にしきのなかの馬 (童心社の絵本)

  • 童心社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784494015467

感想・レビュー・書評

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  • こんなに美しい絵本もあるものなのか。
    お話そのものが、まるで「にしき」の中のお話のよう。
    主人公の「あや」という少女も馬も、「にしき」の中の世界の一部のようだ。
    まるで切り絵のように登場人物と馬を浮かび上がらせて、「夢のまた夢」というような
    効果を出している。
    広い背景、大きな空間。そこに配された幻想的な色合いは、何度眺めても飽きない。
    とりわけ「あや」の夢の場面では、見慣れたはずの「アカネ」の葉と茎が
    これ以上はないというほど美しい。
    終盤のツツジの群れ咲くページなどは、あまりの美しさに涙が出そうだ。

    これとよく似たお話を聞いたことがあると思ったら、遠野物語に登場する
    「オシラサマ」だった。
    東北地方の民間で信仰する、養蚕の神様の話だ。
    こちらは創作民話らしいがやはり舞台は東北で、馬と少女の悲恋物語(?)と
    いう共通点がある。
    東北の人たちの「馬」に込める思いを理解しておかないと、分かりにくいかも。
    「南部(特に盛岡あたり)馬」という存在もあるし、「馬」は暮らしを支える存在であり、
    長く馬を頼りにして生きてきたという歴史もあり。
    こういうお話が生まれるのも自然なことだろうな。

    少女と馬が心を通わせる場面。
    親に引き裂かれるところ。
    糸を染めてにしきを織り上げる、悲痛な営み。
    そして戦いに引き出される馬の悲しみ。
    切ない場面の連続でも、この幻想的な絵で救われる。

    さて、この世ではかなわぬ夢を、少女と馬はにしきの中で果たせたのか。
    親の辛い仕打ちや戦の悲しさを、ふたりの愛は乗り越えられたのか。
    しみじみと心に残るラストで、読後しばらく抱きしめたくなるような絵本。
    小さな子には残念ながら不向き。
    中学生か、あるいはそれ以上。思春期に出会ってもらいたい一冊。
    大人へのプレゼントにいいかも。
    それにしても、こんなにも美しい本があるとは。

    • 円軌道の外さん

      nejidonさん、おはようございます。
      お久しぶりです!
      沢山の花丸ポチと復活コメントありがとうございました!
      かなり古いマニア...

      nejidonさん、おはようございます。
      お久しぶりです!
      沢山の花丸ポチと復活コメントありがとうございました!
      かなり古いマニアックなレビューにまで目を通していただき、
      嬉しいやら恥ずかしいやらで恐縮しております(汗)(^^;)

      猛烈な暑さが続いてますが、
      お身体お変わりないですか?

      いやぁ~相変わらず端正な文章で読み応えあるレビュー!
      nejidonさんの
      目の前に映像が浮かんでくる
      的確な比喩を使ったレビューの素晴らしさに
      この絵本読んでみたくなりました。

      動物と人間の愛を描いた話で思い出すのは、
      ライオンと人間の夫婦の絆を描いた「野生のエルザ」や
      大島渚監督でチンパンジーと人間の女性の恋愛を描いた「マックス、モン・アムール」、
      少年とトラの友情を描いた「トゥーブラザーズ」なんかが思い浮かぶけど、
      動物と人間とのマジな恋愛に限るとかなり限られてきますよね。
      (僕が知らないだけかもだけど汗)

      ラノベやファンタジーでは
      よくあるテーマだけど、
      その場合は動物側が擬人化して
      ほぼ人間同士の恋愛になってるパターンがほとんどだし(笑)

      でも、相手が馬や犬だと
      人間との繋がりが深いだけに
      愛に発展することがあっても
      なんら不思議じゃない気もします。

      それにしても、もし地球上に馬が存在しなかったらって考えたらゾッとしませんか。
      民族の移動や農耕の発達や文化の形成や宗教の伝播など、
      どれをとってみても
      おそらく今ある形を成してなかったですよね。
      それだけに人間との繋がりは太古の昔から実に深い動物だし、
      固い絆や強固な信頼があれば
      恋愛感情が芽生えることも
      あり得なくはないのかな~って僕は思います(笑)

      それとは逆に
      馬は人間の心を読むといいますよね。
      信用に値しない人間にはなかなか心を開かないし、
      嫌いな人間が乗ることを頑なに拒んだりするし。
      深い絆を築くのは容易くはない
      手間のかかる動物でもあるらしいですね。

      またまた、とりとめないことダラダラと書いてしまいましたが(汗)、
      美しい絵本は大好物だし(笑)
      動物との絆の話に弱いので
      読みたい本リストに書いてまた探してみたいと思います!

      あと、僕の本棚の『ギルバートグレイプ』にも
      頂いたコメントの返事書いているので、
      お暇な時間にでも覗いて見てくれたらと思います。

      ではでは、これからも宜しくお願いします!
      夏バテなさらぬよう
      お身体御自愛くださいませ。

      2015/07/27
    • nejidonさん
      円軌道の外さん、こんにちは♪
      たくさんのお気に入りと温かいコメント、ありがとうございます。
      先ほどそちらにもお邪魔して、「ギルバード」の...
      円軌道の外さん、こんにちは♪
      たくさんのお気に入りと温かいコメント、ありがとうございます。
      先ほどそちらにもお邪魔して、「ギルバード」のお返事も読ませていただきました。
      ええと、そのお返事もお返事も(笑)、こちらにまとめさせていただきますね。

      いつもレビューを褒めてくださって、本当に恐縮です。
      文章を褒められたことなど一度もないので、もう赤面です、はい。でも嬉しいです・笑
      この本を気に入っていただけたようで、それも意外やら嬉しいやらです。
      比較的新しい本で、地元の図書館にはなく、他図書館からのお取り寄せでした。
      読んで気に入れば「お話会用に」と予定していましたが、難しそうです、
      結末が、小学生には不向きな気がします。美しいんですけどねぇ。
      悲恋物語ともとれますし、多少大きければ、民話として捉えられるかなと。
      ぜひそのあたりを、円軌道の外さんのご意見もお聞かせくださいね。
      何度も言いますが、本当に美しいです!

      そうそう「馬は人間の心を読む」らしいのですよね。
      だから私は馬の傍に寄りません(大笑い)。
      頭の中の色々な声が聞こえてしまったら困ります、ははは。

      【サイダー・ハウス・ルール】ですが、【Baduizm】のシンガーが登場しています!!
      97年に出たこのアルバムしか持っていないのですが、私のお気に入りなんです。
      ちょっと甘くて、ちょっとクールで、寝る前に聞くと心地よいのなんの。
      チョイ役どころか、主人公に生きる道を気づかせる重要な役どころです。
      【ブルースブラザース2000】にも魔女役で出てましたよね。
      見ればすぐ「あ!」と分かりますので、お楽しみに♪
      円軌道の外さんも、どうぞお体に気を付けてお元気でお過ごしください。
      激暑&猛暑の日々ですが、楽しい読書ライフをお送りくださいませ。


      2015/07/28
  • 絵も物語も美しい。
    読み聞かせにも向きそう。
    絵を見せるだけでも、いい反応が期待できるのでは。

  • 悲しい中に人馬間の愛情を感じさせる内容が、スーホの白い馬を思い出させるお話しでした。
    悲しい内容と絵が合ってる印象あります。
    別れた馬を布(にしき)を織って描き、その中の馬を見て息災を案じるあや。最後の結末が良かったです。

  • あやと三郎の、つよい想いが物語全体につまっていた。描写がきれい。

  • 美しい。図書館で借りたのだが返すのが惜しいと思った。いつか購入しよう。言葉と絵がとにかく好みだった。

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著者プロフィール

やえがしなおこ/大阪府生まれ。『雪の林』(ポプラ社)で第十五回椋鳩十児童文学賞、第二十三回新美南吉児童文学賞受賞。主な作品に『にしきのなかの馬』(童心社)『白い花びら』(岩崎書店)、紙芝居に『とりのおうさま』『コケコッコーのおんどり』『うさぎとかめ』(童心社)などがある。岩手県在住。

「2022年 『紙芝居 ききみみずきん 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

やえがしなおこの作品

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