- Amazon.co.jp ・本 (498ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532146702
作品紹介・あらすじ
リスクの謎に挑み、未来を変えようとした天才たちの驚くべきドラマ。
感想・レビュー・書評
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端的にいって、第一感は、確率、統計を含めた、数学史です。
リスクの許容、リスクの管理は、危険度をリスクとして、計量化、数値化するための方法論です
占い、賭博が、リスクの出発点、偶然の運、不運が支配するゲームのようだ。
インドへの侵攻にて、アラビア人が手に入れたのは、インドの数学体系だった。それはやがて、西欧に伝わった
リスク管理については、数学とともに、経済学とも結びつき、やがて、デリアティブへと反映されていく
気になったのは、以下です。
・インド人が発見した”0”は、十進法を生み出し、アラビア数字という画期とした表現法を生み出した
・フィボナッチ 「リベル・アバッキ」、フェボナッチ数⇒黄金分割、等角らせん
・アル・フワーリズミ 「アル・ジャーブルとアル・ムカーブラの算法書」、「移項と約分の科学」、代数学
・パチョーリ 「算術、幾何および比例大全」 代数学、確実性の科学
・ジロラモ・カルダーノ 「わが人生の書」、「アルス・マグナ」 2次方程式、3次方程式の一般解、複素数=負の平方根の定義、確率論
・パスカル パスカルの三角形⇒(a+b)n乗の展開⇒正規分布(ベルカーブ)への拡張
・ジョン・グラント サンプリングの統計的手法 確率論の概念の把握
・ダニエル・ベルヌーイ 確率統計に特化した数学者、期待値、ペテルスブルクの逆説
・ヤコブ・ベルヌーイ 推測法、標本データの確率的処理、大数の法則、実測値と理論値の差異と評価⇒乖離を事実上の確実性という表現に
・ド・モアブル 正規分布、ベルカーブ
・トマス・ベイズ ベイズの推定、分析
・カール・フリードリッヒ・ガウス 確率の解析的理論 結果のみを発表してその過程は発表されなかった、⇒50年は数学の発展が遅れた
正規分布⇒リスクマネジメントの中核をなす⇒保険ビジネス等、⇒ただし正規分布になっている場合
・フランシス・ゴールトン 測定できるものなら、なんでも測定しろ
・ランベール・アドルフ・ジャック・ケトレー サンプルを集めまくって、正規分布をしているかを確認しまくった
平均への回帰 原則に最も忠実なのは、株式市場である。
平均への回帰の原則は、いつまでも持続しないことを意味している。もしも、勝者が勝ち続け、敗者が負け続けるとすると、われわれの経済は少数化していく、一握りの巨大独占企業のみで構成され、中小企業は全く存在しなくなってしまう。
・ケネス・アロー リスク管理概念の父
・リスク管理に対する需要は、リスクの数が増えるにつれて増大してきている。
・フランク・ナイト リスクと不確実性の区別の上に立脚 数学的確率と経営環境とを別に検討
・ジョン・メイナード・ケインズ 確率論、一般理論 経済学における不確実性問題の根底には、経済プロセス自身が持つ未来志向の性質がある
・ジョン・フォン・ノイマン ゲーム理論 ナッシュの均衡
証券に投資する場合のリスク測定法
ポートフォリオ、資本資産評価モデル ⇒正規分布していないと、不確実性を100%反映できない。現実世界には、完全無欠なものなどない
われわれが直面する本質的困難は標本抽出にある
⇒標本が、大規模なのか、それとも小規模なのか観察だけから一般化を引き出すのは困難である
投資家はリスクを許容しても、時としても報われないことがある
曖昧性の回避 実生活で確率計算を適用できるのは、偶然のゲームでのパターンを十分模倣できるほど、頻繁に類似の経験が生起する場合のみである
デリバティブ:派生商品とは、先物と、オプションの組み合わせである。オプションとは決められた価格で片方に買う機会を与え、もう一歩に売る機会を与えるのことである
オプションの価値をどう計測するか ①オプションが行使されるまでの時間、②現物の商品とのスプレッド、③その商品が行使されるまでの利子、および配当収入など
企業は流動的かつ活発なオプションを選択できる。ハイリスク、ハイリターン。
基本的には、定型的なオプションと、先物の組み合わせにすぎない
目次
日本語版に寄せて
謝辞
はじめに
1200年以前 始まり
第1章 ギリシャの風とサイコロの役割
第2章 Ⅰ、Ⅱ、Ⅲと同じくらい簡単
1200~1700年 数々の注目すべき事実
第3章 ルネッサンスの賭博師
第4章 フレンチ・コネクション
第5章 驚くべき人物の驚くべき考え
1700~1900年 限りなき計測
第6章 人間の本質についての考察
第7章 事実上の確実性を求めて
第8章 非合理の超法則
第9章 壊れた脳を持つ男
第10章 サヤエンドウと危険
第11章 至福の構造
1900~1960年 曖昧性の塊りと正確性の追求
第12章 無知についての尺度
第13章 根本的に異なる概念
第14章 カロリー以外はすべて計測した男
第15章 とある株式仲買人の不思議なケース
未来へ、不確実性の探究
第16章 不変性の失敗
第17章 理論自警団
第18章 別の賭けの素晴らしい仕組み
第19章 野性の待ち伏せ
訳者あとがき
注
参考文献
人名索引
事項索引
ISBN:9784532146702
出版社:日経BPM(日本経済新聞出版本部)
判型:B6
ページ数:498ページ
定価:2200円(本体)
発売日:1998年08月24日1版1刷
発売日:1998年08月01日2刷詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
表紙を見ると面白そうだけれど、読んでみるとあまり面白くなかった。
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不確実性―リスクへの挑戦をした天才たちの話について書いてある本
目次
<blockquote>
1200年以前 始まり(ギリシャの風とサイコロの役割
1、2、3と同じくらい簡単)
1200~1700年 数々の注目すべき事実(ルネッサンスの賭博師
フレンチ・コネクション
驚くべき人物の驚くべき考え)
1700~1900年 限りなき計測(人間の本質についての考察
事実上の確実性を求めて
非合理の超法則 ほか)
1900~1960年 曖昧性の塊りと正確性の追求(無知についての尺度
根本的に異なる概念 ほか)
未来へ 不確実性の探求(不変性の失敗
理論自警団 ほか)</blockquote>
最初ははっきりしない不確実なものに対し、どうすれば計れるのかについて考えていた。
確率はその中で生まれてきた。
<blockquote>確率はこの二つの意味を常に含んでいる。一つは将来を見通すということであり、他方は過去を解釈するということである。すなわち、一つはわれわれ自身の考え方に関わるものであり、他方はわれわれが実際に知っている現実に関わっている。この違いは本書を通じて繰り返し登場する。</blockquote>
数学的、統計的な色彩の強い本だが、数字的なものはあまり出ない。むしろ理論ベースで話が進んでいく。また、哲学的、心理学的にも関わりがある。
それは不確実性のなかで、人間はどうその不確実さに規則を見出すか、そして、その不確実さの原因は何なのか、予測をどのようにうまくつけていくのか、ということにあるからなのかもしれない。
自分に原因があるのか、情報が多いのか足りないのか、それとも未知のパターンがあるからなのか。
この本では、最終的に答えは導かれないが、現代のリスクヘッジマネジメントの源流から、その技術の進化を追っている。
パチョーリのバッラゲーム、パスカルの三角形、そして統計。
数学的に仮定された問題の中で解を出し、それを現実に当てはめていく。
こちらは後に大数の法則が生まれ、標準偏差・正規分布が登場し、事前確率/事後確率が生まれた。
これは不確実性をどれだけ理論化できるのか、計測できるのかに向けられた。
統計はさらに遺伝の問題から、相関という考えも生み出した。
相関は二つの数字系列がお互いにどれほど近似した変動を示すかの尺度である。
計る時代が終わると、不確実性が問題になった。それに対して人間性の曖昧さが問題になると、そのときにコンピュータが登場した。株式市場のランダムウォークもその考察の対象になった。
ゲーム理論、分散ポートフォリオ、デリバティブ、そしてカオス理論。
未だにすべてを理解できたわけではないが、不確実性の根っこには人間の曖昧な判断があるし、そのさらに奥には、心理的な動きが関わっている。それゆえに選択には常に不確実性が伴う。
一方でその不確実性をヘッジする為、分散し、リターンを減らす代わりにリスクも減らすデリバティブが利用された。保険もそれに似たようなものといえる。
ゲーム理論、カオス理論はすこし理解していない。ただ、その試みが未だに次に近づこうとしていることだけはわかる。
もっとも、ここまでくると金融工学の世界に入ってくるのだけど。
ストーリーは洗練されており、内容としては難しい部類なのに読めてしまった。
そういう意味で、読める本にはなるとおもう。 -
90円購入2012-01-14
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確率統計・リスクに関する人物たちの歴史を振り返って、どのような課程からこれらの理論が発展してきたかを綴った本。
今までそれらの人物の人柄などあまり考える由もなかったが、本書によりその意外な人間性が明らかになり大変興味深く読めた。
リスクの測定手法は日々ブラッシュアップされ進化してきているが、本書の最後に方にあるように、確率はあくまで手引きであって依存するものではないという記載は、昨今の金融事情を振り返ってみても身にしみるものだった。 -
人がいかにリスクと対峙してきたかを
確率、統計学などを通して描かれる人類史。
それぞれの時代の天才達が未来の不確実性をどう計量するか、
その方法、考え方を編み出していく変遷が読んでいて面白かった。
タイトルに副題として、『神々への反逆』とついている。
リスクとは人間の手中に収められるものではなくとも、それを追究して、
理性的な行動をとることが最善だということは否定できない。
この著書が出てからしばらくして、リーマンショックが起き、
金融工学はそれこそ『神』に大敗を喫したわけだが、
それでも人間のリスク管理の歴史は終わらないのだろう。 -
b sep16,12
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こんなに知的興奮を覚えた本は久しぶりかもしれない。
表紙から受ける印象から小説かと思われるかもしれないが、中身は硬派な統計の歴史書と言っていいだろう。
この表紙の絵も内容と大いに関係があり、リスク・マネジメントの例として本文中で挙げられている。
また、タイトルから危険学関係の本かとも想像するが、統計学寄りのリスク鑑定の内容である。
確率や統計を計算するためには数学の発達がなければ起こりえず、序盤は数学の歴史から始まる。
そこから確率や統計へと話は進んでいき、現代に至ると最近の流行りであるゲーム理論や行動経済学へと移っていく。
最も関心を持ったのは中盤あたりのゴールトンの遺伝の観測による平均への回帰。
学校で必ず習うダーウィンやメンデルの遺伝の法則だけでなくこのようなものがあったことなど今までしる機会もなかった。
その後の1900~1960年の箇所はケインズを中心に理解が難しい。
しかしそこを抜けると現代でお馴染みの理論になっていく。
そして最後はデリバティブ。オプション取引について自身も完全に理解しているわけではないのだが、他の解説とは見方が違うため、今まで全く理解できなかったという人にももしかしたら道筋を与えるかもしれない。
オプションは保険とよく似た性質を有しているという記述はかなり新鮮だった。
こうして長い歴史の中で人間はリスクをとりたがる性質があるということがわかっていても、未だに確実な損失よりはリスクを選んでしまっている。
やはり圧倒的に面白いのは前半部分で、誰がどのように理論を発展させてきたのかということがよく分かり、現代の我々が馴染んでいる理論がどう出来上がってきたのかということが学べる名著であると感じる。
ローマ数字からアラビア数字とゼロの導入で計算の技術が格段に向上したという記述のところでは、ページ数の表記もローマ数字になっていてとても凝っている。
現代の統計学に関心がある人にはぜひお勧めであり、また数学が好きな人にとっても面白い本であると思われる。 -
読みごたえのある面白い本だった。
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等号の「=」が何故この形かと言ったら、1562に「一組の平行線以上に等しいものはないのだから」とあるらしい
納得!
ギャンブルなどの確率論はいつから出てきたか、数学の記号や理論は、というものから、株の危険性、リスクをどう回避しようかという流れが出てくるまで
結局、ほとんどのものは平均に回帰するので、儲け続けるということはありえないし、そうでないなら、そのものの「平均」というライン自体が変動しているので、もっと読めない。という話だった。
卵はひとつのカゴに持ってはいけない。
素人は手出ししちゃいけない。
利益を得るよりも、人は損失を気にするいきものだ。
そんなとこだろうか。