こぎつねコンとこだぬきポン (フォア文庫 A 54)

著者 :
  • 童心社
4.20
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本棚登録 : 43
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (130ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784494026647

感想・レビュー・書評

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  • 感想移し替えました。内容はおんなじです。

    きつねが登場するお話を探していたら出会った本。対象年齢は小学校高学年くらいでしょうか。収録された3つのお話はどれも動物が主人公となっており、やさしい物語ばかり。版画のような挿絵のイラストがとても可愛いです。作品の根底には私たちが普遍的に持っている”相手と仲良くなりたい”という純粋な感情があるのでしょう。ほっこりしつつも、こういうまっすぐな気持ちをまっすぐな物語として伝えるってとても尊いことだよな、と感じ、目頭があつくなる場面が数回ありました。

    『こぎつねコンとこだぬきポン』
    きつねの家族とたぬきの家族が登場するお話。友達がほしいとおもってるこぎつねのコンとこだぬきのポンはある日、谷をはさんだとなり山どおしで歌を歌って遊びます。しかし親たちはむかしの因縁が原因で仲が悪く、金輪際となりの山のたぬきとは(きつねとは)付き合うなと子どもたちにきつく言いつけます。しかしそれでもなお子どもたちは遊ぶのをやめず、心配した親たちは相手に化かされないようにするため子どもたちに化け方を教えて……という流れ。きつねとたぬきの仲が悪いという、童話においてはあるあるな世界観のお話ですが、子どもたちの純粋な気持ちが大人にまで波及し、それまでの恨みつらみ、勘違いが氷解していくという展開には純粋に胸打たれます。
    「はしをかけましょう」って良い台詞だな。良い台詞と良い物語だった。

    『いのししイノコ』
    お婿さんがほしくなったイノシシのイノコさん。しかしシカのカノコように優雅に走ることもできなければ、猿のサルコのように器用に食べることもできず、キツネのキネコのようにフサフサの毛並みもありません。でも、そんなイノコのことをすきだというイノシシがあらわれて……。人はそれぞれ個性があって、誰かのようになろうとしなくてもあなたはあなたのままで十分美しいんだよと、そんなことを伝えようとしているお話です。でもさらなる展開として、イノコに出来ないことをまわりの動物が手伝ってくれて、イノコにしか出来ないことをまわりの動物にしてあげる、なんて場面があったらもっとうつくしかったな、なんて思いました。高望みですかね?

    『まめたとまめきちの話』
    人間の子どもたちにまざって一緒に遊びたいと思っているたぬきの兄弟が主人公。花いちもんめをしたがるふたりがかわいいです。最後にまめきちがしっぽを出して正体がばれてしまうのですが、そこで見せる子どもたちの反応がなんかすごく良い。このお話のハイライトは間違いなくここです。読んでて救われたような気分になりました。

  • きつねの登場する絵本を探していると、その中でたぬきと共演している作品を見かけることがあります
    でも、きつねとたぬきは基本は好敵手
    ばけくらべをしていたり、矜持のぶつかり合いをしていたりと、負けられない、引き下がれない相手同士なのが、きつねとたぬきなんだろうな…と思いつつ、きつねとたぬきが屈託なく仲良くしてる話ってあるのかなと、何とはなしに感じていました
    そして、この物語は、こぎつねのコンとこだぬきのポンが、どうしても仲良くなりたい、友だちになりたい! ってめちゃくちゃ頑張っちゃうお話なのです!
    挿絵はちょっと鳥獣戯画を連想させる、毛筆のタッチなのですが、きつねもたぬきも頭身がちっちゃめでかわいいです
    山奥の小さな集落、それこそ自分のうちの家族しか暮らしていない境遇だった、こぎつねのコンと、こだぬきのポンは、嵐の日に倒れた大木が渡し橋となって、それぞれの山が結ばれて一緒に遊ぶ友だちとなります

    しかし、きつねの一家でもたぬきの一家でも、先祖以来の旧怨により、相手は恐ろしく悪どい生き物なのだ! という偏見に凝り固まったままで
    「きつねと遊ぶなんてとんでもない!」
    「たぬきと遊ぶなんてゆるさないぞ!」
    と、お互いに会うのを禁じられてしまうのです
    でもコンとポンは一緒に遊ぶ友達が欲しいもの同士、手を取り合って、たくさん遊ぶ友達になっちゃいます
    しかしある日、お互いの姿に化けっこして遊んでいたら、親ごさんが迎えに来てしまって、コンはポンの姿でポンの家に、ポンはコンの姿でコンの家に、帰らないと行けなくなりました
    果たしてふたりの運命はいかに…?
    という、あくまでもほのぼのと可愛い話ですが、その中で懸命に頑張る、ポンとコンの優しさや強さ、そして一貫して鏡あわせのように展開される、きつねとたぬきの一家のお話に、きっと仲良くなれるよ、大丈夫だよ! と安心して読んでいていてもなお、その仲良くなれた後に交わされるそれぞれの親ごさんたちの言葉に、たいへん涙腺にきてしまう、傑作なのです
    細かい話ですが、コンはふんわりしたしっぽ、ポンはぽってりしたしっぽをしているそうです
    コンとポンがそれぞれのおうちで風邪をひかないように、親御さんたちがしっぽをそっと布団の中に入れてあげるシーンで、絶対仲良くなれるじゃ~ん! ってなりました!

    この書籍のフォア文庫は、一冊の絵本くらいのボリュームの作品が三編収録されている作品なので、他二作の感想も追記します

    『いのししイノコ』
    ある日、りっぱなおムコさんと結婚して可愛いうりんぼうをいっぱい産んで、素敵なお母さんになろう! と決意して、お婿探しをフゴフゴと頑張るいのししのイノコさんのお話です
    途中、ほっそりとした優美な脚の鹿のカノコさん、美しくしなやかな手の猿のサルコさん、毛並みが艶やかな狐のキネコさんと出会い、自分はほっそりした脚も、しなやかな手も、艶やかな毛並みも持ってない…と打ちひしがれてるところに、一頭のりっぱなオスいのししが現れたのでした…というお話ですが、女の子がお婿を探しに行くお話って、地味に珍しい気がします しかも猪女子です、わくわくします
    いのししのお婿さんはさすがの精悍な男前のビジュアルで、登場した瞬間にイケメンお婿さん来た! っていう説得力があるしイノコさんも明らかに一目惚れをしている絵で、そして彼のためにめっちゃ頑張って、無事に彼からの求婚を受けることが出来たのでした
    冒頭で決意した夢を、見事に叶えた結末の挿絵、とっても可愛いのです
    ところで、鹿のカノコさんが作画的にすごく麗しく、伏し目がちの睫毛が愛らしい鹿さんでしたが、猿のサルコさんは何というか普通の生き生きとした猿で、狐のキネコさんは挿絵がなかったので、なぜそこで挿絵格差があんのやと、そこは気になりました キネコさんも見たいですよ、こちらの記事はきつねの本シリーズですし

    『まめたとまめきちの話』
    前作二話は、あくまでも動物の世界の話ですが、なんとこの作品は、人間が登場する物語です
    そんなに化けるのが達者ではない、たぬきのきょうだいのまめたとまめきちは、ある日人間の子供たちが神社で遊んでいる姿を見て、人間に化けて一緒に遊びたいと思って化ける訓練を頑張る、という、人間…っ!…頼むから、まめたとまめきちと仲良くしてやって! とハラハラしてしまう始まりの物語なんです
    人間に化けるのはなかなか難しいようで、化けられるようになる前の初心者向けの化け姿も可愛かったですし、化け姿への人間の子供たちの感想も可愛かった
    まめたとまめきちは念願叶って子供たちと遊べたのですが…なんとうっかり、化け姿が解けてたぬきに戻ってしまいます
    その姿に人間の子供たちがかけた言葉が…言葉が…めっちゃいいんです

    という訳で、三作品とも素敵なお話でした
    フォア文庫の他の作品もさがしてみたいです

  • 動物の話なのに、人間味を感じるのはなぜだろう?

  • コンもポンもかわいらしい。

  • フォア文庫版

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著者プロフィール

1935年、愛媛県に生まれる。早稲田大学第一文学部国文科卒業後、コロンビア大学大学院で児童図書、および図書館学を学ぶ。絵本に、『ふしぎなたけのこ』『かさ』(以上福音館書店)、『こぎつねコンとこだぬきポン』(童心社)など多数。訳書に、『時の旅人』(アトリー作)、『思い出のマーニー』(ロビンソン作)(以上岩波書店)などがある。2011年永眠。

「2016年 『にわとり城』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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