「左利き」は天才?: 利き手をめぐる脳と進化の謎

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532165628

作品紹介・あらすじ

全人類の約10%を占める「左利き」の人たちは、右利きの人とどこが違うのか?左利きはどうやって生まれるのか?脳の仕組みや働きに差があるのか?動物にも利き手はあるのか?自ら左利きである著者は、利き手にまつわる学説や珍説、迷信の真偽を確かめようと、科学的探検の旅に出た。その旅は驚くべき発見の連続だった。左利きばかりの一族が建てたというスコットランドの古城、19世紀の脳の標本が保管されているパリの博物館、軽井沢のゴルフコース、事故に遭って右腕の先端に左手を移植された男…。著者は世界各地で研究者や左利きの人たちと語り合ううちに、利き手をめぐる謎が、言語の起源や知性の進化といった現代科学の最重要トピックと深くつながっていることを知る!「左利きの人への贈り物に最適」(PW誌)と評された、奇想天外なサイエンス・ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 「左利きは創造能力が高い?」「左利きは天才?」
    左利きである私にとっては悪い気はしないが、残念ながら自分には当てはまっていない。
    本書の著者も左利きで、なぜ左利きと右利きがいるのか、利き手の違いがどのような影響を与えるのか、ということに興味を持っていたそうだ。本書は、著者が左利きの謎を探るために世界の様々な場所を訪れ、聞いた内容をまとめたノンフィクションである。

    まず、利き手について。
    右利きの定義は「片手で行う作業の大半において右手を使うのを好み、両手を用いる作業(瓶の蓋を開けるなど)では右手が主要な役割を果たす」ことで、左利きはその逆となる。
    左利きの人は世界の全人口の10~12%もいて、意外と多い、というのが率直な感想だ。
    自分の利き手を確認する手段として、どちらの手で使うか10項目について回答するエディンバラ利き手テスト(EHI)というものがある。ちなみに私は5項目が左、2項目が右、3項目がどちらの場合もある、となり、「両手使い」のカテゴリにあてはまるようだ。

    著者はまず、非対称な脳の機能と利き手との関係性について話を聞き、なるほど、と納得する。つまり、人間が遺伝子によって言語能力を発達させ、言語機能を司る左脳が発達したため、左脳と結びついた右利きに偏るのだというのだ。しかしその後、言葉を話せないチンパンジーも利き手に偏りが見られることがわかる。

    著者は東京大学の廣川教授の発見についても紹介する。人間の神経細胞内で栄養分や情報を運ぶタンパク質の細胞の繊毛は右回りに回転しているという。これにより左側に物質が偏って運ばれるため、人間の体に非対称性がうまれ、脳の非対称にも関係するのではないかというのだ。
    ただし繊毛の回転の方向が決まったのは偶然なのか、何か要因があったのかはわかっていない。

    さらに著者は、左利きと右利きではなく、強い片手利きと両手使いの違いに注目すべきだ、という話も聞く。左脳と右脳をつなぐケーブルの役割を果たす脳梁は、一般に左利きや両手使いの人のほうが大きく、利き手がどちらかに強く偏っていればいるほど小さくなる。左右の脳同士のコミュニケーションが少ないほど雑音を締め出せるため、両手が別々の動きをする動作については片利き手(右利き)が有利となり、両手の協力が必要な動作については両手使い(左利き)のほうがうまく行えるというわけだ。

    彼はその他にも利き手のはっきりしない甥っ子を心理学者に会わせ、利き手がいつどうやって決まるのかを探ったり、事故で左腕を付け根から切断し、なくなった右手首の代わりに左手首を移植した男に話を聞きにいく。
    挙句の果てには、手相判断や筆跡鑑定のプロフェッショナルを訪れ、日本レフティゴルフ協会とゴルフをプレイして元野球選手の川上哲治氏に話を聞いたりもするが、左利きの要因について確信は得られない。

    結局、利き手によって得手不得手があるらしいが、利き手がどうしてできるのか、そのうち1割がなぜ左利きになるのかはまだまだ謎が多いということがわかっただけであった。答えがはっきりしないのは残念だが、こればかりはしょうがないだろう。
    利き手と脳や体の仕組みのこと、様々な学説が紹介されていて、知的好奇心を刺激されたのでよかったとしよう。

  •  多くの生物は、左利きと右利きの割合が半々なのに対し、人類はそのバランスが大きく傾いている。それは、人類の言語能力の発達に伴い、左脳が発達したからだという説がある。言語野のある左脳は右手を司る。

     「強い片手利き」と「両手使い」 という新しい分類。両手使いは脳梁が大きく、左脳と右脳が影響されやすい。脳梁が大きいと、左右の手を別々に動かそうとしても、ノイズが入りやすい。(ピアノ、)また、記憶を符号化するのは左脳で記憶するのは右脳であるため、両手使いは記憶力がいい。
     脳機能の分布は、連携をするものが近くにあると効率が良い。そのため、脳機能の左右差が生まれた。
     物を投げるという能力は生存に有利に働くため、運動野のある左脳は発達していった。その後、左脳が発達していくにつれ、左脳にあった言語野も発達し、人間の言語能力が他動物よりも優れているという説。
     繊毛・鞭毛は右回転する。これにより、左右の濃度差が生まれ、細胞の方向が決定する。これが、巡り巡って、人体の非対称性に繋がるという説。
     自然界は物理法則の均衡を保つために対称性を有しているが、左が右がという一択を突きつけられたとき、必然的に非対称性が生まれる。人間の心臓が左にあり、利き手が右にあるのは、ただの偶然なのではないか?その種が生き残っただけという説。

    左脳と右脳を繋ぐ脳梁が、人より大きいと、、
    ・人より記憶力がいい
    ・両手で別々の動作をするのが苦手。
    ・常識(固定観念)の修正を高頻度で行う
    ・利き手じゃない方も割と使える。

     胎児が胎内で咥えている方の親指が、生後の利き手となることが圧倒的に多い。そのため、利き手は環境によって後天的に決まったものではないという説が支持を得ている。

     再配置遺伝子説 脳機能野の配置換え

  • 自分が左利きであるが為に何かを期待して読んでしまった。10年以上も前の著作だから今はもっと左利きについて多くのことがわかっているかもしれないし、考え方も変化しているかもしれないけど、興味深い内容だった。

  • 「左利きは」天才? このタイトルに騙されました(笑) 
    これだけをみると『左利き天才! こんな事例があるんだよ』という風に受け取れますが、実際は『左利きの著者』が利き手がどういう仕組みで生れるのか、左利きが存在する意味は何か、左利き人間の特性は何かを世界中を駆け巡り科学的につきとめようとする探求の物語でした。 
    「環境説」「遺伝子説」さまざまな仮説から答えが見つかりそうになりますが、あたらな事実が見つかりさらなる混迷へと繋がっていく・・・ 
    本書の締めの一文に答えがあります。
    「今度誰かに左利きはどこがどう違うのかときかれたら、彼らは特別なのだと答えてほしい。いつか科学が証明すると」

    ちなみに私も『左利き』です。 

  • 自分が左利きのため、本屋でこの本を見かけて、思わず買ってしまったのだが…

    帯には「最新科学で解き明かす」とあったが、実際には、利き手については科学的に解明されていないことが多いため、解き明かすというよりは、諸説を紹介するといった感じになっている。左利き(利き手)の謎を解き明かしたいという著者(左利き)の探訪記といった一面もある。

    私は左利きなので、共感できる部分もあったが、なんとなく不完全燃焼というか消化不良という感じ。右利きの人には耐えられないかも。

  • 著者は「重度」の左利きであり、ことこの言葉に関しては極めて敏感な人生を送ってきたのだと。

    で、脳科学などなどあらゆる分野における「左利き」について取材しまくって表したのがこの本。

    そして彼は恐るべきことを学ぶ。

    なんと、人類が人類たり得る大きな要因が「左利き」にあるのだという。

    本書は一種のミステリーでもあるのであまり内容を紹介しないほうがいいと思うんだよね~。

    右利きの人が読んでもとにかく面白い!保証します。

  • 面白かった。
    左利きが存在する意味、利き手が生まれる仕組み、左利きの人の特性を突き止めようとしている(結論は出ていないように思える)。



    第14章 左利きはセクシー?
    「ヴァースタイネンの研究はもっと大きな問題も繋がっている。つまり、脳が進化して、昨日が左右の脳半球に分かれ、左脳が言語などの仕事を担当するようになった、とい問題だ。何種類もの和音を弾くような、計画して順序立てる作業を行う際は、脳はその種の計算を専門に行う中枢を利用しなくてはならない。指を上下するといった、速さを問題にする単純な動作なら、運動機能をつかさどる脳領域だけで対処できる。左利きの人が右手を使った方がある種の動作をうまくできたのは、いわば複雑な動作の振り付けを担当する領域が左脳にあって、それが右手と結びついているからだろう。」p.215

  • 廣川教授の話と、右腕に左手を移植した男の話は新しい。

  • 自分も「左利き」について研究したいと思った。この本は右利きの人が読んでも面白くないんだと思う。

  • 左利きです。

    左利きですが、「左利きの人の字の書き方って不思議」と思う。


    初対面の場で「左利きなんですね」と言われるまで、自分が左利きである事を忘れている。


    など、
    自分の左利きに無自覚なんですが、


    「聖書では御業が全て右手で行われていた」事から「左手はサタンそのもの」と、昔の西洋では左利きが忌み嫌われていた事を知り、



    自分の左利きに関心が出てきました♪

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