- Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
- / ISBN・EAN: 9784492211823
作品紹介・あらすじ
石油、金、ダイヤモンド、レアメタル…。先進国を支える貴重な資源が大量に眠る大陸、アフリカ。かつての貧困の地が今、高度成長を続けている。だが、その成長の地で犯罪や紛争が頻発し、麻薬の密輸、金融詐欺、海賊行為など国境を越える暴力となって日本にも襲いかかる。資源ブームに沸くアフリカでなぜ、暴力の嵐が吹き荒れるのか。元現地特派員が自らの目で見たアフリカ社会の今を報告する。
感想・レビュー・書評
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毎日新聞社のアフリカ特派員だった著者による中央・南アフリカ取材レポ。紛争多発地帯での、時には命がけとなる取材の様が生々しく描かれており、そのジャーナリズム魂には敬意を抱いた。本としてはとても面白いんだけど、The Economist特派員ロバート・ゲスト『アフリカ 苦悩する大陸』I(東洋経済新報社/2008年)と比較すると、その主張に弱さを感じる。ゲストの主張は「アフリカ諸国が貧しいのは政府が無能だからだ」というものだった。それに対し、白戸はアフリカでの暴力の連鎖の原因を「格差」に見いだしてるようなんだが、その格差はどこからもたらされたものなんだろうか?という点はいまいち明確にしていない(最後の方で自由主義的資本主義に言及しているが、それはあまりに短絡的に過ぎるだろう) 紛争の現場への取材を重視し過ぎているために、蔓延する腐敗・汚職といった政治的な話題や経済的分析まで眼がいってないのはものすごく惜しいと思った。毎日新聞がサハラ以南という広大な領域をたった一人の特派員に任せているというのも問題だとは思うんだが、、、それに毎日新聞は何故こういう本を自社から出さないんだ!?
日本できちんと報道されることのないアフリカ情勢を知りたいのであれば、とても有用な本だけど、やはり『アフリカ 苦悩する大陸』との併読をお奨めしたい。また、新聞記者を案内する立場から書かれたダウド・ハリ『ダルフールの通訳―ジェノサイドの目撃者』'(ランダムハウス講談社/2008年)もお奨め。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この本を読んだら、この豊かな日本で格差社会到来などと騒がれていることが戯言のように感じられてくる。
アフリカの大地における壮絶な現実。
著者は、南アのヨハネスブルク特派員として2004年から4年間を過ごした、毎日新聞社の現役記者。
1970年生まれということで、自分とほぼ同世代です。
南アといえば、来年のFIFAワールドカップ開催国。
先日も日本代表が訪れて、南ア代表とテストマッチを行いましたが、その治安の悪さについては、いろいろと噂に聞くところ。
第一章では、そんな南アの治安について、犯罪者・被害者双方へのインタビュー取材などを通じて生々しく伝えられます。
これだけでも想像を超えた悲惨な現実に驚かされるのですが、まだまだ序の口でした。
第一章と第二章のナイジェリア編で伝えられるのは、まだ「犯罪」のレベルです。
これだって日本じゃ考えられないような現実なんだけれど、第三章のコンゴ、第四章のスーダンになると、もはや「犯罪」を超えて、「内戦」「虐殺」となっていきます。
政府自らが村々への虐殺行為の後ろ盾となったり、隣国の反政府勢力と結んだり、映画「ホテル・ルワンダ」や「ブラッド・ダイヤモンド」で描かれていた世界がまさに現実なんだということを思い知らされます。
そして、第五章の「ソマリア」に至っては、「無政府」。
著者は命を賭してソマリアの首都モガディシオに二度にわたり取材のため訪れるのですが、「無政府」とはどういうことなのか、交通法規も警察もない国家を身をもって体験します。
著者は、この貧しく悲惨なアフリカ諸国の状況と、豊かな先進国の間の関係を、「資源」というキーワードで読み解きます。
ここで紹介される諸国は、ソマリアを除き資源国。
欧米や中国の資源メジャーがアフリカ諸国の貧富を拡大させ、資源の盗掘が武装勢力の資金源となる。
一方で、日本に住む我々は、遠いアフリカの地で発生している内戦や虐殺のニュースなど気にも留めない。
それにしても著者がアフリカ特派員生活で繰り返した、決死の取材の数々には驚かされます。
犯罪集団や、武装勢力のリーダーへの命を賭したインタビュー取材。
時には、密入国という手段で国境を超え、内戦の渦中にある地域に潜入する。
大手新聞社の記者といえば、記者クラブでぬくぬくとしているイメージだったけど、そのイメージをよい意味で壊された。
といっても、著者は今は帰国して政治部記者として民主党を担当してるらしいんですが… -
社会
思索 -
毎日新聞の元ヨハネスブルク特派員による本なので、掲載当時の紙面で読んだことのある内容もあった。それだけ紙面でも印象的だったわけだが、ここでは記者の取材苦労話も含めて掘り下げられている。
統計面ではGDPが伸びていてもそれは資源輸出が伸びているだけで、その金は権力者の懐や軍事費に回ってしまい、足元のインフラや医療はグダグダの資源国(コンゴ、スーダンなど。ナイジェリアもそうか)。マクロ経済だけでは推し量れない、ガバナンスであるとか、国民の文化みたいなものの重要性を感じる。それを突き詰めると、ダルフールの虐殺、コンゴの内乱のようなことが何故起こるか、となる。原因は複合的なように見えるが、ひとたびタガが外れると恐ろしい。 -
302.4||Sh6.7||Ru
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アフリカの現状が如何に腐っているかが分かる。
もうやってられん・・・
南アフリカ:格差によって犯罪が組織化される
ナイジェリア:本来国民守るべきが加害者となっている -
偏りのない視点で「アフリカ」を知ることができる。
アフリカ。その平坦な国境線に旧植民地の悲劇を感じるが、本書を読むと<暴力>のあまりの偏在ぶりにびびる。
ウェーバーやゲルナーの国家やナショナリズムの定義を念頭に置きながら読むと理解しやすいはず。
「国家とは、ある一定の領域の内部で――この『領域』という点が特徴なのだが――正当な物理的暴力行使の独占を(実効的に)要求する人間共同体である。」(『職業としての政治』)
「ナショナリズムとは、第一義的には、政治的な単位と民族的な単位とが一致しなければならないと主張する一つの政治的原理である。」(『民族とナショナリズム』)
少なくとも「アフリカ」では、「暴力の独占」と「ナショナリズム」を善悪ぬきに追い求めなければ、国際協力もネイション・ビルディングも失敗に終わってしまう。