自己組織化と進化の論理: 宇宙を貫く複雑系の法則

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (549ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532147693

作品紹介・あらすじ

21世紀をひらく知の羅針盤!自己組織化の理論は、ダーウィンの自然淘汰説を超えた生物進化の秘密を明らかにし、技術の進化、経済理論、民主主義体制の合理的説明さえも可能にする。

感想・レビュー・書評

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  • ダーウィニズム的な突然変異と自然淘汰だけが、本当に生命の進化の要因なのか。もしそうであるとすると、私たちが存在するというのは本当に奇跡的な偶然の産物なのではないか。(その場合、地球以外には生命、特に知的生命は存在しえないだろう)なにか、生命が生じるべくして生じる、進化は進化すべくして進化する、なんらかの法則があるのではないか。

    これは、私の長年の素朴な疑問で、この疑問に正面から挑んでいるのが、スチュアート・カウフマンです。カウフマンは、複雑系の主要概念である自己組織化をベースに、なぜ、生命が生じたのか、なぜ単細胞生物があつまって一つの生命になったのか、そして生物はどうして進化するのか、さらには技術や社会の変化・進化について、説明する。

    さて、その説明の説得力だけど、さまざまな事象が自己組織化という考えで説明できそうである事はよくわかるけど、その肝心の自己組織化を具体的なイメージで理解するにはいたらない。それはおそらくコンピュータシミュレーションが方法論の中心になっていて、そのシミュレーションの設計思想が今ひとつ専門的で難しいのと、それが現実とどうつながっているのか、今ひとつ分からない。

    要するにまだまだ発展途上の方法論ということで、「これが生命進化の真実だ!」というより、「こういう考え方、アプローチが有望性がある」という段階ということかな。

    ということで、進化論に対する最終回答みたいなのを期待して読むと「なんじゃこれ」なんだけど、まだまだ中間報告段階の本だと最初から割り切って読めば、さまざまな発見に出会えると思う。ネットワーク理論とかに詳しくない私には相当に理解できない部分も多いけどね。

  • 著書には、『自己組織化』の基本原理により,進化のビックバンや生命の必然性が説明しています。さらには,生物の進化や生命体の営みのみならず,さまざまな技術が競い合うことで技術が進化すること,また社会のルールとしての民主主義体制の合理的説明さえも自己組織化の理論で裏づけることができるとも記されています。
    推薦者:『人事課』

  • 1999年刊行。著者は米国サンタフェ研究所客員教授。

     非生命から生命がどのように発生したかというのは現在も定説はない。
     この点について、生命を組織化された秩序体とみて、いわゆる複雑系、自己組織化の理論の範疇に属するとしたのが本書である。
     こう解すことができれば、自己組織化、つまり無から有が生じる説明概念を獲得できるわけだ。
     しかも、後の生命進化、細胞の形成や多細胞生物の発生も自己組織化の延長線上で理解しようとする。


     なかなか興味深い仮説であるが、化学的組成の部分を超えて、つまり生命誕生の領域を超えた問題は妥当するか?
     例えば、分子進化(つまり遺伝子組換え)のほぼ中立性仮説と、自己組織化理論との整合性(素人の妄言だが、個人的には親近性があると思えるが)など、生命進化の議論との整合性は知りたいところである。

  • 大学院に進学して、複雑系を勉強するきっかけとなった本

  •  生命の意義や意識の成り立ちについて、既存の科学はほとんど通用していないように思う。個々の化学反応やメカニズムについて詳しく述べることはできても、「なぜ」そうなっているのか、「どうして」そういう事が現実に起きるのか、という点についてはほとんど答えられない。

     現実にあるがままのものを、あるがままに記述するだけで、つまりただ難しい言葉に言い換えているに過ぎない。「太陽が燃える」と言うのと「水素が核融合を起こしている」と言うのと、本質的にはあまり違いがない。

     本書で取り上げられている「複雑系」は、そんな既存の科学で語れなかったことについて迫ろうという野心を抱いている。

     なぜ生命が生まれたのか。なぜ人間や意識が生まれ、文明や社会が生まれたのか。広大な宇宙を見渡していると、それはまったく有り得ない事のように思える。ものすごい偶然の積み重ねで私たちは生きているように見える。

     しかし、本書はそんな素朴な感覚を否定する。この宇宙で生命が生まれた事は必然だ、と。

     宇宙や生命や意識や社会、まとめて言えば《システム》は、ちょうど良い混沌さを保つことで成り立っている。あまりにもカオス過ぎると物体はバラバラに飛び散り、組織だったところを見せない。あまりにも秩序が強いと、今度は逆に凍り付いて動かない。カオスと秩序が同居するからこそ、システムは整然としながら変化していくことができる。そうして、星々はめぐり、生命は生き動き続け、意識は働き、社会は回っていく。

     ある一定以上の複雑さを持つシステムには、カオスと秩序がちょうどよく混ざった「カオスの縁」へと向かっていく性質があるのではないか? つまり、自らを自発的に進化させるメカニズムがあるのではないか? というのが、本書の主張であり、その性質を探るのが「複雑系」なのだ。

     もし、システムが自発的に進化する、という主張が正しければ、宇宙に星々があるのは必然であり、その星の上で生命が生まれるのは必然であり、生命が複雑化して意識が生じるのは必然であり、その意識が社会や芸術を作り出すのもまた必然である、ということになる。宇宙から社会に至るまでのあらゆるシステムで、自発的な進化は起こるのだ。

     これは物凄くスケールの大きい主張で、それゆえ科学的な検証が非常に難しいかもしれない。それでも、本書が挙げているモデルやシミュレーションを一つ一つ読んでいくと、世界や社会に対する新しい見方が徐々に浮かび上がってくる。

     本書で取り上げられているモデルの中でも一番簡単なものに、糸とボタンを使ったモデルがある。ボタンと糸をたくさん用意して、ボタンを糸でつないでいく。どのボタン同士を繋げるかはランダムに選ぶ。ボタンに対して糸の数が多ければ、たくさんのボタンが繋がり合った集団が作られる。糸の数が少なければ、そういった集団はほとんど作られない。

     ここで、ボタンに対する糸の数が1/2を超えると、突然大きな集団が作られるようになるのだ。糸の数がそれ未満だと小さな集団しか作られない。また、それ以上に糸の数を増やしても、集団に劇的な変化は見られない。この1/2という境界を超える事で、ボタンと糸のシステムには大きな変化が起きる。この変化を「相転移」と言う。

     相転移を引き起こす「1/2」という条件は、システムのルールを見ているだけでは決して浮かび上がってこない。システムが実際に何度も動いて、その先でようやく分かる性質だ。

     従来の科学は、システムのルールを明らかにすることだけが目的だった。ボタンはいくつあるのか、糸はいくつあるのか、1本の糸にはいくつのボタンが繋がるのか――といったような。複雑系は、こういった明示的なルールでは明らかにならない法則性を見つけていく。いわば、法則の上に成り立つメタ法則を探し求めるのだ。

     単純な還元論による科学は、限界を迎えつつある。単純な因果関係だけでは、宇宙や生命の成り立ちを明らかにできそうにはない。より理解を深めるためには、個々のルールを超えた新しい視野が必要になるに違いない。

    「未来を予知する力そして支配する力として科学をあがめるベーコン以来の伝統は、一方でわれわれから畏れ敬う気持ちを非科学的だとして奪ってしまったのではないだろうか」

    「誇り高き人類が実は一つの動物であり、自然界に組み込まれ、そして神の声によって動かされているということに、われわれは気づきはじめている」

    「もしわれわれの最善の行動の結果がどうなるかがわからないものだということに、新たに関心をもつようになれば、われわれは一つ賢くなったと言えよう」

    「われわれの最善の努力が最後には先の見えない状態に変わってしまうのなら、どうして努力する必要があるのか。なぜなら世の中がそうなっているからであり、われわれはその世の中の一部だからである。生命とはそういうものであり、われわれは生命の一部なのである」

    「このような生命、すなわち進化を続ける秩序を説明づける科学を、われわれはいまつくり始めたばかりなのである」

  • 自己組織化という生命進化の1つの法則を示した書。ものがたくさん集まるとそこから自発的に塊ができる。これは生命にも宇宙にも当てはまるのかもしれない。局所的には熱力学第二法則にも反しているかもしれない。

  • エクストリームプログラミングの創始者ケント・ベックが参考文献であげている書籍。

    私も本書に刺激を受けて、相転移に関するプログラムを作り下記に公開した。

    https://zenn.dev/fujiyamaegg/articles/76cb53b2a84532

  • 共進化、極値解、中庸、カオスの縁

  • 12.12.22

  • メモ

    部分組織と共進化 NKモデル
    社会システムへの応用
    カオスの縁、相転移点、適応地形
    制約条件が厳しくなるにつれて部分組織の役割が重要になる
    どのような部分組織がよいか?
    ミシガン/ピーターバンクス 実り多い妥協案
    間違った問題提起をして解決策を世界に適応する危険性
    しかしそれは避けられないので、そうした失敗から学ぶ、また、その答えが役立つこともある
    受け手本位のコミュニケーション-判断を相手に委ねる
    社会における無矛盾の不確実性

    直感的に良いものを選択した部分組織の集合は全体としても素晴らしい妥協点をもつことも可能

    研究のジレンマ
    似たようなことをやっている先人はあなたがやろうとしていたことを完全にはやっていない

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