル貼りは、ヨーロッパのあるべき姿の在り方の問題に集約される。もしもロシアがファシストならロシアはヨーロッパから排除されることになる。

    プーチンのロシアをナチ・ドイツに喩えるアナロジーは問題を混乱させるだけで解決には導かない。ウクライナとの「戦争」がどうなるかは分からないが、その結果プーチンが辞めてもロシアがなくなるわけではない。ヨーロッパはロシアをどのように包摂するのか(あるいは排除するのか)。それがもっとも重要な問題なのだと痛感した。

  • やや難解

  •  概念やイデオロギーの説明が中心で自分には消化不良気味だが、訳者解説も合わせ読む。
     ナチスドイツに代表され、中露でも中東欧を含む欧米でも敵、悪とされる「ファシズム」。現在も、厳密な学問的定義というより一般的言説の中で露を「ファシズム」と呼ぶ事例がしばしばある一方、露自身は自らを「反ファシズム」とする。こういった「(反)ファシズム」との言説自体に歴史認識や政治的対立、ヨーロッパ・アイデンティティが反映されているというのが著者の視点だ。
     著者は、政治的テロル、大衆教化や動員、人種絶滅イデオロギーなどがないことから、露をファシズムとする見方には同意しない。ただ、反リベラリズムや権威主義は否定しない。更に、訳者が指摘するように、「西側」から露やプーチンをファシズム、独裁者と呼び「他者」化するのではなく、露はグローバルな反リベラリズムの地続きだというのが本書の特色でもある。

  • ロシアがウクライナを侵攻する現在、非常に興味深い指摘が数多くある。
    「全体主義の起源」を読んだ者としては、ナチス=スターリン=ファシズムという等式が成り立つのであるが、ロシアでは違うようだというのも大きな収穫であった。

全15件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

フランス出身の研究者。専門は国際政治・政治思想。フランス国立東洋言語文化学院で博士号取得。現在、アメリカのジョージ・ワシントン大学ヨーロッパ・ロシア・ユーラシア研究所所長、同大学教授。研究対象はロシアおよび旧ソ連地域。特にイデオロギーとナショナリズムに詳しい。現在の研究テーマは、ロシア国内のイデオロギー情勢と国外への拡散。著書にRussian Nationalism. Imaginaries, Doctrines and Political Battlefields(London: Routledge, 2018)、Russian Eurasianism: An Ideology of Empire (Washington D.C.: Woodrow Wilson Press/Johns Hopkins University Press, 2008) ほか多数。フランスやロシアでも翻訳出版されている。

「2022年 『ファシズムとロシア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

浜由樹子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
劉 慈欣
ヤン=ヴェルナー...
ヴィクトール・E...
スティーブン・ピ...
リン・ハント
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×