21世紀のキャリア論―想定外変化と専門性細分化深化の時代のキャリア (BEST SOLUTION)

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  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492533116

作品紹介・あらすじ

慶應義塾大学SFC研究所キャリア・リソース・ラボ&ワークス研究所共同研究「21世紀のキャリアを考える研究会」6000人規模のアンケート&100人以上の個別インタビューでわかった21世紀型キャリアの課題と解決策。

感想・レビュー・書評

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  • 本書の10年前に高橋さんが出版した「キャリア・ショック」の内容を、データと共に更に深掘りした印象。高橋さんの考えに既に共感している方なら、理解を更に深められて面白いと思う。

    踏み込んでいる分、論文のようなやや小難しく抽象的な内容になっているので、初めての方は先にキャリア・ショック等を読むといいかもしれない。

    内容は出版から10年経っているが、タイトルの通り21世紀(少なく見積もって2030年まで)の間は通用する内容だと思う。
    仕事観が変わるので、何かしらの仕事をしている方には広くおすすめしたい。

  • ・ワークス研究所大久保所長副座長で開催した研究会の成果(6,000人規模のアンケート、100人以上のインタビュー)をもとに整理。
     #専門性と普遍性という2大テーマを自分らしくどう組み合わせてキャリアを切り拓いていくかが重要。専門性深化は必要だが、想定外変化が起きても通用する普遍性の高い成長も必要
     #変化する経営環境、企業戦略と自身のやりがいなどの内因的なキャリア評価基準との接点を試行錯誤しながらどう見つけていくかがキャリア自律であり、この能力と習慣強化が重要!
      この時代に自分らしいキャリアを切り拓く個人とはどのような人なのかを考えなければならない。
      決して会社が代わって長期的プランを描き、計画的キャリア形成をする時代になったわけでない。
     #キャリア形成において中長期的な具体的なキャリア目標は(予測と管理の可能性が低いので)不要だが、スキルアップ目標は重要
     #10のキャリアコンピテンシー:①主体的ジョブデザイン行動(5つ)、②ネットワーキング行動(3つ)、③スキル開発行動 ←こうした習慣が環境変化の激しい時代には重要
     #そもそも「職種マッチング」以上に「発揮能力マッチング(発揮している能力が自分らしい能力なのか)」が重要 →顧客や提供価値を規定し、模索しながら取り組むことで発揮能力のマッチングを図っていく →「心の利き手」 ←15-18までの環境により固まるという学説(最近ではDNA説明説も) →いずれにせよ「自分に向いている仕事はなにか」ではなく「向いている能力発揮の仕方を探ること」が重要
     #想定外変化の時代はラーニングカーブがのこぎり型に
     #仕事観を大分類(3:内因的、功利的、規範的)、中分類(11)で整理(→P59)→若年期は明確でゆるぎないキャリア観醸成より、「仕事観」をしっかり確立することが「仕事キャリア満足」を高める
     #3つの重要実線事項:①人生とキャリアを継続的に切り拓くよい習慣と能力の獲得、②深い学びの習慣、③自分らしい幸せなキャリアに導く仕事観や働く意味の意識
     #キャリア教育の問題点:過剰な内省と「好きを仕事に」の表面的理解に走り、将来の職業から学習目標を導出する ←表面的、功利的なキャリア教育! →将来への漠然とした明るい展望や、自分は社会にでてもなんとかやっていけるという自信、とりあえず勉強を含めて今何かに努力する気になるといったことこそが重要 →幸せになれるかどうかは長期的視点で努力し続けられるかどうか、努力できるかどうかは自分の努力によって自分の人生を変えることができるという自己効力感をもてるかどうかにかかっている →自己効力感を高める手法 ①遂行行動の達成、②代理的行動、③言語的説得、④情動的喚起
     #想定外変化時代のキャリア発展では「弱い絆」が重要(チャンスは予想外の出会いから、予想外の出会いは弱い絆から)→もっと多様な人との開いた社会関係資本構築に導くキャリア教育の必要性
     #キャリアというのは、「動機」と発揮能力のマッチングによる自己効力感や、内因的仕事観の深化、規範的仕事観と提供価値の定義を通じて、自己を客観化し、自己を規制するという”習慣”の連鎖によって形成されているのではないか
     #キャリアも人生も「偶発性計画理論」の時代

  • 評価
     今コロナ禍だからこそ読むべきと思わせるポイントもあった。
     改めて、自分の考え方が間違っていないことや、繋がりを見いだせることがあると思った。動機の背景の意識や、日本人の価値観からみる仕事観など…
     一方で、語りたいことが多すぎる?のか、若干冗長というか、補足的な要素が多すぎたようにも思う。高橋先生のセミナーはいつも大変面白いです。

    感想
    ・この本で求めたのは、自分の会社におけるキャリア開発の考え方を変えたかったから。
    ・これに対する解は、自らの専門領域や役割、責任、価値を常に一つではなく、複線的に考え続けることを、会社における起点と終点にさせないこと。
    ・ここから考えたのは、動機は内的なもので自由はあるが、行動は変えられるもので仕事観として利己的に留まらずに利他であるように(顧客)しておくこと。
    支援の役割として、上司や先輩に限定しないこと。


    内容
    【キャリア自律】
    ・自分で自分のキャリアを考え、切り開くこと
    ・背景:現在のキャリア環境は、想定外変化と専門性の細分化によって、過去から大きく異なる。最大の課題は、この二つが同時発生することによる、「明日のわが身に起こるアイデンティティの喪失」である。
    ・従来の、この道一筋、この道を行けば右肩上がり、大きな価値観の変化。がすべて崩れ去った。

    1.目標より習慣
     キャリアの開発に携わる行動を、キャリアコンピタンシーと呼ぶ
     主体的ジョブデザイン、ネットワーキング、スキル開発の3点を行い、内的な仕事の満足度や継続的な開発をしている人は、動機というドライブを自分の中に持っている

    2.普遍性の高いまなび
     今後は、開発した能力が落ちる幅も速度も速くなるために、常に学び続けなければならない。そして、少しでも落ちないことを目指すためには普遍性の高い分野を学ぶとこが大切。

     理解型の人ー言われたことをすぐやるー正解を欲する
     納得型の人ーなぜやるのか?を考えてやるー答えを導く

     納得型の人は、関係のない話を結びつけることが得意、反対を考えたり、違いを考えることが習慣になっている。一方で、具体的な事例に落とし込めないで使うと、言葉が上滑りして評論家になる。また、過度な一般化や柔軟性を無くすと、歪んだ持論となり、新たな学習が進まない。

     納得型の能力は、適応とも考えられる。これを有するのは、原理原則の理解。

    3.明確な仕事観
     想定外のことが起ころうとも、なにをすべき、なすべきかを見極めて取り組むために、意味付けや位置付けを持つことが重要
     
    【企業内人材育成機能の弱体化】
    従来の世代継承型人材育成だけでは成り立たないにもかかわらず、OJTの基本は上意下達、仕事観はベテランほど外に向かない、若手は理解型が多く答えを求める。これにより、大企業のようなヒエラルキーの強い組織では、学習や変革が阻害されている。

    ITやコロナ禍の仕事やコミュニケーション
    の見えない化は、OJT(育成)の弱体化に拍車を掛ける
    可能性が高い。

    【キャリア自律の開発】
    生涯のプロフェッショナルとしての活躍
    自分自身で継続してプロフェッショナルへ進む
    何度も主体的に仕事観を作り替える
    自分の立ち位置を変え続ける
    提供価値を再定義し続ける
    →自分らしいキャリアを自分で作る。自分のためだけに働くのではなく、世の中の変化の中でも価値提供をし続ける、内的な成功と利他的な成功を併せ持つこと。

    ⭐️発揮能力と動機のマッチングが重要
    【内因的な仕事観】主体的な意思→動機→主体的行動→納得型の仕事→成果
    【規範的な仕事観】
    やるべき仕事→外因動機→規範的行動→理解型の仕事→成果

    両方とも必要だが、最終的には内因が持てないと、燃え尽きる。(モチベーション3.0の話と理解)

    【人材育成型のリーダーシップへの変革】
    1.リーダーの人間観
     一度ダメでも立ち上がれるように考えや行動を変容させること
    2.育成的なコミュニケーション
     教えるのではなく、教え合う場所や機会を作る
     そして、上位者は心理的な支援を行う(チャンスが来るぞ!と)
    3.職場全体のフィードバック
     褒める、叱る、教えるを含めて全員が話し合えること。(上司だけでは育てられないことを伝え固有名詞で部下を名指しして育成議論する場を持つ)
     
    4.一対一の主体性を引き出すコミュニケーション(考えを伝えて、引き出す)
     これをやれのタスクではなく、こう考えてやれのワットを伝えること。
     昔の育成は秘術を隠し伝えること。今の育成は、秘術を開き進化させる速度を早めること

    これらをリーダーに実践させるには、
    動機を知らせること(そもそも意識があるか)
    実践の仕方を伝達すること
    習慣化するまで支援すること(3〜6ヶ月)

    【無色透明な人事制度】
    さまざまな制約による不遇をなくすようになる。言い換えれば多様な働き方、生き方の受容。(転勤、介護、育児、出世、、、)

    精緻な等級による管理から、柔軟でソフトな考え方で、キャリア自律をベースとして、節目ごとに個人が気づきを得られ、次のキャリアへ踏み出す連続的な流れを作る。

    【仕事観へのコミットメント】
    目標による管理から、目的による管理へ
    報酬による動機づけから、内発的な動機へ

    【固有の人事】
    日本人が圧倒的に他国に対して持ち合わせているのは、感謝欲と徹底性。これにより、おもてなしやものづくりにひいでてきた。

  • [ 内容 ]
    慶應義塾大学SFC研究所キャリア・リソース・ラボ&ワークス研究所共同研究「21世紀のキャリアを考える研究会」6000人規模のアンケート&100人以上の個別インタビューでわかった21世紀型キャリアの課題と解決策。

    [ 目次 ]
    第1章 21世紀のキャリア環境とは
    第2章 21世紀のキャリア三つのポイント
    第3章 キャリア形成の実際と課題
    第4章 仕事観形成の歴史
    第5章 これからのキャリア教育と採用就職市場
    第6章 企業の人材マネジメントはどうなるのか
    第7章 社会人教育のこれからのあり方
    第8章 働く個人はどうすべきなのか
    第9章 人と組織のプロフェッショナルはどんな本を読むべきか

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 今後のキャリア開発について述べた本。現在の社会環境や現在の仕事観、採用や就職現場、現場での人材マネジメントなどを一つひとつ整理した上で、今後のキャリア開発についてわかりやすく書かれている。
    非常に納得するところも多く、新たな視点を提供してくれるところも多い。良著。

  • 環境の変化が激しく、外生的な要因で仕事の内容や条件が変わりやすい現代においてキャリアを構築していくための考え方が書かれており、参考になった。

    そもそも、キャリアというより「仕事観」としての自分の仕事の位置づけ、意義づけをすることが、非常に大切なのだということを感じた。

    また、自分の核となるテーマは自分で磨いていくこと、自分の仕事の進め方やテーマを通じて、自分の「ブランド・イメージ」をつくっていくことが、自分のキャリア形成にとって望ましい外的な環境を呼び寄せる(可能性を高める)ことに繋がるということも、大切なことだと感じた。

  • ■書名

    書名:21世紀のキャリア論―想定外変化と専門性細分化深化の時代のキャリア
    著者:高橋 俊介

    ■概要

    調査からわかった21世紀型キャリアの課題と解決策!
    21世紀のキャリア環境は、20世紀のそれとは大きく異なる。想定外
    変化によって予期せぬキャリアチェンジが生じ、一方で専門性の細
    分化深化という、2つが同時進行するからである。
    20世紀のキャリアデザインには有効であったOJTは弱体化し、一方
    でMBAによる学び直しも掛け声倒れの状況にある。このような新し
    いキャリア環境においては、企業・社会・教育機関。さらに個人は、
    自分で自分のキャリアを切り開く「キャリア自律」の考え方をベー
    スにスキルを磨かなければならない。
    そこで求められるのは、専門性と普遍性を自分らしく組み合わせて
    キャリアを切り開いていくことであり、可能性を「絞るキャリア教
    育」ではなく、「広げるキャリア教育」へと再構築することが求め
    られている。
    慶應義塾大学SFCキャリア・リソース・ラボ&リクルート・ワークス
    研究所の共同研究「21世紀のキャリアを考える研究会」が実施した、
    6000人規模のアンケート&100人以上の個別インタビューから浮かび
    上がった、21世紀型キャリアの課題と解決策を示した人事論の集大成。
    (From amazon)

    ■気になった点

    ・大体の方向性のみで、正しいと思う事をその都度やり続ける事。
     その方向性自体も状況によって柔軟に修正していく。

  • 以前読んだ高橋さん著の『キャリアショック』のアップデートver.といった感じ。
    アンケートをもとにしたデータから自らのキャリアに対する満足度と相関する要因を洗い出して考察している。

    自分の中で特に重要だと思ったのは以下3点。
    ◆仕事観の確立
    自分がにとって仕事が如何なる意味を持つのか、明確に言語化できるレベルまで深堀りする。
    ◆普遍性の高い学び
    その場で必要な知識やスキルを追求するのではなく、原理原則に立ち返ったキャリアの骨格となるようなものを身につける。具体的には一見繋がりの見えない様々なジャンルの知識の吸収。その知識を今やっていることに落とし込むように意識、実践。
    ◆ヨコのリーダーシップ
    これは今まさにやっていることに通じるかも。巻き込み。実践。

    すごく面白い内容だったが、抽象的な結論に行き着いている感は否めない。
    ここで学んだことを個人の行動レベルまで落とし込めるかどうかが勝負かも。

  • 高橋俊介氏の本を初めて読んだが、現実の状況に対する分析、いろいろな事例、各国の比較のためのアンケートなど、感傷ではなく論理で説明し、納得できる部分が多く勉強になった。ただし、著者のレビューを読むと今までも同じような内容が多いらしい。その点では、著者の本を多く読んでいる人は異なる評価になるかもしれない。

    全体の内容としては、今のキャリアは以前のバブル以前のキャリアに比べて、想定外変化が大きく、専門性の細分化深化が多方面にわたっているため、今までのような「道を究める」ような仕組みや働き方がキャリアの最後までは通じなくなっているとしている。

    そのために、仕事をしている期間の中で、再学習などの機会を設けたり、前後半のキャリアの違いなどを含めて、それらを作っていく必要を前半部分で説いている。

    また具体的には、「日本のキャリアの国際比較」などから、日本人が当たり前だと思っている仕組みが、世界基準では当たり前ではないこと、多くの場面で日本人の思考が強みにも、弱みにも生かされていることが多い。
    そのために、仕事観・キャリア教育や採用就職市場、企業の人材マネジメント・社会人教育などの人はどのようにすべきかをまとめている。

    巻末には、「日本の歴史を読み直す」「失敗の本質」「文明の生態史」「タテ社会の人間関係」「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」「自由からの逃走」などの名著の紹介もしてある。

    物質文明が飽和状態を迎えているのではないかという指摘は他書でも多くなってきたが、キャリアの観点からの分析という意味では読んで有意義だった。

  • TGLP

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著者プロフィール

高橋 俊介(タカハシ シュンスケ)
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科特任教授
1954年東京都生まれ。
2000年に慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授に就任。個人事務所による活動に加え、湘南藤沢キャンパスのキャリア・リソース・ラボを拠点とした個人主導のキャリア開発や組織の人材育成についての研究に従事。2011年より、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授。2022年4月より、現職である慶應義塾大学 SFC研究所上席所員。キャリア形成、人材マネジメント、リーダーシップ、働き方改革などに確かな知見を有し、本質を見抜く目に定評がある。
沖縄県那覇市にも事務所兼住居を持ち、1年のうち3割は沖縄で暮らしながら仕事をしている。
主な著書に『キャリアショック』『21世紀のキャリア論』(以上、東洋経済新報社)などがある。


「2022年 『キャリアをつくる独学力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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