日本企業の管理会計システム(体系現代会計学)

制作 : 廣本 敏郎  加登 豊  岡野 浩 
  • 中央経済社
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784502466007

作品紹介・あらすじ

日本企業の実践する「日本のものづくり」や「日本的経営」を支援してきた特徴ある管理会計システム。その歴史、各要素、研究方法論を論じる。

感想・レビュー・書評

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  • 後半は同テーマの発展のための研究者向けのため、前半のみ流し読み。

    日本的管理会計の特徴として本書に従って書けば、主なところは以下4点。
    ①影響システム
    伝統的(いわゆる欧米型)管理会計が組織のトップの判断のための情報提供(情報システム)として主に機能しているのに対し、日本の管理会計は影響システムと情報システムの両方として機能している。日本の特徴たる影響システムは現場担当者までが会計上の成果にアクセスでき、また成果を意識して自律的に行動するよう動機付けがなされている。ここでは自律的な行動と組織間の比較的あいまいな所掌、またそれを活かすためのジョブローテーションが鍵であり、現場担当者や現場管理職のすり合わせにより関係他部署と情報共有・フィードバックを活発にし、原価低減や品質向上に役立てている。たとえば、開発活動においても製造等の他部門が関与し、製造へ移管した際に問題の少ない等の改善に向けた意見が出る。

    ②戦略情報と会計情報のリンク
    前述の①と大きく関係する。トップが各現場のKPIを非会計的数値も含めて自由に設定し管理するのではなく、異なる組織が一様に同事業の利益に着目し、戦略策定上においても会計情報において方向性を共有する。

    ③原価企画
    定義は時代によって異なるようだが、新たな製品の企画に伴う原価管理活動全般(感覚的な言い方では「原価の作りこみ」)であり、特に部門横断的に行われる点が上位の職位で決まった条件に従って各部門が比較的別個に活動するいわゆる欧米スタイルと異なる。

    ④非財務的情報による管理
    現場の小規模単位の改善活動においては非会計的数値も併せて管理を行っている。ここでは実現可能性のある課題設定から達成未達の管理よりも、活動の継続自身に価値が置かれる。


    本書の中で、業績管理の方法論だけ整えても不十分であり、かつての日本企業の強みとして現場レベルまでを含む各人が自律的に動くことが述べられていた。これは正しいと思う。ただし、かつてのようにあいまいな組織間の分担、あいまいな方針のもので現場担当者や現場管理職のすり合わせを復活させようという掛け声を現在の多くの日本企業への処方箋とするのであれば甘い。非連続的なイノベーションのもとで、既存の製品の機能改善・品質向上・コスト削減であれば大方針がなくとも向かう方向性は比較的明らかであろうが、すでにかつての成功体験はそのままでは使えない。
    京セラのアメーバ組織についてはすでに読んだことがあったが住友電工のラインカンパニーの事例は面白かった(成果を根拠が薄くとも共通認識による計算のもとで金銭化する、また抜本的改善を促すために理想ベースを設定しそこからの乖離を説明させる、等)。

  • 336.9||Sa2||Ta=12

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