ブロードバンド・エコノミクス: 情報通信産業の新しい競争政策
- 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 (2007年3月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532133283
作品紹介・あらすじ
「IT後進国」日本がなぜ逆転出来たのか?世界最高水準のブロードバンド環境を実現した政策と克服すべき課題を、最新のデータを駆使して明らかにする、本邦初の本格的実証分析。
感想・レビュー・書評
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この本が出てから職業柄ずっと読まないといけないと思っていた本で、お盆の休みの機会に腰を落ち着けて読んでみました。過去から将来におけるブロードバンドの競争政策についての理論的基礎についての、学際的な立場からの公平な視点による分析が本書の内容です。
はっきり言って難解です。きちんと理解するには相当高いレベルの経済学と統計理論の知識が必要でしょう。ただ全てを理解できずとも、そこから導かれる結論については、きちんと押えるべき点がいくつもあります。親切にも各章ごとに結論がまとめられているので、その部分だけでも読む価値はあるように思います。
本書では今後のNGNやFMCの競争環境を占う上で興味深い数字もいくつか示されています。特に8章におけるADSLからFTTHへのNTT内でのロックイン効果分析(2,400円のプレミアムを乗せて評価)や、9章におけるNTTグループ内のFTTHから3Gへのロックイン効果(1,500円)や3GからFTTHへのロックイン効果(600円)の分析結果は、理論上の数字のこととは言え自分の想定以上でした。
他にも、思ったよりも緊急重要通信の確保にユーザが価値を置いていたり、テレビ電話はやはり価値が低かったり、といったことが数字として現れています。
完全に業界向けの本で、難解で、計量理論であるがゆえのモデル化の限界もあります(特に携帯分野の分析)。さらに著者もブロードバンドの経済は複雑系で予測できないと言い切っている部分もあります。それでも、その手の人には理論や計算の部分は飛ばしても理論武装のひとつとして読む価値ありではないでしょうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
杉並