昭和史 (上)

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  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492061855

作品紹介・あらすじ

日本の現代はここから始まった。デモクラシー思想が浸透する半面で、拡大していく軍事費。戦争と計画化と破壊の道を歩んだ昭和前半期。波瀾と起伏に満ちた現代史の決定版。第20回大佛次郎賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 書店で大量に平積みされていたので深く考えずに購入しましたが、とても勉強になりました。本書は政治経済だけでなく庶民の生活状況、文化(演劇等)の発展などかなり幅広いトピックを取り扱っていて読み応えがあります。特に経済面についてはかなり平易な記述になっているので、景気の波がどう起こったのか、政府がどう対応したのか、などは大変勉強になりました。現在と違って、政府のちょっとしたアクション(例:金利引き上げ)が国民生活に多大な影響を与えている様子がありありと浮かび上がります。

     一方政治面の記述ですが、これは正直私には厳しかったです。というのも初めて聞く日本人政治家の名前が多数出てくるので、途中からはWikipediaで政治家を検索し写真や説明を読みながら、本書を読み進めました。しかし一貫して伝わってくるのはこの時期の日本人の懸命さです。また日本を取り巻く外部環境についてもひしひしと伝わってきます。具体的にはソ連による領土拡張のプレッシャーや欧州大国によるアジアの植民地化です。逆に言えばこれらのプレッシャーがなければ日本は急速な工業化および経済発展を達成できなかっただろうと思います。そして戦争を回避するチャンスもありながら日中戦争および太平洋戦争に突入してしまった状況についても本書では詳細に解説されています。

     一方本書を読んで感じたのは現在の中国の動きと当時の日本との類似点です。太平洋戦争前の日本は明治維新後急激に工業化および経済発展を進めて新興国の一角となりましたが、急速な工業化による所得格差の拡大(そして当時の農民の悲惨な窮状に同情した陸軍士官らによるクーデター行為)、軍事力の増強、そして米国の経済制裁などもありエネルギー制約にぶつかり、インドシナへ侵攻してしまうなどの戦争行為に出てしまいました。ひるがえって現在の中国は本格的な経済発展をしはじめて30年以上たちますが、まさに国内の状況は昭和初期の日本に共通の問題を抱え、エネルギー制約も厳しくなっている中で、海洋権益を拡張しようと動いています。もちろん相違点も数多くありますが、戦前の日本と現在の中国にいくばくかの共通点を見つけ空恐ろしい気持ちになりました。

  • かなり硬質な文章だが、表現はよく意を達する、面白い文である。概説書より詳細に論じながらも、重大な歴史的事象から事象へとテンポよく進み、飽きが来ない。ただ、日本にとって塗炭の苦しみを味わった時代でもあり、私も快調に読んでいくという訳には行かなかった。事実の叙述を丹念に行った上で、歴史評価を試みているが、戦争を不本意とすることや、英仏米を中心とした国際秩序への打破が日独伊の企図したところとした評価など、気分的に反発を感じるものではなかった。現代では戦争は否定され、経済の優勝劣敗が国の命運を分けるだろうが、それでも戦争が起きないとは限らない。とはいえ、戦争を封じ込めた現代でも、あれやこれやと危難が降りかかろうとする。経済恐慌や自然災害や、最近の疫病の蔓延。我々を試す試練は止むことを知らないようだ。

  • 1回目読了。名前だけ知っているとか、名前も良く知らない、人物が多数出てくる。背景を知っているとより楽しめる。この本を調べて追体験するだけで、かなり楽しめる。人間のやることは、いまでも変わらない。時代と場所が違っても、私は得るものがあった。2014/07/28

  • 【要約】


    【ノート】

  • 『昭和経済史』および『現代経済史』(ともに岩波セミナーブックス)で、経済史の観点から昭和の歴史を通覧した著者が、政治や社会の動きも含めた昭和史の全体像を描いた本です。

    上巻では、1926年から45年の終戦にいたるまでの歴史が、わかりやすく説明されています。この時代については、さまざまな立場からの歴史叙述が可能であり、激動の時代を生き抜いた個々人に焦点をあてたかと思えば、国際政治の舞台を大写しにして日本の置かれていた状況を解釈するなど、視点の操作を融通無碍におこなってみずからの田に水を引くような議論もしばしば見られますが、本書では政治と経済の二つの視点を基軸にしてブレることなく昭和史の大きな潮流を描き出しています。

    事実にもとづく淡々とした叙述でありながら、ところどころに著者自身の評価が明瞭にくだされるスタイルに、やや場違いな感想ではありますが、さわやかな印象を受けました。

  • ざっと読む。

  • 下巻参照のこと。

  • 高校を卒業したのははるか昔になるのだが、その頃の歴史の勉強は縄文時代から始まって江戸時代まで進んだかどうか記憶も定かではないのだが、近現代史を習った記憶はない。遺跡や古文書を頼りに事実があったかなかったか怪しい時代のことを学ぶのはロマンがあって楽しいかもしれないが、いまを生きる若者にとってその将来に影響を及ぼす近い過去を情報公開された資料に裏打ちされた事実の集積によって学ぶ方がはるかに有益と思えるのだが、国はそこを敢えて行わないのであろうか。何を隠そうとするのだろうか、その必要があるのか、釈然としない。

  • 昭和のはじめから終戦までの間を、非常に濃密な文章と図表で表現した一作。
    政治経済から人々の暮らしまで網羅されているので、戦前史を知りたければまずこの一冊。
    社会主義者の動向も追っていて、とても興味深い。

  • 経済政策と政治面の両面から戦前を捉えている。いかに日本が戦争に突入したかという点に加え、戦前に、戦争準備のために作られた制度が、戦後形はそのままに意味合いだけ変えて存続している、ということが非常に興味深かった。
    左翼、右翼というくくりが、日本全体が右寄りになることでいっぱからげに右寄りな思想になってしまったこと、ソ連の計画経済的思考だと戦中の経済統制は社会主義の実現のためにむしろ歓迎されたことはなるほどと思う。
    また、中に出てくる法案や固有名詞を現代と置き換えると、驚くほど似ていて驚く。そう考えると、軍隊というものを保有する限りはいかに制度が整っていても戦争に突入する可能性はあると言える。

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著者プロフィール

中村 隆英
中村隆英:元東京大学名誉教授

「2015年 『明治大正史 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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