CSV経営戦略―本業での高収益と、社会の課題を同時に解決する

著者 :
  • 東洋経済新報社
3.84
  • (7)
  • (21)
  • (8)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 214
感想 : 9
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492533697

作品紹介・あらすじ

CSV(共通価値の創造)とは、戦略論の泰斗マイケル・ポーター(ハーバード大学教授)が、2011年に提唱した新しい経営モデル。企業は、抜本的な社会課題を解決することで、経済価値を同時に増大できる。これは慈善や非営利の事業ではなく、本業としての経営戦略に組み込むことで初めて実現できる。CSVは、従来の戦略論を根本から見直す試みであり、世界的にも大きな影響を与え始めている。本書では、日本企業がCSVをいかに自社の経営戦略に取り込み、飛躍を遂げていくべきか。ポーター教授の下で学び、現在ビジネススクールで教鞭をとりながら、ファイストリテイリング、BCGをはじめとする企業のアドバイザーを務める著者が、ポーター教授の理論やCSRとの違い、豊富な内外の企業事例、そして、実践に至るまでを具体的に提案するものである。著者とポーター教授、グラミングループ総裁のムハマド・ユヌス博士との各対談も収録。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ー CSV経営を実現するためには、次の七つの点をクリアする必要がある。
    ①社会課題をどう捉えるか?
    ②大義はあるか?
    ③ 「ならでは」のひねりがあるか?
    ④儲けの仕組みにどう変換するか?
    ⑤誰をどう巻き込むか?
    ⑥ いかにスケールするか?
    ⑦いかに持続的成長を実現するか? ー

    何を問えば良いのか分かれば、あとは考えるだけなので参考になった。

    そこに志はあるか。
    そこに徳はあるか。
    これは、大企業になればなるほど大事な問いですね。
    「あなたは本気でそれをやりたいのか」
    という点も問い詰めたいですね。

    最後に、サルトルのアンガージュマンについて触れているのが良い。

    カントの定言命法とサルトルのアンガージュマンが私の行動原理ですので。なかなかうまくいきませんが…。

  • 日本橋図書館

  • CSVの本質とその補完すべきポイントを多くの事例と解説をもとに、歯切れよく軽快に論じており、とてもわかりやすかった。実践してこそ価値が生まれる書と感じる。

  • CSV本は色々とあるが、これは考え方や実例を通じた説明が理解しやすかった。利と社会意義の両立。
    読まなくてはいけない状態で読み始めたのが、思いのほか面白くて、CSVが単なる理想、絵餅、と思っていたところから、一歩前進。課してくれた人にとりあえず感謝。

  • ハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・ポーター教授が提唱するCSVについて解説した本。NECのフォーラムにおいて竹内弘高氏の講和を聞いて興味を持った。CSVは、Creating Shared Value(共通価値の戦略)の略であり、社会価値と経済価値の双方を追求することを強調する。利益のみを追求するのではなく、社会貢献することが大事というわけであるが、日本では逆に、社会貢献をより強く追求する企業があり、利益の上がらない生産性の低い企業が多いと指摘している。持続可能性を高めるためには、双方が重要であるという理論は理解できた。
    企業の取り組み例が数多く挙げられているが、参考になるものばかりではなく、やや冗長であった。
    「Creating Shared Value(共通価値の戦略)という論文の中で、ポーター教授は、社会的価値と経済的価値の双方を追求することこそ、次世代の資本主義のめざすべき姿だと論じている」piv
    「CSV経営とは、実は日本企業の伝統的な経営思想ときわめて近いもののようにも見える」pvii
    「NPOやNGOは誰かが創出した価値を正しく分配することはできても、価値そのものを生むことはできない。企業と両立するのはよいが、NPOやNGO一辺倒で分配するだけでは世の中からエネルギーが失われて、やがて社会主義と同じ末路をたどることになる」p10
    「利益を生み出す力のないNPOやNGOには、社会が直面する課題に力強く応えることも、それを持続することもできない」p12
    「日本企業は経済価値を創出する力が総じて弱いという批判は甘んじて受けざるを得ないであろう」p21
    「(松下幸之助)利益の追求が企業の最大命題ではなく、事業を通じて社会に貢献し、その報酬として与えられるのが利益である。利益を生み出せない経営は、社会に貢献していないことになる」p23
    「大きな社会課題には、大きな市場ニーズが眠っています。その鉱脈を掘り当てれば、大きな収益機会を生み出すことができます。健康のニーズ、栄養のニーズ、エネルギーのニーズ、経済開発のニーズ。これらは最も大きな課題でもあり、裏を返せば、最も大きなビジネスチャンスでもあるのです」p33
    「(ユニクロ)社員を、海外転勤があるG(グローバル)社員、国内転勤のみのN(ナショナル)社員、転居を伴う転勤のない勤務地限定のR(リージョナル)社員の三通りに分けることにした」p208
    「(ユニクロ年間テーマ2011)Change or Die」p212
    「私のCSVセッションに出てくる社員には「濃い」人が多い。知りたいことも言いたいことも山ほどある、という情熱と意欲に満ちた人たちだ」p214
    「(柳井)海外に進出すると、常に問われることがあります。あなたはどこから来ましたか。この国に対して、そして世界に対して、あなたはどんな良いことをしてくれますか。これらの質問に答えられなければ、グローバル展開はできません」p214
    「短期価値を重視する経営者はCSRやソーシャル・ビジネスはもちろん、CSVにもろ手を挙げて賛成することはできない」p215
    「利益をあげて拡大再生産し、事業を成長させるのが資本主義における企業の役割だと、柳井氏は考えている」p216
    「(良品計画の松井忠三会長)カリスマ型の経営者が目立つようでは組織としてはまだまだ未熟」p263
    「CSVの視点から日本企業の組織を見たとき、欧米企業と比べて決定的に弱いのは経営者のパワーだ。組織にCSVを埋め込むためには経営者のメッセージが欠かせない。何をもって社会に価値を生み、そして利益も追求するのか。社員に対して同じことを何度も繰り返し伝え続けるのは、経営者の重要な仕事の一つである」p297
    「入社式では新入社員を前に社会課題の解決にこそ事業機会があると話すが、残念ながら枕詞にしか聞こえない。それはおそらく、魂がこもっていないせいだろう」p298
    「会社の存続が危ぶまれるような状況であれば変わらざるを得ないので、放っておいても組織は変わる。しかし、そうした危機感は一過性のものにすぎず、喉元すぎれば熱さ忘れる、で少し良くなればすぐに緩みが生じる。良い状況の中で危機感を維持するのは簡単なことではない。飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を続けていても、そこに立ち止まればすぐに競合に追いつかれ、追い抜かれるのは時間の問題だ」p303
    「物まねが本家を超えて成功するケースはない」p318
    「専門分野を絞り込んでスペシャリストになるのもよいが、より豊かな人生を生きるのであれば、あらゆる分野の本を読み、人に会って話をして、貪欲に吸収してほしい。知的なたくましさは人生の宝になる」p343
    「どの会社に入るとか、何の職業を選ぶとかいったことは、些末な問題であることがわかる。それらは通過儀礼の一つにすぎず、その先には人生の長い旅が待ち受けている」p347

  • 社会課題を解決することで、新たな価値が創造され、経済的リターンがもたらされる――。マイケル・ポーターが唱える、新しい経営モデル「CSV」について解説する書籍。

    これまでの資本主義は、経済価値の創造のみを追求した結果、社会的な価値と乖離した利益至上主義を助長した。一方で、社会課題が膨らんでいく中で、NPOやNGOの活動だけでは、焼け石に水だ。社会課題を解くことによって新たな価値が創造され、それが経済的リターンを生む。そのような社会と経済の正の循環を作ることこそ、資本主義の本来の役割だとポーター教授は主張する。
    これからの資本主義が目指すべき姿として、ポーター教授が提示した経営戦略が、「Creating Shared Value:CSV(共通価値の創造)」である。
    CSVがこれまでのCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)と違うのは、CSRが本来の事業活動に付随して行うものであるのに対し、「経済価値」と「社会価値」を同時に追求して実現する点である。言い換えれば、「責任」から「戦略」への転換である。

    CSVを実現するカギは、次の3つである。
    ①気候変動や経済格差といった、社会問題の解決に役立つ次世代の製品・サービスを創造する。
    トヨタ自動車のハイブリッドカー「プリウス」などが代表例。
    ②バリューチェーン全体の生産性を改善し、効率化する。
    ユニリーバがインドの農村部の女性を販売員にして流通網や販売チャネルを確保すると同時に、彼女たちの自立支援を行っている「プロジェクト・シャクティ」は、その典型例
    ③事業を行う地域で、人材の育成、インフラ整備などを行い、地域に貢献するとともに強固な競争基盤を築く。
    地域における産学連携、地産地消などの活動が該当する。

    この3つは、ポーター教授がこれまで著作で述べてきたことを、CSVというフレームワークの中で整理し直したものだ。
    ①の製品・サービスは「ポジショニング」、②は「バリューチェーン」、③の地域生態系は「クラスター」というコンセプトである。

     
    CSV経営を実現するには、次の7要件をクリアする必要がある。
    ①自社が取り組むべき「社会課題」を正しく設定する。
    時には、顧客本人も気づいていないような本質的な欲求を捉えて、こうすればもっと幸せになる、より良い社会につながるという方向へ導くことを意識して、どこで社会価値を創出していくかを考えなければならない。
    実際に、正しい課題設定によって社会を変えた例もある。日本発の女性求人雑誌『とらばーゆ』(リクルート)がそれだ。
     
    ②自社が取り組む社会課題の「大義」を明らかにする。
    「なぜあなた方はそれをやるのか」と問われて、説得力のある答えが出ないような課題には、最初から手を出すべきではない。社会課題と大義が揃って初めて、社会にどんな価値を生み出していくのかというCSVの土台が固まる。

    ③自社の本質的な強み(DNA)を掘り下げて定義し直したり、純化させたり、広げたりするなど、「ひねり」を加える。
    志と大義があっても、それを実現する手段がなければ価値を生むことはできない。
    その手段が、よそにはまねのできない自社ならではの「ひねり」だ。何をひねるのかといえば、自社の本質的な強み、すなわちDNAである。DNAを掘り下げて定義し直す、純化させる、横にずらして広げるという一連の作業が、ひねりである。
    そして、このひねりを繰り返すことによって、DNAそのものも進化し続けることができる。

    ④自社の儲けの仕組みに合った経営モデルを取り入れる。
    「旬」な経営モデルを表層的に取り入れても、効果が出ないことが多い。それどころか、自社の本来の強みを見失うなど、逆効果になることも少なくない。経営モデルは、自社らしい儲けの仕組みに埋め込んで初めてパワーを発揮する。流行りの経営モデルに安易に乗ってはいけない。

    ⑤良いアイディアを形にするため、外部を巻き込む。
    全く新しいもの、自分とは異質なものと重ね合わせる「クロスカップリング(異結合)」がなければ、イノベーションの本質である「新結合」は起きない。
    ファーストリテイリングは、東レとのコラボレーションによって、ヒートテックなど数々のヒット商品を世に送り出した。これは、ファーストリテイリングの商品を企画して売り切る力と、東レの世界初の繊維を開発する力が新結合した結果だ。
     
    ⑥イノベーションを起こしたら、レバレッジ(梃子の原理)を利かせて、一気にスケールを拡大させる。
    その代表例が「プラットフォーム・モデル」だ。ひとたびプラットフォームを形成してしまえば、ネットワーク効果によって幾何級数的に拡大し、市場支配力を高めることができる。

    ⑦戦略に時間軸を取り入れ、持続的成長を実現させる。
    DNAや大義も、長い歴史の中では読み替えが必要になることもある。さらに7要件の④以降は、常に最適解を求め続けていかなければ、成長どころか生き残ることさえ危ぶまれる。
    では、どうやってそれを実現するかといえば、戦略論に求めても答えは出ない。
    競合でも市場でもなく、自分たちの中から湧き出る成長力こそが、CSV経営を実践するための唯一無二の力となる。

  • 経営戦略の新しいキーワード、CSVについての現状が網羅されているわかりやすい本。マイケル・ポーターの打ち立てた骨組みにさまざまな企業が肉付けしている現在進行形のドキュメントです。アメリカの市場原理の徹底した国の企業、ヨーロッパにルーツを持つ成熟した社会の企業、まさに社会問題が企業活動の至近距離にいる新興国でのケース、そして「論語と算盤」「三方よし」的な日本らしさをDNAとする我が国の企業、それぞれに違ったアプローチでCSVという言葉を咀嚼しながら模索しています。このキーワードが流行りのバズワードで終わるか、高度経済成長時代のTQCのように時代をつくる言葉になるのか?その一方で「物言う株主」もまたまた声を上げ始めているようです。「社会」と「会社」という関係は進化できるのでしょうか?それにしても最後の方で社会を変えるのはNPOではなく、企業である、と力強く訴えている著者の信念が印象的でした。

  • 答えがあるわけではなく、自分の会社と照らし合わせながら読むとよい。

  • ■書名

    書名:CSV経営戦略―本業での高収益と、社会の課題を同時に解決する
    著者:名和 高司

    ■概要

    CSV(共通価値の創造)とは、戦略論の泰斗マイケル・ポーターが、
    2011年に提唱した新しい経営モデル。企業は、抜本的な社会課題を
    解決することで、経済価値を同時に増大できる。これは慈善や非営
    利の事業ではなく本業としての経営戦略に組み込むことで初めて実
    現できる。CSVは、従来の戦略論を根本から見直す試みであり、世
    界的にも大きな影響を与え始めている。本書では、日本企業がCSV
    をいかに自社の経営戦略に取り込み、飛躍を遂げていくべきか、
    理論から企業事例、そして、実践に至るまでを具体的に提案するも
    のである。
    (From amazon)

    ■気になった点

    なし

全9件中 1 - 9件を表示

著者プロフィール

一橋大学ビジネス・スクール(国際企業戦略科)客員教授
東京大学法学部卒、ハーバード・ビジネス・スクール修士(ベーカースカラー授与)。三菱商事の機械(東京、ニューヨーク)に約10年間勤務。マッキンゼーのディレクターとして、約20年間、コンサルティングに従事。自動車・製造業分野におけるアジア地域ヘッド、ハイテク・通信分野における日本支社ヘッドを歴任。2010年一橋大学ビジネス・スクール(国際企業戦略科)教授、20年より現職。

「2021年 『稲盛と永守 京都発カリスマ経営の本質』 で使われていた紹介文から引用しています。」

名和高司の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×