美貌格差: 生まれつき不平等の経済学

  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492314531

作品紹介・あらすじ

美形のお得度を真面目に測った史上初の本

見た目で生涯年収の差は2700万円?!
ブサイクな人は保護されるべき?
人の美しさをどう測る?
美しさは収入にどう影響するか?
美形効果が女性の間では小さいのはなぜか?
美形は利益にどう影響するか?
CEOがイケてるほうが業績はいい?
美しい子どもの市場なんてありえるんだろうか?
借金するにも美形はお得?
ブサイクは救えるか?
ブサイクを守らないなんて筋が通るか?
美形だったら人生バラ色?
未来の美形はどうなるか?
ブサイクなあなたに何ができる?

意外にも、着るものや化粧、整形手術に効果はない。
美形かどうかは、会社の業績、選挙の結果、融資の条件、寄付金集めにも影響する。
労働経済学の権威が20年かけて解明した「衝撃の真実」

感想・レビュー・書評

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  •  美男美女はそうでない人たちよりも得をしている、という俗論を検証しているのが面白い。もちろん美男美女がその美貌によって社会的経済的に得をしていること自体は驚くことでも何でもないし、女性は男性に比べて美醜や老いの影響が大きく出る傾向にあるという指摘も容易に想像がつく。

     もっとも面白いのは、経済的な格差を美貌という点から見ると、女性よりも男性のほうが美貌の影響が大きく出ているということである。分かりやすく言えば、男のブサイクは損をするということである。

     著者によれば、収入のよい(平均を上回る)男性は、そうでない男性に比べて17%(4%のプレミアムと、13%のペナルティの差)収入を上回る。アメリカにおいて1年通学が延びることで収入が10%上がることを考えれば、決してバカにできない要因である。また、平均的な容姿をもつ男女が40年間2000時間働くと生涯収入は160万ドルになるが、容姿が並に満たない男女は146万ドル、そして容姿が優れた男女は169万ドルに上がる。生涯収入が最大で23万ドル違うというわけである。このことは、美貌のプレミアムよりも醜いペナルティが大きいことを示唆する。

     ただひとつ懸念されるのは、こうしたデータは「科学的に証明された」としてセンセーショナルにとりあげられやすいことだろうか。上記の主張の元となったデータは1970年代のものである(美貌と収入の関係を調べたデータなど、そうそうないだろう)。また既存のデータに基づく統計的な操作には限界があることも著者ははっきり書いている。だから著者は「容姿が収入に与える影響の大きさの推定値としてまるっきり的外れではないと、まあまあ自信をもって言ってよさそうだ」と書いている。容姿が何らかの影響を与えていることは疑いようがないが、この数字はあくまでも参考値として見るべきだろう。

     とはいえ、「そんなこと分かっとるわい!」という人にとっては経済学のネタ本として読めば面白い一冊だと思うし、ほとんど素養の無いブサイクな私もニヤニヤしながら読んだ。とはいえ、本書を読んだブサイクな人間(私?)が「ブサイクよ、立ち上がれ! イケメンを根絶やしにしろ!」と立ち上がれば世界中が美醜によって分断された闘争状態になってしまう。本書はそんな威力を秘めた、危険な一冊である。

  • 美男美女は得をする。これが本書の結論です。一見自明にも思えるこの結論について、経済学の枠組みを使って分析したたくさんの研究結果を紹介しています。

    みなさんの中には、経済学ってこんな分野も扱うの?株とか景気とか、そうゆうのを研究する学問なんじゃないの?と思った方もいるかもしれません。確かにそれらは主要な研究対象ですが、人の意思決定に関わる内容であれば、だいたいは経済学の対象になる。相撲の八百長についてまじめに研究した経済学の論文もあるんですよ。

    さて、美貌と収入の関係を経済学的に分析するにはどうすればいいか。やり方は簡単です。たくさんの人の容姿(例えば5点〜1点の5段階評価)と収入のデータを集めて統計分析にかければ良い。

    いや、本当にそれでいいのでしょうか。教育が収入にプラスの効果があるのはこれまでの研究で分かっているんですが、仮に容姿のいい人がいい教育を受けやすいとすれば、容姿の効果を過剰に測定してしまうことになってしまいます。だから本書で紹介されている研究(データは1970年代のアメリカ)では、以下のデータも使ってコントロールしています。
    ・教育、年齢、健康、組合への加入、結婚歴、人種や民族、都市の規模、地域、出身国、家族の出目、会社や工場の規模、勤続年数

    さて、結果です。容姿がいい人と悪い人の収入の差は、男性で17%、女性で12%と出ました。けっこう大きな数字にも見えますが、比較対象がないとちゃんと評価できません。で、教育の効果との比較してみたいんですが、通学が1年伸びると収入はだいたい10%増える。つまり、容姿がいい人は、1年ちょい余計に教育を受けているくらい、収入のアドバンテージがあるということです。けっこうですよね。

    先ほどの数字は、男性の方が女性よりも収入に影響が出るというものでした。ちょっと意外に思った方もいるかもしれません。本書の仮説はこうです。女性は男性より外に出て働くかどうかの選択を行う余地が大きいから。特に1970年代のデータですからね。容姿に自信がある女性は外で働き、自信がない女性は家で専業主婦になりやすい。

    さて、容姿がいいと収入が高くなりやすいことはわかりました。一般的に収入の高い人は、会社に利益をたくさんもたらし、社会の役に立っているわけですが、美形は社会の役に立っているのでしょうか。収入が高いのは、面接官や上司の評価が甘くなっているだけじゃないか?確かに、美形は私的な意味では生産性が高いです。美形がそばにいると嬉しいし、化粧品の販売員が美形だとよく売れます。でも「社会の」役に立っていると本当に言えるのでしょうか。

    この分析は非常に難しく、はっきりとした結論は言えません。それを前提として、本書にあるオランダのテレビショーの分析を紹介します。これは参加者5人のクイズ番組です。早押し問題で持ち金をかけて戦います。各ラウンド終了時に一番成績のよかった人が、脱落者を選びます(脱落者のお金は没収される)。これを第4ラウンドまで繰り返し、賞金は最後の2人で山分けとなります。つまり、なるべくクイズに正解しそうな人を残して、アホっぽい人を脱落させればいい。このテレビ番組における参加者の行動を分析すると、脱落者は容姿が平均的に悪かったことがわかりました。他方、正解率に容姿の影響はありません(美形の生産性が高いわけではない)。したがって、世間が美形好きなのは、美形は社会の役にたつから、というわけではなさそうです。

    本書では、マッチングサイトの市場分析の研究も紹介しています。分析の結果、男性も女性も美形により良い反応を示していることがわかりました。ただし、そこに男女間で差はありませんでした。少し意外かもしれませんが、男性も方も容姿をしっかり評価されているようです。他方、教育水準の高い男性は女性に好まれるが、女性の教育水準に対してその傾向は強くないという結果も出ています。

    最後に、筆者は「ブサイクには政府が保護すべき」という主張をします。え!?っていう感じですが、筆者は、ブサイクが持っているハンディキャップは、アフリカ系アメリカ人の持っているハンディキャップと大差がなく、後者を保護するなら前者も保護すべきと言います。

    ここからは私見ですが、ブサイクを政府が保護する点、理屈は同意しますが、それって政府が「この人はブサイクです」というレッテルを張るわけですから、かなりキツい。すごいスティグマですよね。なんとなくブサイクだなと思っていても、曖昧だから希望はある。でも確定しちゃったら立ち直れないですよね。まあ、保護するかどうかはおいといて、容姿と収入に相関がはっきりとあることを統計分析で示したことは興味深かった。すごく俗っぽい内容だけれども、人間や社会を理解するうえでとても重要な切り口だと思います。

  • 顔がいいほうが生涯年収もちょっと多いらしい。

    【メモ】
    蓼食う虫も好き好きという言葉のとおり、人の好みはバラバラだが、人の美しさの基準をどう設定するのか。
    ①美しい顔についてはだいたいの合意が成り立っている。美しいかどうかについて若干の個人差はあるが代替の人は美しいという。逆に醜い人は満場一致で醜い。
    ②美しいと評価される人のほうが醜いと評価される人より多い
    ③若いほうが美しいと評価される
    ④若い時に相対的に美しいと評価された人は年齢を重ねても美しいと評価される傾向にある
    ⑤服装や化粧など短期の投資で容姿を変えることはできるが、改善しても効果は小さい
    ⑥女性と男性では評価のされ方が異なる女性はとてもうつくしいかとても見にくいかの割合が多い。

  • 何か語っているようで、あんまり何も語ってないかなあ。
    美貌によって得/損があるのでは?というのは凡人の誰もが薄々、でも確信を持って思っていることで、それを立証しようとするのは面白いのだが。

    まずサンプルとして「美しい人」「普通の人」「醜い」を分ける時、一体何の基準で分けてるのかが曖昧だし疑問。美は顔の対称だけではないはず。

    そしてアンケートの対象の層や、何をもって「得」とするのかも、なんかバイアスがいろいろかかり過ぎて、ズレズレのような気がする。

    話の種としては面白いけど、としか言いようがない。

  • なかなか胸糞だし外見コンプをフル加速させる本ですが、夢中で読みました。正直読んでいて気分が悪くなる人もいるんじゃないかと思います。

  • 見た目は大事っていう当たり前の結論。
    収入面でいうと、女性より男性のほうが美醜で差がつきやすく、特にブサイクは不利っていう救いの無い話でアチャーと思う。
    経済学というより感想文のような本ですな。

  • 結論としては当たり前のことかもしれません。要するに若くて美形が得をするということです。

    ただ、だからと言って本書がつまらない訳ではなく、むしろこうしたある種の層にはタブー視されそうなテーマを、どんな形で学術的に昇華させていくことができるのか? ということを見ていくことができるという意味で、知的好奇心を満たしてくれる内容です。

    ある意味でこうしたテーマが半ばタブー視されたり、下世話なものとして捉えられたりしてしまうのは、美形が得をするということを誰もが認めている(そして如何ともし難い)からこそ。そこに学術的にメスを入れた考え方を持っているかどうかというのは、このテーマをフラットに見るためには必要不可欠なものと思います。

    なお、本書は大変訳出が秀逸でサラサラ読めます。それもそのはず、「ヤバイ経済学」「ブラックスワン」などの役を手がけた望月氏によるものです。お勧め。

  • 美男又は美女であることが期待される職業はあるだろうし、生来の容貌のせいで理不尽な扱いを受ける人もいるだろうが、どんな仕事をしているかに関係なく、また、誰もが認める美貌の持ち主(又はその反対)とまでは言えなくても、一般に容姿が整っている人の方がそうでない人より収入が多いとは、なかなか納得しがたい。しかし、人はたいてい見目麗しい人に好感を抱くので、それに基づく選好が巡り巡って、容姿に優れる人に経済的な利点をもたらすのだと言われると、確かにそういう側面はあるような気がする。人類の進化の過程と歴史の中で、見た目の良さが健康と経済力の指標だった時代はかなり長かったはずだから、著者が書いているように「進化の過程で役割を果たしてきた容姿という特徴は、あちこちの市場で、もう役に立たなくなっている。」(224ページ)としても、その名残はあるのだろう。2015年5月3日付け読売新聞書評欄。

  • 読めなかった…
    内容は覚悟?していたから笑
    別になんでもいいのですが、
    くどい。結局、何が言いたいのか分からない。
    よく「英語は結論が先」とか言うけど、
    こういう本については、
    全然日本の本のほうが分かりやすい、
    と思うんだけど。
    それが再確認できました笑

  • 面白いけど、個人的な感想は放っといてよってところ。ルッキズムに関心ある方はぜひ。

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