先行開示事例から学び取る IFRS導入プロジェクトの実務

  • 中央経済社
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784502139116

感想・レビュー・書評

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  • IFRSの先行開示事例をもとにIFRSのポイントを解説。IFRSは「本表はシンプルに、注記を厚く」という特徴がある。IFRSの財務4表は日本基準のものよりもシンプルな様式になっているが、注記が膨大なことが豊富な開示事例によりよくわかった。初学者向けかな。
    P146
    「開示」の実務の観点からIFRSを見ると、IFRS適用は、経理部の決算業務をレポーティング業務からインテリジェンス業務へ移行することであるといえると思います。日本基準に基づく有価証券報告書を作成する場合、ひな型があらかじめ与えられ、ひな型に「当てはめる」実務を行なっている企業もありました。つまり、開示基礎資料を網羅的に作成せずとも有価証券報告書を作成することは可能でした。しかし、IFRSに基づく有価証券報告書の場合、ひな型に「当てはめる」実務では対応不可能であり、何を開示するのかというところから「考える」実務へ移行しなければなりません。
    P234
    ②ITシステムの更新あるいは入れ替えの必要性
    プロジェクトに参画していると、「IFRSを導入するにあたっては、ITシステムを更新するか、あるいは入れ替える必要がありまなね」という質問をよく受けます。
    結論からいうと、「その必要はない。少なくとも、 IFRS導入はシステムから考え始める話ではない」ということです。確かに、現状のITシステムではIFRSの処理に対応できず、システムの更新や入れ替えが必要なケースも出てくるでしょう。しかし、順序としては、まずIFRSの適用によりグループ全体としてどのような会計方針を適用するのかを明確にしたうえで、その会計方針を適用して処理を行なうことは現状のシステムで可能かという流れで考えるべきです。仮に、現状のシステムでは対応が難しいということであれば、そこではじめてシステムの更新や入れ替えを検討すればよいのです。
    例えば、IFRS適用により、収益の認識基準を従来の出荷基準から着荷基準に変更することになったとします。この場合、収益を認識するタイミングは、商品等を出荷した時点から相手先に商品等が到着した時点に変わります。つまり、従来は販売システム上で出荷日を管理しておけば収益認識においては特に問題は生じなかったのですが、IFRS適用後は新たに着荷日を販売システム上で入力管理することが求められます。その際、現在の販売システムでも日付の入力欄が複数あり、着荷日を入力管理したうえで収益認識できるように構築されているのであれば、IFRSが適用され収益の認識基準が変わったとしても、システムの更新や入れ替えを行なう必要はないでしょう。また、日付の入力欄の都合で出荷日しか管理できないような場合でも、従来どおり出荷基準により起票し、決算時において出荷日と着荷日の差に相当する金額を決算修正仕訳として取り込むことができれば、システムの更新や入れ替えは必要ありません。さらに、エクセルでIFRSへの組替修正を行なって組替表を作成すれば、IFRSに基づく財務諸表を作成することも可能であるため、固定資産システムや連結システムについても最初から更新や入れ替えを考える必要はないのです。
    このように、まずはIFRS適用後の会計方針への対応が現状のシステムで可能かどうかを試してみたうえで、どうしても不可能な部分のみシステムの更新や入れ替えを行なうということが、コスト負担の面からみても妥当な判断順序といえます。
    P260
    監査日程の見直し
    自社内で単体決算、連結決算、開示業務までを効率的に進めることができても、監査法人の監査日程が先送りされた状況では早期開示の達成は困難です。決算早期化にあたっては監査法人の協力のもと、監査日程について前倒しの方向で見直しを進める必要があります。もっとも、監査法人に監査日程の前倒しを依頼するためには、その日程でも監査法人が滞りなく監査を実施できるよう監査に必要な資料や情報についても前倒しで準備を進める必要があります
    私がある会社の決算早期化のコンサルティングを行なった際にも、経理担当者の方から「監査法人が他社の監査を優先して当社を後回しにするので、早期化が実現できなくて困っているんですよ」という相談を受けたことがあります。
    じっくり話を伺ったうえで私が話した回答は「それは監査法人ではなく、御社が原因ですよ」というものです。監査法人の担当者は限られた時間のなかで数社の監査を並行して実施しています。監査法人がその会社を後回しにしているのは、場所が遠いからでも嫌がらせでもありません。早く訪問しても監査に必要な資料が揃っていないので手待ちになってしまうからです。監査日程を早めてほしい場合には、早く監査が実施できるよう会社側も協力する必要があるのです。

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