オーセンティックな算数の学び

著者 :
  • 東洋館出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784491047539

作品紹介・あらすじ

現実と数学の世界を自由に行き来する学びへ

■本書の概要■
長年、学びを問い直す鍵として語られてきた「オーセンティック(真正な/本物の)」概念。その歴史的な流れを振り返り、算数教育の領域に丁寧に位置付けることを試みる。大学で教員養成に携わる傍ら、小学校での実践を続けるハイブリッドな研究者による第一作

■本書からわかること■
□内容
長年、学びを問い直す鍵として語られてきた「オーセンティック」概念。「オーセンティック」とは、「真正な」や「本物の」という意味を表す形容詞で、近年、「オーセンティック・ラーニング」や「真正な学び」といった言葉遣いで、しばしば教育の文脈に登場します。本書では、「オーセンティック」が、どのような経緯で教育の文脈に登場してきた概念であり、なぜオーセンティック概念に着目することで、子どもたちが学ぶ価値を実感できるような授業が構想可能なのか、明らかにしてきます。

■算数のフィクションとノンフィクション■
とりわけ、本書では「小学校算数」を扱います。誰しも身に覚えがあるように、馴染むことができた人・できなかった人、受け入れられた人・受け入れられなかった人に大きく分かれがちな算数という教科。ここには、どういう理由があるのでしょうか。本書では、その回答として「算数のフィ クションとノンフィクション」という切り口を提案します。私たちが、算数固有のフィクションに馴染めずにモヤモヤを抱えてきたのだとすれば、ノンフィクションから始まる算数の授業構想は可能なのか。あるいは算数固有のフィクションの価値とは何であるのか。このことを見つめ直し、学びの在り方を再構築することが、質の高い算数科の学力の形成、ひいては未曾有の社会の変化を生き抜くこれからの子どもたちの学ぶ力の形成に寄与するものであると著者は言います。

■理論と実践をつなぐ真摯な第一作■
著者は、武蔵野大学教育学部教育学科の小野健太郎准教授。11年間小学校教諭として勤めた後、教科教育(主に算数)の実践研究を教育心理学的視点から進め、教員養成に携わっています。また、並行して現在も小学校での実践研究を進めており、本書では、オーセンティシティーを高めた学びを実現したご自身の具体的実践を紹介しており、理論と実践が往還する意欲的第一作となりました。

≫上智大学教授 奈須正裕先生よりコメント
リアルな生活現実の先に見えてくる価値ある虚構。 算数ってそういう教科だったんだ。これなら断然面白い。

≫島根県立大学教授 齊藤一弥先生よりコメント
「子どもの数学的な見方・考え方」を引き出し、 それを最大限活かした教科の本質を追究する学びの描き方を提案。

■こんな人におすすめ■
子どもたちが、学んでいる意義を実感できるような算数の授業をしたい先生方。「オーセンティック」概念を、一から学びたい先生方。

感想・レビュー・書評

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  • 最近よく話題にあがる「真正な学び」について算数に絞って書かれた本。算数のパフォーマンス課題作成に取り組みたいと思い手に取ったが、手がかりとなるような学びは少なかった。

    ここから書く感想は、理解力不足の私が書いたものなのできっと参考になりません。

    真正の学びには嘘がない、学問と現実とのつながりを見る目が育つ、現在を元に考えるといったことには同意である。ただそれは、この本を読む前からも感じていることであり、そのことについてわざわざ長く難しい言葉で説明されているような印象を受けた。抽象的な話が多かった。ただ、途中に出て来た、交通量のグラフやワクチン接種の分数割り算といった授業実践については、イメージを持ちながら読むことができた。

    ポイントとして線を引いたのは、以下の部分。
    ・オーセンティックな課題であるかどうかは、0か100かではなく、度合いの問題である。
    ・チラシや飴が持ち込まれることで生まれる興味は、外発的動機づけに近く、起爆剤のようなもの。
    ・フィクションだからこそ、ルールやパターンにふれ新しい概念に出合うことができる。
    ・捨象、仮定といった行為により数学の世界で数量比較できる。

    書いてあることは何となくわかるが、それをあえて詳しく言語化する必要はあるのかな…と感じた。まだまだ勉強不足なので、精進します。

  • 『オーセンティックな算数の学び』

    算数の授業が1番難しいと感じている。この難しさはコンテンツベースの授業から抜け出すことができないという僕自身の課題からくるものだ。ではなぜコンテンツベースの授業から抜け出せないのか、そのヒントを得ることができた。

    【フィクションについて】
    教科書に載っているフィクションの問題場面は、知識・技能を効率よく獲得するためにノンフィクションから必要のないものが削ぎ落とされている。その教科書をベースに授業を組み立てるとコンテンツベースの授業が出来上がる。よくこのフィクションを何とか生活場面に引き寄せる形にして提示するのだが、フィクションはフィクションなのである。(これは教科書を批判している訳ではなく、教科書の問題をそのまま活用せざるを得ない自分の実力の問題を書いている)


    【文脈が変わる問題】
    前時で布の値段を問うていたと思えば次時ではリボンの長さを問う展開。毎時間の問題が1つずつ分離したコンテンツとして子どもたちに提示され、消費されていく感覚。ここに違和感を感じながらも解決策を見出せない。コンテンツを消費させることでアリバイづくりのような授業となってしまっている。

    この2点をクリアする方法は単純である。単元を包括するオーセンティックな課題を考えれば良い。そこから生まれる課題は単純ではないだろうが、やってみなければ前には進まない。3学期にチャレンジだ。

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著者プロフィール

小野 健太郎(おの・けんたろう)
2006年 新潟大学大学院医歯学総合研究科博士課程修了 博士(医学)
現在 立命館大学衣笠総合研究機構 専門研究員
主著・論文
"Motion-induced disturbance of auditory-motor synchronization and its modulation by transcranial direct current stimulation." European Journal of Neuroscience, 43: 509-515. 2016年
"Keeping an eye on the conductor: neural correlates of visuo-motor synchronization and musical experience." Frontiers in Human Neuroscience, 9: 154. 2015年
"Neural correlates of perceptual grouping effects in the processing of sound omission by musicians and nonmusicians." Hearing Research, 319: 25-31. 2015年

「2016年 『音楽と脳科学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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