日本経済のマクロ分析 低温経済のパズルを解く

  • 日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532134976

作品紹介・あらすじ

●日本経済を議論する上での基本書登場

 バブル崩壊、デフレ、少子・高齢化などの他の国に先駆けた重い課題、苦悩を背負ってきた日本経済は1990年代以降模索を継続しています。様々な政策も実行してきましたが、低成長・低体温から脱却できてはいないのは何故なのでしょうか。このパズルを解くことが必要です。
 本書は、この30年で日本経済のメカニズムがどのように変わり、新しいパターンが生み出されているのかを解明するもの。(マクロ)経済学の発展・最新成果・オリジナルな研究を十分取り入れ、これまでの経済学の理論・実証分析の蓄積を活用し、日本の状況に合った「テーラーメイド」の経済学を意識し、日本のマクロ経済の変化と現状の鳥瞰図を示し、包括的に論じます。
 本書の基本アプローチは、経済白書など公開データを活用しながら、理論、歴史(1980年代~)、国際比較の三位一体で日本経済の変質を明らかにするもの。
 また本書では、最先端のマクロ経済学を柔軟に活用する。具体的には、各経済主体の行動様式を解明しながら(ミクロ的基礎重視)、それらの主体が相互連関しながら経済全体としてどう動くか(一般均衡視点重視)を考えていきます。マクロ的視点、ミクロ的視点を自在に行き来しながら様々な主体、要因などの連関を考える。
 政策提言については、エビデンスに基づいた政策が強調され、エコノミストや経済学者が政策決定プロセスにより関わるようになったにもかかわらず、むしろ、現実にはエビデンスから離れた政策が行われるようになってきているという問題意識で臨みます。平成のマクロ経済政策をそうした視点から批判的に検討し、警告を発します。
 日本経済をデータから正面からとらえた本書は、これからの日本経済を語る上での基本書となります。

感想・レビュー・書評

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  • マクロ経済学と日本経済 日本評論社
    入門マクロ経済学 中谷巌

    60年代ケインズ経済学、
    70年代マネタリストからの批判、
    70年代後半から80年代初頭 合理的期待形成学派(新しい古典派)、
    80年代実物的景気循環理論、ニューケインジアンとの対立、
    90年代後半~新しい新古典派総合=DSGE

    ニューケインジアンの価格硬直性=メニューコストの存在、総需要外部性を仮定すると、価格粘着性が発生する、価格設定時期のずれによるもの、協調の失敗=ゲーム理論の囚人のジレンマと同じで、価格を下げないナッシュ均衡が生じる。

    DSGEとは、通時的な最適化、合理的期待形成、市場の不完全、価格調整コストを組み入れたモデル。2008年も大不況を予測できなかった。

    労働投入指数=労働時間だけでなく労働の質も考慮したもの、経済の伸びは全生産性の伸びと労働投入指数の伸びと資本の伸びによる。
    近年は、無形資産による影響が注目されている。ノウハウ、ソフトウエア、情報化資産など。

    景気の累積的メカニズム(=外部性の存在のため)が弱まっている。

    フィリップス曲線のフラット化=インフレ率が上がっても失業率は改善しない、または、失業率が下がってもインフレにならない。
    景気拡大でも物価が上がらない=価格粘着性の要因=暗黙の契約、協調の失敗など。価格据え置きがデフォルトになっている。わずかな値上げでも消費者の抵抗が高い。
    オンラインのインフレ率は、消費者物価指数より上昇率が1%程度低い。
    家計調査によると若年層の貯蓄率が上昇=将来への不安、不確実性増大に対する予備的動機

    高齢者は増税+社会保障増大を望んでいる。
    若年層は、社会保障縮小+増税なしを望んでいる。

    テイラールール=政策金利を契機と物価上昇率から日びく。
    中央銀行がコントロールできるのは短期金利のみ。YCCは、長期金利もターゲットとする政策。フォワードガイダンスにより間接的に影響を与える。

    マイナス金利の長期化は、金融機関の収益構造を圧迫する。家計や企業から債務者への所得移転、財政規律が脆弱化する恐れ、

    低成長低温経済の自己実現には、何が必要か。
    FTPL(物価水準に関する財政理論)とMMT(現代貨幣理論)
    FTPL=消費者にフリーライドを奨励し、将来の増税をコミットしないことで、デフレから脱却できる。
    債務残高比率の上昇に歯止めがかかるためには、PB黒字GDP比率は、金利成長率格差に債務残高GDP比率をかけたものに等しい以上が必要。
    財務残高GDP比率が200%で、名目金利3%、名目成長率2%であれば、目標となるPB黒字GDP 比率は2%が必要。

    事業統合は規模拡大によるTFPの上昇効果は、大企業の海外進出による退出効果と、中小企業でTFPが伸びない内部効果により、相殺されている。

    低温経済からの脱却には、雇用システム労働市場の改革と企業の価格戦略が必要。
    賃金の後払いシステムが労働移動を妨げている。

  • 週刊ダイヤモンド ベスト経済書2020 6位
    エコノミストが選ぶ経済図書ベスト10 2019 7位
    と定評のある本だがそれ以上の価値では
    一読では理解できないところもあり要再読ではあるけれど
    経済学を少し学んでいれば専門家でもなく分かる記述で日本経済の今を解き明かしてくれる
    ○○が悪い、XXヤメロ
    なんてレッテル貼りに辟易するものの専門書は理解できないという方にはうってつけだと思う

  • 教科書と並行して副読本的に読んだ。成長会計の簡単な解説もあったりしてわかりやすくてよかった

  • 楽しい本かと言われたらそんなことはないけれど、分析は丁寧だと思う。
    アベノミクスへの言及もあったような。

  • 日本経済の長期低迷を実証的に分析したもの。
    これまでも様々な対策が打たれてきたのに好循環を生み出せない。そんな日本経済を「低温経済のパズル」と名付けているのは、言い得て妙だ。
    本書に掲載された図表を見るだけでも、バブル崩壊、金融危機、リーマンショックの各段階で屈折したきたことがよくわかる。今回のコロナ危機後も、さらなる罠に絡め取られそうだ。
    最終章の今後の提言は、ありきたりのものでしか無いがやむを得ないか。

  • デービットアトキンソンが新生産性立国論などで語っていた
    ①IT技術を使えていない生産性の低さ
    ②小、零細企業が多いことによる企業としての規模の小ささ(≒設備投資の余力のなさ)
    ③ ①+②によって、利益確保するために従業員への給与を削減することで対応
    ④ ①+②+③によって、日本のGDP低下

    自分で日本の経済情報をここまで調べて、且つ、グラフ化するのは容易ではないですね。そういう意味でも、日本経済で何が起こっていたのかを理解できる1冊でした。

    で、結局、ここまでなんですよね。
    本書でも日本経済再生に向けた提案をいくつか出されてますが、どれも既視感ある内容で且つ、効果が乏しく感じました。この辺は、追われる国の経済学を読むとLTPなどで補完できそうに思います。
    本書の中でもMMTと関連した積極的な財政出動の話が一部出ましたが、やはり『どこまで赤字財政を行って大丈夫なのか?』の、定量的な見解がないとありました。

    低温経済の日本を立て直すのは、相当ハードル高そうです

  • 財政白書が、時々の政策PRツールとしての色合いばかり強めて、なにかバランスの悪いものになっている気配ありありなのに対して、本書は、平成の日本経済の停滞についての素直な疑問に正面から向き合って、論点のそれぞれにデータと理論の手がかりを挙げて見せてくれている。
    筆頭著者の鶴 光太郎氏というのは、その昔、『大学への数学』編集スタッフ?として巻頭エッセーなども書いていた(T氏)なのかな?

  • 東2法経図・6F開架:332.107A/Ts84n//K

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著者プロフィール

慶應義塾大学大学院商学研究科教授
東京大学理学部数学科卒業、オックスフォード大学経済学博士号( D.Phil.)取得。経済企画庁入庁、OECD 経済局エコノミスト、日本銀行金融研究所研究員、経済産業研究所上席研究員を経て、現職。安倍政権の下で内閣府規制改革会議委員(雇用ワーキンググループ座長)(2013~ 16 年)を務め、雇用改革の切り札として「ジョブ型雇用」の普及を掲げた。

「2023年 『日本の会社のための人事の経済学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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