ハーバード あなたを成長させるフィードバックの授業

  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492045800

作品紹介・あらすじ

全米70万部突破『話す技術 聞く技術』の著者が約10年かけて導き出した
自分だけが知らない「自分」に出会うフレームワーク!

・なぜ、あの上司からフィードバックをもらうと、心がザワつくのか?
・アドバイスの真意を汲みとれるようになりたい
・自分を変えたいけれど、何から手をつけていいかわからない
・「言うことを聞かない頑固者」と言われるが、自分に取り入れたい意見がないだけ
・部下がすんなりアドバイスを受け入れてくれるには、どんな言い方をすればいいのか?
・かたくなな部下の心のなかではどんなことが起こっているのか
・成長につながる、話の聞き方を教えてほしい
・クソバイスをもらったときの上手な流し方が知りたい

そんなあなたに贈る、とっておきの「フィードバック」の授業

上司のダメ出しが、「最高のアドバイス」に変わる!

感想・レビュー・書評

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  • フィードバックを「文化」と捉えると様々な解釈が可能となる。阿吽の呼吸が大切な日本で本当に根付くのか。
    本書を読んで改めて「フィードバックとは何だろうか?」と考えてしまった。
    日本語では「ほめ殺し」「ダメ出し」という言葉はあっても、それは「フィードバック」とは意味が異なる。
    似た言葉では「アドバイス」があるのだが、どうもこれも意味が違うし、そもそも日本語ではないし。
    考えてみると意外にも奥が深いのが「フィードバック」なのだ。
    人間とは不思議なもので、自分自身の本当の姿を自分で認識することが一番難しい。
    自分は自分のことを良く分かっているつもりでも、他人から見ると違うように解釈されていたりする。
    だからこそ、それら他人の目を通して、本当の自分自身を知ることが大事だということになる。
    その事を気付かせるのが、まさに「フィードバック」という技術なのだと言える。
    ここで敢えて「技術」と書いたが、まさに「フィードバックはテクニックなのだ」と考えると分かりやすい。
    テクニックなのだから、習得すれば「フィードバック」を出来るようになるのである。
    これについては、思い当たることがある。
    自分が他人と会話している時に、どうしても嚙み合わない人がいる。
    「俺の話、聞いてる?」と問う以前に、ちゃんと聞いてくれていて、お互いに会話しているのに、噛み合ってない場合だ。
    これを「相手の会話スキルが低いだけでは?」で済ませてはいけない。
    本当の原因は、「お互いの会話の目指すところがズレている」ということに、気が付くかどうかなのだ。
    そして、自分側にも原因の一端があることに気が付くかどうかなのだ。
    この「目指すところ」が実は様々な要素があって、一つには「論点」がある。
    これは一番分かりやすい。ところが、会話のズレとは「論点」だけに留まらない点が難しいのである。
    お互いに論じているだけが会話ではない。
    論理や主張がなくても、ただの雑談だったり、日常会話だったり。
    その中でも特にフィードバックに該当するものが「対話」という概念だろう。
    フィードバックのやり取りをする際に、お互いを「対話」のモードに合わせておかないと、質の高いフィードバックを獲得することは出来ない。
    そういう目指すところのズレを修正し、お互い「対話モード」に合わせるためにも、本書では「人間関係をシステムに見立てる」と説いている。
    これも、自分にとっては新しい考え方だった。
    人間関係をシステムに見立てて俯瞰して見ると、フィードバックする側と、される側の役割が朧気ながら見えてくる。
    この役割を理解して会話をすれば、上手くいくということなのだ。
    「相手はこういうモードで来ているな」に対して、自分が「こういうモードで接する」となれば、それは有意義な会話となり、より質の高いフィードバックになるのだろう。
    同じ言葉でフィードバックをしたとしても、そのシチュエーションや、こちらと相手との関係性や、その場面での雰囲気などでも受け取る意味合いが変わってくる。
    だから「システム」なのである。
    人間関係をシステムに見立てて俯瞰して見るから、そこに気が付くのだ。
    人は、ついつい自分が喋っていると、相手の様子を構うことなく喋り続けてしまう。
    本当は、相手に伝わらなければ意味がないのにも関わらずだ。
    何なら、相手がその言葉を受け取ってくれていても、腹落ちしていない場合だってある。
    その状況も意味がないのである。
    だからこそ、例え自分が喋っていても、相手の反応を伺いながら喋り方も変えていく柔軟性が、最も相手に伝わり理解させる方法論なのである。
    これが「システム」という意味なのだ。
    あるA点からB点まで、どうやって情報を届けるのか?
    複雑な電子回路だって、どこかで途切れたら、情報はB点に届かないのである。
    言葉だって同じだと思えば、「システム」という意味が理解できるのではないだろうか。
    本書では、フィードバックについては「感謝」「指導」「評価」でそれぞれ分けて考える、と説いている。
    これも「対話モード」でいれば、自ずとどうやって相手に合わせるかが見えてくるだろう。
    フィードバックは本当に難しい。だからこそ、テクニックを正しく学ぶことが重要なのである。
    (2023/4/4)

  • 転職して沢山フィードバックを受けていた半年間、この本があることで学びに変えられた。フィードバックする側の本は沢山あるけれど、フィードバックを受ける側がどんなふうに対応したら学びに変えられるかがわかりやすく書いてある。自分がマネージャーになるときにも参考にしたい。

  • 「フィードバック」というものの性質を体系的に整理し、どのように向き合うことが望ましいかがまとめられた本。
    明確に言語化されているため、既に自分の中で確立されている考え方だとしても、それをブラッシュアップしてくれるものであった。
    一方で本書によって、実践的なノウハウを獲得できるわけではない点は少し残念であった。また、想定読者層として、「フィードバックに心がざわついてしまう」方を設定している傾向があり、フィードバックへの甘受性が高い方には少々、蛇足的な章も見受けられた。

    個人的に興味深かった点は、フィードバックを体系的にまとめられている点である。

    ・フィードバックの役割は、感謝・指導・評価の3パターンに分けられる。
    →提供者と受け手で、求められているフィードバックのパターンに齟齬があるとたとえ正しいフィードバックであっても、うまくいかない。
     (長年ある社長に勤めてきた、自身を認めてもらいと思う秘書[感謝を望む]へ、社長から具体的にスケジュール管理でのミスを事細かに伝える[指導])

    ・フィードバックの提供者は、観測した「データ」をもとに彼なりに「解釈」した上で、受け手に「フィードバック」する。なお、「解釈」ステップは無意識的に行われてしまう。
    →「フィードバック」の内容を文字通り受け止めると提供者の意図と齟齬が生じうる。
     (上司は、部下が購入一歩手前の顧客へのプッシュが不足している現場に遭遇し、「積極的に望め」と伝えたものの、部下は「積極性」を「脅すような営業をする」ことだと勘違いしてしまった)

    ・人間関係で問題が生じてしまう原因は、ある一人のみねはなく、双方に起因する。また、双方の性格だけでなく、彼らの立場、またその背景にある要素(人・構造・プロセス等)もある。
    →問題が生じたとき1〜3歩後ろに引いて原因をさぐる。
    0歩:自分(相手)のどこが悪いのか?
    1歩引く:自分と相手が組み合うと何がまずいのか?
    2歩引く:自分と相手の各々の役割(立場)に原因があるのではないか?
    3歩引く:自分と相手の背景にある要素が問題を生じさせてしまっているのではないか?この問題発生システムのどこに改善余地があるのか?

    ・フィードバックへの反応が人によって異なる(ネガティブになりすぎる・ポジティブに受け取れる)のは、以下の要素が人によって違うため[グラフのイメージ]
    1.基調:フィードバック前のポジティブ/ネガティブ具合[原点位置]
    2.起伏:フィードバックを受けた際の感情の大きさ[振幅]
    3.維持・回復:フィードバックを受けてから基調に戻る前での時間[波長]

  • コミュニケーションの基本かもしれません。
    痛いこと言われるのはありがたいこと

  • フィードバックに関する本。
    フィードバックは3つに分類される、感謝・指導・評価。どこに入るのか意識する。どれが欠けても満たされない。
    フィードバックを与える時の前提として、人は自分のことをいい人だと思っている。
    フィードバックをもらう時には何が成長の妨げになっているのか尋ねる。
    認めるべき3つのこと、間違うことは必ずある・意図は1つではない・問題の一因は自分にある。
    文量のわりに得られたものは少ないが、いくつかの気づきがある本ではあった。

  • 私は信頼している友達や趣味や興味が似ている人、例えば読書好き、料理好き、旅行好きの人と話すときは話す内容も気にすることなく、どんどん話を深いところまで踏み込んで話せるのだが、

    考えていることがよくわからない、普段している生活や考え方とは違うところにいて、その人を理解することが難しい。そんな仕事仲間や親戚と話すことになると話しは浅くまた噛み合わない。
    それは誰にでも経験があることだと思う。

    私はそんな方と会ったあと家に帰ってからはよく反省会をしている。そしてモヤモヤしている。

    そんな時にこの本を読むとスッキリした。


    そんか人からフィードバックを与える時、受ける時、三種類に分けて考えればよいという。
    その三種類とは、


    •指導
    •評価
    •感謝

    人は いい評価 や 心からの感謝 を受け取ると嬉しいし、相手を好意的に思うようになる。
    そして、早く自分の向かう目的地にたどり着くための指導を求めている。

    このどれかがかけてもうまくいかない。
    と筆者は言っている。

    私は社会的役割にしても年齢にしても、フィードバックを与える側としては指導をすることは少ない

    自分と生活の仕方が違う、なにを話していいかわからなくなる、どうやって相手との距離を縮めていいかわからない人には

    +*+**いい評価*+***+と心からの感謝*+*+**
    を相手が欲しているタイミングで伝えることでいい関係が築けると思う。

    ただ、それぞれの相手のいい評価や感謝するところを見つける、気づくことは時々簡単で時々難しい。

  • 課題図書

  • 300ページ超あったが、重要な点はフィードバックには三種類あるということで、これをきちんと使い分ける点である。感謝と指導と評価である。

  • フィードバックの3タイプ

    1、感謝 

    フィードバックの目的
    →相手のことを見ていると伝える、認めていることや感謝の気持ちを伝える、つながりを保つ、モチベーションを高める


    2、指導

    フィードバックの目的:受け取る側の知識・スキル・能力の向上を促す
    感情や関係性の不均衡に対処する

    3、評価

    フィードバックの目的:点数やランク、期待していることを伝える、決断の材料を提供する


    「引き出す力」とは、自ら学ぼうとするときに必要となる力のこと。
    具体的に言うと自分が抵抗を感じることを認識して制御する力、不安にならず好奇心を持ってフィードバックのやり取りに集中する力、たとえ間違っていると思われるフィードバックをもらっても、成長の糧にできそうなものを見いだす力など。


    フィードバックが心をザワつかせる原因となりうるものは3つしかない。

    1「真実」
    2「人間関係」
    3「アイデンティティ」

    1.真実 フィードバックが間違っている、公平でない、役に立たない
    →そのようなフィードバックをもらうと、拒絶、保身、反論といった行動に出る。


    2、人間関係 フィードバックを君からはもらいたくない
    →フィードバックをくれた相手が誰かによっても見方が変わる。
    相手の説得力(のなさ)、信頼性(のなさ)、動機(の疑わしさ)など
    自分に感謝しているだろうか?敬意を持ってフィードバックをくれようとしているだろうか?本当の原因は自分ではないのにこちらのせいにしようとしていないだろうか?


    3、アイデンティティ フィードバックをもらって冷静でいられなくなった

    アイデンティティとは、自分の人となりについてや未来に待ち受けることについて、自分で自分に語るストーリーのことである。

    自分を批判する言葉が耳に入ってくると、人は、自分のアイデンティティを攻撃されたと思う。


    他人に評価や判断を下されることに不安を覚える反面、人は「評価にもとづいた居場所」を必要とする。
    →それがあれば今の自分で大丈夫だと安心できるからだ。
    指導や感謝のフィードバックよりも、まずは、自分はいるべき場所にいるのか、フィードバックをくれた相手との関係がこれからも続いていくのかを知っておきたい、ということだ。


    指導のフィードバックを与えても7、評価として受け止められることは多い
    例)「よくなる方法を教えると言っているけれど、本当はそれが向いていないといいたいのだろう」

    それに、評価が織り交ぜられたフィードバックから、指導の部分だけを取り出そうとすれば、学ぶというよりも、保身の感情や苛立ちが生まれる。


    フィードバックのタイプを混同させないようにするためには、気をつけることが2つある。

    1つは、フィードバックの目的をいっちさせること。

    もう1つは、指導と感謝のフィードバックは、(できるだけ)評価と分けるようにすること。


    フィードバックの目的を一致させる

    この本は、フィードバックを受け取る側へのアドバイスが大変を占める。

    しかしここでは、与えられる側、受けとる側の両方を踏まえたアドバイスを提供する。

    質問1 フィードバックを与える/受けとる目的は何か?
    質問2 自分から見て、その目的は正しいと言えるか?
    質問3 自分以外の人から見て、その目的は正しいといえるか?

    いちばんの目的は、指導、評価、感謝のどれか。
    改善させたい(したい)のか、評価を伝えたい(知りたい)のか、ありがとうと伝えて応援したい(されたい)のか。
    会話を始める前に自分の目的を振り返れば、目的がはっきりした状態で会話にのぞめる。たとえ自分の目的がはっきりしなくても、それはそれでかまわない。少なくとも、自分にすらよくわからないほど複雑だということは理解できる。

    会話が始まってからも、ときどき相手に確認をとるとよい。「私は君を指導するつもりで話している。君には指導に聞こえているか?君から見て、必要だと思える会話になっているだろうか?」と相手に尋ねる。

    もしかすると、自分のしていることは正しいのか知りたい、といった返答があるかもしれない。それは、感謝の言葉や肯定的な評価を求めているサインだ。

    まずは、会話の目的を明確にし、自分にとってもっとも役立つ会話はどういうものかをきちんと理解すること。
    それから、目的について話し合い、多少の変更が必要なら、話し合って折り合いをつける。相違を明らかにするほうが、暗に誤解を生むよりずっといい。互いの7理解につながるので、それぞれの目的を満たす第一歩となる。


    評価のフィードバックは要注意

    「評価」はラッパの音のように大きいので、それよりも静かな「指導」や「感謝」はかき消されてしまう。

    1年もしくは半年に一度、正式なフィードバックの機会(翌年の具体的な成果目標や習得予定のスキルなどを、上司と部下で話し合って決める機会など)が組織にあるなら、評価のフィードバックと指導のフィードバックは、少なくとも数日(できれば1週間)あけて行うほうが良い。
    その場合、評価のフィードバックを最初に行うこと。大学教授が学生に成績表を渡すと、学生は評点が載っている最後のページを真っ先に見る。その後でないと、講師のコメントを受け止められない。人は、自分の現状を把握してからでないと、改善に意識を向けることができない。

    理想を言えば、指導と感謝のフィードバックは、毎日でも、プロジェクトごとでも、年間を通じていつでももらえるのがいちばん。
    指導や感謝のフィードバックも、それが必要な時にその場でもらわないと意味がない。

    フィードバックは、感謝、指導、評価の3タイプがあり、そのどれをもらっているかを理解する。これが、フィードバックを有効に活用するための第一歩である。

    指導や評価のフィードバックで「聞こえたこと」と「意味したこと」に齟齬(そご)が生じることは、驚くこと多い。


    「ラベル探し」を意識する

    フィードバックが上手な人、そういう人は「まずどういう意味か説明しよう。それで、私の話におかしいところがあれば質問してほしい」という言い方をする。こういう人は少ない。

    ラベルに隠された意味を解明するためには、次の2つを「具体的に」する必要がある。

    (1)フィードバックは何に基づいてうまれたものなのか
    (2)フィードバックはどこへ向かうものなのか


    フィードバックの根っこを知る

    フィードバックを与える側は、
    (1)観察して情報(データ)を収集し、
    (2)それを自分なりに解釈する、という過程を経てラベルをつくる。彼らは、ラベルを通じて自分の解釈を語る

    (1)観察にもとづいてデータを収集する

    フィードバックは、与える人の観察ー見たこと、感じたこと、聞いたこと、触れたこと、匂い、味、思い出したこと、読んだことーにもとづいて生まれる。

    学術的な言い方をすれば、これらはすべて「データ」となる。ただし、ここで言う、「データ」には、単なる事実や数値以上の意味が含まれる。

    データには、フィードバックを与える側の感情的な反応も含まれる。


    (2)観察で得たデータを解釈する

    人は、自分が見たままをフィードバックしようとは思わない。まず、自分で解釈するか、自らの経験、価値観、想定、世間の暗黙のルールといったフィルターにかける。

    「やる気がなさすぎる」は、観察できることではない。「やる気がない」は、その人の態度を観察したことから生まれる判断であり、「やるきがなさすぎる」は、やる気がない状態の最高レベルという判断である。

    どんなアドバイスも必ず自伝的な要素を含む、とよく言われるが、人は自分が目にしたものを、その人独自の経験、想定、嗜好、優先順位、ものごとのやり方や人としてのあり方に関する暗黙のルールにもとづいて解釈する。
    自分の人生というレンズを通して他人の人生を理解する。だから、他人に対するアドバイスは、自分自身に基づいたものとなる。

    データと解釈は混同しやすい

    人工知能に詳しいロジャー・シャンクによると、コンピュータの知能はデータの管理とアクセスを中心に組織されているが、人間の知能は、ストーリーを中心に組織されているという。

    私たち人間は、自ら選んだデータを直ちに解釈し、その瞬間に自分の意見の混じったラベルをつくる。


    フィードバックを与えるひとは、自分が得たデータそのものではないと気が付かないまま、それをラベルにしてしまうことがほとんどだ。

    データと解釈の区別を助けられるのは、自分自身しかない。区別するとは、解釈を無視したり、切り捨てたりすることではない。

    データは確かに重要だが、それは解釈も同じ。
    少なくとも、一個人のものの見方がそこに現れている。だから、データと解釈の両方を、きちんと理解することが大切だ。


    フィードバックが向かう先

    フィードバックに含まれる、与える側の身勝手な過去の話はもう終わりにしよう。これからは、フィードバックに含まれる未来についてみていく。

    フィードバックが生まれるときは、未来に向けた要素を含んでいることが多い。なぜなら、指導のフィードバックは相手を向上させるための助言であり、評価のフィードバックは、それによって生じる結果や、今後の期待を表すものだからだ。


    アドバイスの意味を解釈する

    アドバイスをもらったからといって、必ずしもそれに従うとは限らない。しかし、どんなアドバイスをもらうときも、その意味が明快かどうかを確かめることははできる。「このアドバイスに従おうと思ったとき、何をすればいいかわかっているだろうか?」と自分に問いかければいい。
    この答えは「ノー」であることがほとんどだ。
    というのは、単純にアドバイスが曖昧するからだ。

    このようなアドバイスには、問題が2つある。

    1つは、発言者の本当に意味するところがわからないということ。
    そしてもう1つは、たとえ意味が理解できたとしても、そのアドバイスに従うために何をすればいいのかがわからないということだ。

    だから、受け取る側のほうで、与える側の意図を明確にする手伝いをする必要がある。


    その人にとっては「解釈」こそが真実

    暗黙のルール

    違う解釈が生まれる大きな理由の一つは、ものの見方のルールの違いにある。

    しかも、それが自分独自のルールだと思っている人はいない。誰もが唯一無二のルールだと思っている。


    違いを見いだす

    違いを見いだすこと、すなわち、自分と他人が違うものの見方をする理由を具体的に理解することは、フィードバックを受けるときに欠かせない。

    違いを見いだすというレンズを通じてフィードバックを見るようにすると、それが何にもとづいて生まれたのか、何を伝えたいのか、それに従うにはどうすればいいのか、自分とフィードバックをくれた人のものの見方が異なる理由は何か、といったことがだんだんわかってくる。

    このときに、フィードバックの「正しい部分」を抜きだすこともすれば、理解に役立ってくるだろう。ただし、この作業には注意が必要だ。というのは、正しいことを探しているつもりでも、気づかないうちに間違い探しを始める可能性があるからだ。正しいことを探していると、正否を問う志向に陥ってしまい、その結果、間違いを探し始めるということがよくあるのだ。

    だから、ここで言う「正しい」は、客観的事実について最終判断を下すという意味での「正しい」ではない、ということを覚えておいてもらいたい。

    フィードバックで探す正しいこととは、理にかなっていること、受け入れる価値があると思えること、フィードバックが役に立つかもしれないと思える解釈、といったものだちだ。


    納得がいかないときはどうするか?

    フィードバックをもらった人のゴールは、くれた人の意図を理解し、くれた人にあなたの意図を理解してもらうことである。

    相手の意図を理解したうえで役に立つと思えば、それを受けいれればい。役に立たないと思ったとしても、それが何にもとづいて生まれ、何を提案し、なぜそう思うのかはわかる。

    フィードバックが評価の場合でも同じ。評価によってどんな結果がもたらされるかをより深く理解すれば、それに同意できない理由もいっそうはっきりする。

    フィードバックをもらったときに正直な反応を見せるのは、相手に心を開いているということであり、フィードバックにかんしんがあるという意思表示と同じ、だから頭の中で思っていることを正直に口にすればよい。

    「え、そういう言い方をさされるのは心外です」
    「それは思ってもみませんでした」
    「自分がそんなふうに見られているとは思っていなかったので、言葉もありません。私の言動の理由を説明させてもらいたいと思っていますが、私の解釈が本当に正しいかどうかも、確かめさせて下さい」


    このような意見を述べても、会話を中断させることにはならない。むしろ、反応を相手に示すことで、理解しようという努力を続けることになる。フィードバックを理解する努力は続けるべきだ。

    なぜならば、フィードバックをもらい、それについて理解が深まるほど、自分自身のためになる何かがみつかりやすくなる。たとえ見つからなくても、自分がどのように誤解されていたのか、なぜ誤解が生まれたのかは少なくとも理解できるのではないか、我々はそう考えている。

    フィードバックから、解釈や判断を取り除こうとするべきではない。ただし、判断は熟考のうえで下すこと。そして、判断だとわかるように伝え、フィードバックを与えた相手と話し合う余地を残す。

    間違いの指摘をやめようと思っても、簡単にはやめられない。それに、間違いの指摘を一切やめる必要はない。


    幸い、人が人を理解または誤解するこちには驚くほどの規則性があるので、周囲に生まれる理解や誤解は予測することができる。


    他人の目に映る自分を知る

    [自分と他人の認識のギャップ]

    自分の目に映る自分    他人の目に映る自分

     シャイ          よそよそしい
     陽気           うさんくさい
     おおらか         あてにならない
     情熱的          感情的
     賢い           偉そう
     積極的          高圧的


    誰がフィードバックをくれるかということは、重要ではないように思えるかもしれない。発信元が誰であれ、アドバイスの中身は賢明か愚かのどちらかだし、提案は価値があるかないかのどちらかでしかない。だが、誰がくれるかということはとても大切だ。というのは、フォードバックそのものよりも、フィードバックをくれた人が原因となって心がザワつくことのほうが多いからだ。人間関係は、フィードバックからの脱線を招くいちばんの要因かもしれない。


    心がザワつく原因は二つ

    相手のことをどう思っているのか

    判断材料となりやすいのが、相手の説得力、相手の信頼性、フィードバックを伝えるスキルや判断力(の欠如)。

    一度ふさわしくない相手だと認定すると、ためらうことなくフィードバックの内容を却下する。つまり、「誰」によるかで、「何か」を切り捨てる。


    スキルや判断力

    ふさわしくない相手かどうかの判断材料として真っ先に使われやすいのが、「どうやって」「いつ」「どこで」フィードバックが提供されたかという情報だ。

    フィードバックの与え方が思いやりに欠ける、伝えるタイミングや場所を見誤っている、という場合、くれた人の配慮が足りなかったとみなされる。

    伝え方、伝える場所、伝えるタイミングによって、フィードバックをもらう人が激怒し(怒って当然というケースが多い)、話題を変える。これが、進路変更が発生する典型的な流れだ。


    フィードバックをもらうと、くれた相手の知識、経歴、経験に反発を覚えることがある。

    フィードバックをくれる相手の説得力とその人の背景知識は、受けとるフィードバックと決して無関係ではない。だからといって、相手の経験や知識だけを見て自動的にフィードバックを却下してはいけない。


    信頼性とフィードバックの内容は分けて扱う必要がある。この二つはまったく別物である。フィードバックをもらったら、フィードバックそのものの意味を探ろう。
    フィードバックが自分にもたらす影響をくれた人と分かち合うことは、真意がわかったと伝えなくてもできる。信頼性に疑いがあるからといって、自動的にフィードバックを切り捨ててはいけない。


    親友のように非常に近い存在からのフィードバックを受け止められない時がある理由も、これで説明がつく。相手がどれだけ自分のためを思っていても、どれだけ正しいことを言っていても関係ない。近い存在だからこそ、受け止められない時がある。


    あなたの最悪な面が見えていないので、それを直す手助けはできない。一方、調達部門の女性にはそれが見えている。彼女はあなたのことを、尊大で生意気で無責任だと思っている。無愛想で感じが悪く、できれば避けたいと思っている。そしてあなたは、彼女のことを厄介だと思っている。何しろ彼女は、あなたの最悪な部分を持ち出してくる。しかし、それは紛れもなく、あなたの最悪な部分だ。プレッシャーを感じているときや、誰かと衝突した時のあなたの姿だ。

    成長のルールに乗りたいなら、一緒にいていちばんいづらいと感じる人のところへただちに向かおう。そして、自分のどんな言動が成長の妨げになっているかと尋ねてみよう。彼らなら、ためらうことなく教えてくれる。


    自分への態度をどう感じているか

    仕事でもプライベートでも、また、上辺だけの付き合いでも親しい付き合いでも、人は人間関係に多くのことを期待する。なかでもとくにフィードバックのトゲに過敏になるのが、感謝、自分のテリトリー、承認を求める気持ち。


    自分のテリトリー

    フィードバックのやりとりする会話の多くは、その中心に矛盾が存在する。どういうことかというと、フィードバックをくれる人が現状の自分を認めていないと、フィードバックを受けいれるのが難しくなるのだ。

    フィードバックする人は、相手を何らかの形で変えたがっている。でも、与えられる側は、自分が変わらなくても問題ないと知っている。自分の欠点をわかったうえで愛していると言ったのだから、欠点そのものを愛してほしいと思っている。
    この問題を生じさせる一因となるのが、承認の定義の違いだ。フィードバックを与える側と受けとる側で、「承認」の定義が異なる場合があるのだ。与える側は、ちょっとした態度の変化を勧めているつもりでも、受けとる側は、自分のあり方を否定されたように感じることがある。


    心のザワついたときの対処

    心のザワつきが起きた原因に、目をそむけてはいけない。先にも述べたうように、心のザワつきが生じて別の問題が持ち上がったとしても、それは最初の話題と同じくらい重要なものかもしれない。だから、二つの話題が同時に持ち上がったことに気づけるようになること、そして、どちらか一方の話題をおざなりにしたり、却下したりするのではなく、二つの話題を分けて話し合えるようになることを目指すべきだ。


    心のザワつきを制御して話題の進路変更を防ぐには、次の三つが効果的だ。まず、その場に現れた二つの話題(元々のフィードバック内容と、くれた相手についての話題)を特定する。それから、それぞれの話題について話をする(このときは、ふたりが同じ話題について話をすること。)そして最後に、フィードバックをくれた人とともに、元々のフィードバックの内容をきちんと確認する。その内容がふたりの関係性にかかわることなら、とくにしっかりと突き詰める必要がある。


    「アドバイス」に潜む本音に耳をすます

    傷ついた、腹が立った、無視された、攻撃された、不安になったといった感情を抱くと、人はその感情を消そうとする。そして、善意による指導を装って、さまざまな「ヒント」を与える。その指導は、決して相手のためを思ってのものではない。それによって、自分に都合がいいように相手が変わることを望んでいるのだ。

    だから、指導のフィードバックを受けとるときは、「私の成長や改善を助けようとするものなのか、それとも、自分に対して怒っていることを伝えようとしているものなのか?」と自分に問いかけたほうがいい。

    「仕事のことばかり考えないようにすれば、人生がもっと楽しくなると思うよ」は、「仕事のことしか頭にないから、私はいつも寂しい思いをしている」という意味かもしれない。

    「いくらかこっちに任せてくれれば、大事なことにもっと時間が使えるようになるんじゃないか」は、「責任ある仕事を任せるくらいに自分を信頼してほしい」という意味かもしれない。


    話題を一つに絞れば、会話も人間関係もうまくいく


    人間関係を「システム」に見立てる

    人は、自分以外の誰かが問題に加担している行動に目がいくので、その人が問題の一端を担っていると心から信じる。だから、自分ひとりの責任ではないと思い込むのだ。

    この、「システムを構成する各人には問題の一部(自分以外の誰かが寄与した部分)しか見えない」というのは、システムのあるある第2位。第1位は「システムを構成する各人が、問題を生じさせた一端を担っている」こと。
    問題には双方がかかわっており、それぞれの行動が互いに影響を与え合っている。

    フィードバックのやりとりを有意義になものにしたいなら、与える側と受けとる側(ほかの人が関係することも多々ある)がどのように問題に関係しているかを、話し合いできちんと把握する必要がある。そうすれば、非難や守りの姿勢を脱し、理解しようとするようになるので、長期的な解決策が生まれるようにもなる。人間関係をシステムとして見ると、少し変えるだけで全体を大きく変えることになる部分が見つかることがよくある。それがわかれば、誰もがよく眠れるようになるだろう。


    1歩下がった場所:自分と特定の誰か

    好み、傾向、特徴の違いが組み合わさると、摩擦やフィードバックが生まれる。家庭でも職場でも、相手への干渉やフィードバックは、この違いの衝突が発端となって生まれるケースが圧倒的に多い。

    相手の間違いや悪い部分にばかり目を向けるのをやめて、互いが互いの言動にどのような反応を示しているか、とうことに意識を向ける。そうすると、しだいに衝突が起こるときのパターンが見えてくる。

    立場から発生するものの一つに、「予期せぬ敵」と呼ばれるものがある。頻繁に衝突を繰り返して摩擦が生まれると、しだいに互いが互いを自分の「敵」とみなすようになっていく。そして、互いが互いに、起きている問題を相手の性格やはっきりしない真意のせいにする。

    しかし、そういう場合、真の元凶は「立場」にあることが多い。それぞれが担っている立場が、(期せずして)慢性的な対立を生み出す。綱のどちらか一方を持って引くのが仕事だと言われたら、そのふたりは単に自らの職務を果たすだけで綱引きすることになる。

    予期せぬ敵が生まれる原因は二つある。立場の混乱と立場の正しい理解。


    何でも人のせい、何でも自分のせいにする姿勢をただいてくれる。

    フィードバックのやりとりで責任が話題にあがるとき、厄介なタイプが2種類存在する。何でも人のせいにするタイプと何でも自分のせいにするタイプ。

    しかし、システムというレンズを通してみることで、自分自身のそうした傾向を克服し、他人のそうした傾向を理解できるようになる。


    すべてを自分の責任にすると、ほかの人を責任から解放することになる。問題について学習し解決する責任をひとりで担ったところで、最適な解決策が生まれるとは思えない。

    また何でも自分のせいにしていると、いつしか周囲を恨むようになりかねない。心の奥底では、すべてが自分の性などありえないとわかっているので、「誰も責任を分かち合おうとしない」と考えるようになる。そして、自分ひとりで変えられることは何かと考えるようにもなる。


    自分のせいじゃない

    次に、生じた問題における自分の立場を認識しようとしない人について。
    こういう人は、フィードバックをもらったり、何かに失敗したりしたら、すぐさま自分の努力の邪魔をした人や、自分に偏見を持っていたと思われる人の存在を持ち出す。

    こういうスタンスでいる人はラクだろうと思うかもしれない。フィードバックをもらっても聞き流し、何一つ自分のせいにしないのだから。しかし、そういうことをしていると、いずれ必ず疲弊する。何でも誰かのせいにする人は、自分は絶えず、ほかの誰かの足りない部分や不誠実な一面の犠牲になっていると感じる。


    反応に目を光らせる

    誰かからフィードバックをもらったときは、沈黙の進路変更が自分のなかで行われていないか気を配ること。

    「問題があるのは私じゃない!あんなにギリギリになってから言われたのでなければ、もっといい数字をだせたのに。君がいつも遅いからイライラするんだよ」と心の中で叫んでいないだろうか。

    このような、「自分のせいじゃない!」といった思いを反射的に抱いたときは、1歩下がり、フィードバックをくらた相手との違いに目を向けるとよい。


    フィードバックの裏に潜む自分自身

    フィードバックをもらって気分の変化を経験するとき、脳や身体のなかで実にさまざまなことが起こる。その全容はまだ解明されておらず、ここで我々が語ることはとてもできない。敢えてシンプルにまとめるなら、フィードバックに対する反応は3つの状態が含まれると言える。

    基準、起伏、そしえて維持と回復だ。


    「基準」はいわゆる普通の状態で、良いことまたは悪いことが起きて、良い方向または悪い方向のどちらかに気分が動くときの基準となる。

    「起伏」は、フィードバックをもらったときに基準からどの程度気分が上がった(下がった)かを表す。フィードバックに対して大げさな反応を示す人は、起伏が厳しいということになる。反対に、穏やかでない知らせを聞いて平然としている人もいる。

    「維持と回復」は、起伏が長く続いた期間を表す。ポジティブなフィードバックをもらって高揚した気分はできるだけ長く続き、ネガティブなフィードバックをもらって落ち込んだ部分は、できるだけ早く回復するのが望ましい。


    1.基準

    幸福度の基準が高めの人は、低めの人に比べてポジティブなフィードバックに肯定的な反応を示す傾向が強い。そして、幸福度の基準が低めの人は、ネガティブな情報の方に強い反応を示す。


    脳は悪いことのほうを強調する

    心理学者のジョナサン・ハイトはこう語る。

    「脅威や不快感を抑えたいという反応は、チャンスや喜びに対する反応よりも早く強く起こり、抗(あらが)いがたいものである。」この意見は、フィードバックにまつわる永遠の謎を浮き彫りにしている。人はなぜ、400の褒め言葉をもらって、1の批判をくよくよと考えてしまうのか。


    思考+感情=ストーリー

    自分で自分に語るストーリーが感情と思考の産物ならば、感情か思考のどちらかを変えるように働きかければ、ストーリーを変えられるということだ。つまり、ストーリーを変える方法は2通りある。


    歪みを矯正する5つの方法

    1.自分の歪ませ方を意識する

      自分の行動パターンを知る
      最悪の事態を想定する
      起こりそうなことを先読みする

    2.感情、ストーリー、フィードバックを分ける

    3.ストーリーの脚色を阻止する

     世の中を理解しようとすると、世の中にはいくつかのルールがあり、私たちは普段、(無意識かもしれないが)それに従っていると気づく。そのルールはいわば、自分で自分に語るストーリーのための物理の法則のようなものだ。ルールには次のようなものがある。

     ●時間:現在が過去を変えることはない。また未来に影響を及ぼすが、未来を決めることはない。

     ●特異性:何か一つのことが劣っているからといって、それと無関係なことまで劣っていることにはならない。いま何かがうまくできないからといって、この先ずっとそれがうまくできないことにはならない。

     ●人:1人から好かれていないからといって、全員から好かれていないことにはならない。自分を好いていない人であっても、たいてい、自分のどこかには好感を持っている。それに、自分に対する人の見かたは、いずれ変わる可能性がある。


    ありのまま受けとめる

    ハーバード大学心理学部のダニエル・ギルバート教授も著書『明日の幸せを科学する』(早川書房)で述べているが、「仕事や恋人を失ったらどんな気持ちになると思うかと尋ねると、得てしてどんな人も、気持ちのつらさやそのつらさが続く期間を過剰に見積もる」

    しかも、人には失った状態から立ち直る力を低く見積もる傾向があるため、そのせいでますます予測は過剰になる。


    ユーモアは絶望を癒す

    喜劇は悲劇に時間を加えたものだ。とよく言われる。
    この考え方をいますぐ取り入れよう。
    ユーモアは、みじめな瞬間に抱く感情の高まりから解放してくれる。それも、絶望的な状況で発せられるものほど効果的だ。不運な登場人物にひねりの効いた筋書きはユーモアにつきものだと思っていれば、自分自身や自分の人生をおもしろい作品として見られるようになる。自分の置かれている状況にユーモアを見いだすことができれば成功だ。

    また、自分自身を笑い飛ばすことができれば、フィードバックを受けとめる準備ができている証拠でもある。自分を笑い飛ばせるようになるには、自分を守ろうとする手綱を緩めないといけない。世間の自分に対する見方を受けいれ、自分が思う自分を世間に受けいれさせることをやめるのだ。

    ユーモアを見いだそうとすると、脳が感情の状態を変えようと働き出す。ポジティブなことに作用する、左側の前頭前皮質が活動を始める。おもしろいという感情はここに生息している。何かおもしろいと思うことは、パニックや不安を和らげ、そういう感情を起こさせるサインを静めることにつながる。


    アイデンティティは自分のストーリー

    自分が語るアイデンティティは、周囲と比較した自分自身に影響される。人は、自分の身近にいる人をモノサシにして自分自身測る。

    自分に向って投げかけられるフィードバックをコントロールすることはできないが、それを素直に受けとめ、冷静さを保ち、自分のために活かす能力を向上させるために変えられることはある。

    絶対に変える必要があるのは次の2つ

    (1)アイデンティティのラベル化をやめて、複雑なものだという意識を育む

    (2)自分は変わらないという固定観念を捨て、自分は絶えず成長するという意識を持つ


    『話す技術・聞く技術』(日本経済新聞出版社)でも紹介したが、私たちは次の3つのことを自分のこととして受け入れる必要がある。

    それは、
    「間違うことは必ずある」

    「意図は一つではない」

    「問題の一因は自分にある」

    これらの受けいれは生涯ついてまわるが、受けいれる努力を続けていれば、フォードバックの受けいれがだんだんラクになっていく。


    成長マインドの持ち主は「驚くほど正確に」自身の現時点での能力を把握しているのに対し、固定マインドの持ち主のそれは「恐ろしいほど不正確」だという。


    成長マインドを持つ人は、矛盾があっても混乱することなく、正確な情報を求めてアイデンティティの調整や成長を図ろうとする。

    ふたりにひとりが固定マインドの持ち主らしいが、自分で自分にでき事ををどう語るかということも行動に影響する。

    子どもの知性を褒めることは、以外にも学習の妨げとなる、新しいことに調整させたいなら、子どもの努力を褒めたほうがいい。


    成長マインドが人生の質を変える

    特性や能力によっては、成長の余地があるかどうかわからないものもでてくるとおもうが、心配はいらない。その判断は簡単ではない。イエスと断言できないからと言って、ノーと断言するのはよくない。

    そういうときは、習慣を変える、もしくはどれか一つのスキルを向上させると心に決める。そして指導者を見つけて必死に努力する。自分が得意としないことをする環境に、むりやり身を置くのだ。そして無残に失敗したときは、次にするときにうまくできるための方法を3つ書き出す。そうして改善方法を洗い出しては試すことを繰り返し、どうなるかを確認する。


    やりとりが感情的になったり、権利の主張を声高に唱えたりするようになるほど、相手の言葉が評価に聞こえ、指導と受け止めるのが難しくなる。

    指導に聞こえるようにするためには、次のことを試してみるといい。この数か月のあいだにもらったフィードバックを思い出す。大きなことでも小さなことでもかまわない。


    努力で変えられること


    「人が成長するのは自らひたむきに努力したときであり、人がそれをするのは、努力すれば成長できると信じているとき」だということだ。

    そして、努力が何よりも大切になるのが、人生の質を左右するものたちである。

    知性、リーダーシップ、仕事ぶり、自信、思いやり、創造力、自意識、協調性といったものは、意識することで成長し、指導を受けることで改善する。


    言われたとおりにしても、必ず別のことを要求してこないか?

    他人を支配しようとする行為は、その人が抱えている不安から生まれることがある。だから、恋人や配偶者の愛情を確かめたいと思はなくなれば、二人の関係は終わったとわかる。上司が人前で自分を敬う態度を隠そうとしなければ、この上司は自分が尊敬するに値しない人だと思う。相手をコントロールしたがる人は、そういうやり方しか知らないということも考えられる。何が原因にせよ、変わることを次から次へと要求されれば、自分の力不足をつねに意識させられる状態になる。


    愛情を駆け引きする人


    心理学者は、人間が求めずにいられなくなる報酬を得るパターンを「間欠強化」と呼んでいる。

    ゲームや賭けごとは、そのパターンを利用している典型だ。どちらも、続けたいと思わせる程度は勝てるようになっている。勝てば、もう一度勝ちたいと必死になり、負ければ、それ以上必死になって勝とうとする。そして、私たちが何よりも勝ち得たいと望むのは、愛情や承認だ。


    優秀な人材は、能力の低い人材が職務をまっとうしなくても何も言われないという現実に腹をたてる。


    マネジャーはどうしていいのかわからず、自然とその話を避けるようになる。人事担当者を対象としたある調査によると、63%の人が個々の業績を効果的に管理する上での最大の難問は、部下の仕事ぶりについて正面から話し合う勇気がマネジャーにかけていることだと答えている。その勇気がないマネジャーは、可もなく不可もない社員にまで高い評価をつける。

    有能な人材が利息するいちばんの理由は、有意義なフィードバックの欠如だという。


    業績評価システムを導入する目的(一部)

    ●立場、職務、地域によって差が生まれない一貫した評価の実現
    ●公平な給与や報酬の分配の実現
    ●組織が肯定する言動を奨励し、否定する言動を律する
    ●社員に期待することを明確に伝える
    ●責任意識を高める
    ●組織の目的やビジョンを社員一人ひとりと共有する
    ●個人およびチームとしての仕事の指導や能力の開発
    ●適材適所の促進と維持
    ●主要な役職のスムーズな引継ぎ
    ●やりがいとやる気の促進
    ●スケジュールどおりに期日を守って評価を行う(四半期に一度、年に一度など)


    フィードバックが活きるかどうかのカギを握るのは、与える側と受けとる側のあいだにある関係性や信頼性、説得力やコミュニケーションスキルである。


    何かをテコ入れするなら、業績評価にかかわる当事者たちのコミュニケーションスキルの向上に力を入れるべきだ。
    フィードバックを受けとるスキルが向上すれば、評価システムは大きく変わる。受けとるスキルの向上とは、引き出す力を高めるという意味である。

    自ら学び、励ましの鏡だけでなく正直な鏡も求め、感謝や指導がが必要な時や、自分自身の現状について混乱しているときにその旨をはっきりと伝える力を身に着けさせるのだ。

    フィードバックを受けとる一人ひとりの受けとるスキルが向上すればー引き出す力が身に着ければー、そ

    組織としてのフィードバックを受けとるスキルも向上する。みんなで引き出す力を高めるのだ。


    一般に、組織で使用する業績評価システムを選択または導入する場合は、人事部や経営陣が率先して、以下のことを全社員に向けと行うことが望ましい。

    ●システムを導入する目的のすべてを明確に説明する

    ●ほかのシステムではなくそのシステムを選んだ理由を説明する
    ●システムのメリットだけではなく、想定される代償についてもきちんと伝える
    ●いいかげんな気持ちで取り組んだ場合の代償を説明する
    ●日頃から、議論、提案、フィードバックのやりとりを積極的に行うことを奨励する

    システムに関する不安や懸念に対処するときは、相手の話に耳を傾け、言いたいことを理解したと相手に伝える。そして、システムの改善につながる具体的な提案がないか尋ねる。提案された案を却下する場合は、提案者にその理由を必ず説明すること。


    社員の懸念に耳を傾けなくてもシステムを導入することはできる。しかし、フィードバックのやりとりによって生まれる葛藤や、やりとりに時間が奪われることは、人事部ではなく社員全員に共通する問題である。
    同じ問題をみんなで共有すれば、新しいアイデアが生まれる。それに、システムを押し付ける者とその被害者という構図が消え、人事部もほかの社員も、対等な立場でともに問題を解決する同志となる。


    2.感謝、指導、評価を分けて扱う

    一つの業績評価システムで、感謝、指導、評価のすべてを効率よく伝えることはできない。
    この三つは性質が違うので、区別する必要がある。

    評価は、個人、チーム、部門を問わず、公正かつ明快で一貫性のある内容でないといけない。
    また、評価の基準となるものを明確にしておく必要もある。評価をもらう人に対し、誰が評価をするのか、成功の判断や昇進の基準となるものは何かを明らかにする。そのためには、年間を通じて目標や進歩についてじっくりと話し合う機会を設けて、問題が起きた時にはその都度対処するようにする。

    評価のシステムは、公正さと一貫性を保つためにも厳密でないといけないが、個々の立場や状況の違いに対応する柔軟さも必要。どれも聞いたことがあると思うが、どれも簡単にはできない。


    指導のフィードバックは、場面に応じた指導を提供するのが良い指導である。
    改善の兆しが見えている相手には、頻繁にフィードバックを与える。相手が提案を必要とするタイミングで即座に与え、小さな修正や改善を実践する機会を提供する。

    年に一回大規模な指導の場を設けてその場で20の提案を与える、年に2回の指導の場でそれぞれ10の提案を与える、といったやり方では、あまり効果が望めない。というのは、指導のフィードバックの根幹にあるのは人間関係であって、場を設けることではないからだ。指導をする者と指導をもらう者は、組織のニーズや指導をもらう者個人の能力を踏まえたうえで、何をすべきかを絶えず話しあうことが大切だ。指導をもらう者には、力を出し切れていないと教えてくれる正直な鏡が必要なときもあれば、もっとよくなると論してくれる励ましの鏡が必要なときもある。


    指導と評価を混同すると、最低でも二つの問題が発生する。
    一つは、受け取る側が評価にとらわれて、指導の言葉が耳に入れないこと。
    例えば、家庭にもらえると話してしまったボーナスがなくなったといわれたら、その後に続くパワーポイントで作成するスライドを調整するコツは耳に入ってこない。

    もう一つは、指導を受けとめるには、安心感が必要になるということだ。指導をもらう側は、間違いや自分の弱点を認めても、職を失うことや昇進が見送られることにはならないと知っておく必要がある。正直な意見を述べても評価に一切影響しないという確約がないと、指導をもらう側は正直になれない。


    感謝のフィードバックが不足している組織は非常に多い。仕事に対する満足度が高い人でも、自分の努力や我慢が認めてもらえていないと感じることはある。公の場で感謝の意を伝える仕組みを設けるのもいいが、めったに顔を合わせない地位にいる人から儀礼的に感謝されることよりも、すぐそばで一緒に働いている同僚や上司から感謝の言葉をもらうことのほうを重視してもらいたい。形ばかりの「ありがとう」が増えたところで、言葉の価値が暴落するだけだ。でも、「この前、複雑な問題にうまく対処しただろ。あれを見ていたおかげで、自分のやり方を見直そうと思えたんだ」といった同僚の本音の言葉は、記念の盾や商品券よりも意味があると思えるのではないか。

    何を感謝と思うかは人によって違う。給与を感謝ととらえ、それ以上のこと必要とする人の気持ちがわからない人。自分を肯定する言葉や手書きの礼状を感謝ととらえる人、練習に付き合ってくれる上司の辛抱強さや、おいしい役割を譲ってくれることを感謝のしるしととらえる人もいる。感謝は、システムとして行うべきではない。そうではなく、感謝することが当たり前の文化を社内に根付かせるのだ。

    つまり、そばで一緒に働く人たちの仕事ぶりを見て、心からよいと思えることやその人特有のよさを見いだすこと、そして、どんな言葉を感謝や励ましとして受け止めるのかを個別に把握し、相手に応じて適切な言い方を心がけること、この二つを社員全員に奨励するのだ。


    3.学びの姿勢を浸透させる

    社員を固定マインドから成長マインドへ促したいなら、次の二つのことをするといい、まずは、固定マインドの社員たちに、成長マインドとはどういうものかを教える。「自分がアイデンティティとしてるものは成長する」という認識を最初から持っている人はほとんどいない。だから、固定マインドと成長マインドの違いを説明する場を設けて、それについて語りあい、疑問や疑念を噴出させる。

    もう一つは、引き出す力の向上。フィードバックのやりとりをしえいる最中に、何が心をザワつかせるか、フィードバックから学ぶにはどうすればいいかということについても話し合うように奨励するのだ。こういうことは、練習すればうまくなる。また、与える側と受けとる側の両方がそれを意識して会話をすれば、より有意義なやりとりとなる、フィードバックをもらったときの反応、混乱、自分を守ろうとする姿勢、盲点、フィードバックが何にもとづいて生まれ、どこへ向かうのかの解釈。こういったことは、仕事に関する普段の会話のなかで積極的に話題にしたほうがいい。

    ただし、「成長マインド」について語るときは、なんでもそれのせいにしないように気を付ける必要がある。相手がフィードバックを受け止めないからといって、それを成長マインドがないせいにしてはいけない。成長マインドは、どんなフィードバックもうけとめられるようになるという意味ではない。あくまでもフィードバックに耳を傾けよとする姿勢の話である。


    規範にしたい行動に注目を集める

    業績評価する(される)とき、催促したい(されたい)と思う人はいない。業績評価を行うとなると、通常業務とは別に、目標の設定、指導、評価という三つの作業がのしかかる。こういう作業は優先順位が低く、緊急事態が発生したときはいちばんに先送りにされる。そうなると、人事部や業績評価の担当者は業績評価を行うようにと催促し、マネジャーや社員は催促されることになる。

    研究では、規範にしたいことを強調すると、悪い行動を非難したときよりも悪い行動の改善がみられることがわかっている。つまり、31%の人に「まだ評価を行っていない」と非難のメールを送るよりも、69%の評価をすませた人に「ご協力ありがとうございました!」とメールを送ったほうが効果的。
    評価を終えてこのメールを受けとった人は、自分の努力に感謝の意を表してくれたと思う。そしてメールを受けとってない人は、周りに遅れをとったと感じる。


    与える側にできること


    マネジャーやチームリーダーが、社内文化の改善のために何ができるだろう?
    組織の文化とは実のところ、社内の一部で文化となっていることの寄せ集めである。その内容は、マネジャー、チーム、部署によって、大きく異なることもありうる。マネジャーやチームリーダーは、独自の文化をつくって部下やチームメイトに影響を与えることが可能だ。さらには、ほかの部署やチームにその文化を浸透させることもできる。
    そのための3つのアイデア。

    1.学びの姿勢を示し、指導を求める

    マネジャーは、さまざまな意味で組織の文化の象徴だ。マネジャーが積極的に学ぶ姿勢を見せれば、社内に学びの文化が定着する。

    学びの姿勢を示すには、まず、自分自身が本当に学ぶ人にならないといけない。これが最も難しい。次にすることは、学びたいという意欲を表に出すこと。これは簡単だが忘れやすいので、表に出すことを意識したほうがいい。そのためには、自分の盲点を周囲の人と話題にしよう。責める言い方をやめてともに責任があるという言い方に変え、自分の何が問題だと思うか尋ねよう。自分が責任を引き受けるところを最初に示し、周囲にも各自の責任を引き受けさせよう。業績評価を行うときは、評価対象となる人に評価の仕組みや評価内容をわかるように説得し、彼らの変わろうとする意志や努力に対して感謝の意を示そう。自分がフィードバックを受けとるときに、大変だと感じていることを率直に語ろう。指導や協力を積極的に求めよう。自分よりも上の立場の人だけではなく、同僚や部下にも求める。

    個々のリーダーが社内文化の改善を目指すなら、自分が手本となることが何よりも効果的。


    2.与える立場を自覚する

    フィードバックを与えるべきかどうか、与えるならどういう与え方がいいかと考えるときは、自分のアイデンティティに一致しないからいやだと思ってやめるのではなく、相手にとっての長期的な影響を忘れずに考慮に入れてもらいたい。


    3.個々の違いが生む衝突を認識する

    フィードバックの与え方にその人の気質が影響する例はほかにもある。

    心配症の人は、大量のフィードバックを与えて自分でコントロールしているという感覚を得ようとする。無謀なくらい高い要求を自分に課さずにはいられない人は、他人にもそうしようとするところがあるため、指導や否定的な評価ばかりを与え、感謝の言葉は一切述べない。自分を抑えられない人は、思ったこと率直に言う傾向がある。それは相手の役に立つときもあれば、そうでないときもある。

    このように、人によって気質もフィードバックの与え方もこれほど違うのだから、相手によっては、自分がデリカシーに欠ける与える側になることもあれば、フィードバックに敏感に反応する受けとる側になることもあるだろう。だからこそ、フィードバックを誰かに与えるときは、受けとる側に自分の与え方についてどう感じているかと尋ねることが大切なのだ。


    自分の成功は自身の能力のおかげだと思い、失敗は自分以外に原因があると思う傾向のことを、自己奉仕バイアス(self-serving bias)と呼ぶ。このバイアスが働くと、他者の能力に比べて自分自身の能力を過大評価する傾向を招く。


    UCLAのアルバート・メラビアン名誉教授は、メッセージの38%を声のトーン、55%を身振りや表情が担い、実際に発した言葉が担うのはわずか7%だと主張している。


    査定と私見を区別する力は、固定マインドの人が自らの能力を正しく評価できないことに関係しているかもしれない。成長マインドの人のほうが自らの能力を正しく評価できるのは、自分の現状に対して個人的な判断のようなものをくださいないからではないだろうか。現在の自分の状況は、この先続く長い旅路でたちどまったほんの瞬間にすぎない。


    2010年秋、シブソン・コンサルティングとワールド・アット・ワークが、750名の人事担当者を対象に「業績管理の実態調査」を実施した。その調査によると、会社の業績が悪いと個々の査定も下がると答えたのはわずか20%で、個々の働きと組織としての業績の相関関係は低いことがうかがえる。また、管理職の立場にある人が、評価や指導を部下に直接与えていると答えたのも全体の40%にすぎなかった。

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著者プロフィール

ダグラス・ストーン
 ハーバード・ロースクール講師。トライアド・コンサルティング・グループ創設者。シティグループ、ホンダ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、シェル、ターナー・ブロードキャスティング・システムといった企業をはじめ、ジャーナリスト、教育者、医師、外交官、政治家のコンサルティングも行う。クライアントはアメリカだけにとどまらず、南アフリカ共和国、カシミール、中東にも及び、世界保健機関や国際連合エイズ計画にも協力した。ホワイトハウスで上級政治任用官の研修を行った経験もあり、サンパウロで開催された世界交渉会議では基調講演を行った。寄稿したメディアは「ニューヨーク・タイムズ」紙、「リアル・シンプル」誌、「ハーバード・ビジネス・レビュー」誌など多岐にわたり、さまざまなテレビ番組やラジオ番組に出演している。ハーバード・ロースクールを卒業し、卒業後はハーバード・ネゴシエーション・プロジェクトの副ディレクターを務めた。

「2016年 『ハーバード あなたを成長させるフィードバックの授業』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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