スマート・パワー: 21世紀を支配する新しい力
- 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 (2011年7月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532167929
作品紹介・あらすじ
現代において、もっとも重要なスキルとなるのが「状況把握型知性」-環境の変化を理解し、趨勢を利用する能力-と、「スマート・パワー」-強制と支払いというハード・パワーと、説得と魅力というソフト・パワーの組み合わせ-だ。世界的な国際政治と安全保障問題の泰斗であり、アメリカ政府においても枢要な地位を占めてきた著者が、21世紀を生きるうえで欠かせない「スマート・パワー」を解説する渾身の1冊。
感想・レビュー・書評
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おもしろかった。モーゲンソーの力の均衡理論から何十年も経った今、アメリカの政治学者は、アメリカのヘゲモニーが、可能なのか不可能なのか、考えるうえで、権力の概念自体が変化していることを指摘し、新しい戦略が必要だと考えている。実に刺激的な本だ。
参考文献の中に、ケネス・E・ボールディングの著書があげられてたので驚いた。政治学の本読んでると、経済学でとっくの昔に使われなくなった古い著作や思想が普通に出てくるので驚く。"Three faces of power"は1989年の本だぞ。
アメリカと中国の力のバランスについて、ナイの予測は楽観的。
今後、アメリカの生活様式の脅威となりうる問題として
①テロリズム
②イスラム世界の動き
③アジアの経済力の発展
④エネルギー市場への依存度
⑤伝染病や気候変動などの環境問題
を指摘してる。
日本も、少子高齢化して国内市場が萎んでゆく中、スマート・パワーの戦略でも考えなければ、巨大化する中国の隣で、生き残っていけない。でも、クール・ジャパン程度のショボいパワーでは、とてもスマート・パワーにはならないよ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
軍事と経済のハードパワーと説得と魅力のソフトパワーを組み合わせたスマートパワーが重要という話。
この3種類のパワーが何か、サイバーや力の移行を受けて世界はどうなるか、そしてアメリカはいかなる戦略をとるべきかということについて論述している。 -
ソフト•パワーについて興味がある人におすすめです。
内容は割と難しいので、YouTubeでナイ教授がソフトパワーについて説明している動画を観てから、この本を読むと理解が深まりそうです。 -
「ソフト・パワー」という語の提唱者として知られる国際政治学者(ハーバード大学教授)が、ソフト・パワー/ハード・パワーの概念を用いて現今の国際情勢と今後の展望を解説したもの。同じく日経から邦訳が出ているナイの旧著『ソフト・パワー』『リーダー・パワー』につづく、「ソフト・パワー」シリーズ第3弾、という趣の本である。
書名にいう「スマート・パワー」とはやはりナイの造語で、ソフト・パワーとハード・パワーを組み合わせた力のこと。2つの力を臨機応変に使い分け、状況に対処する外交戦略の謂である。
「ソフト・パワー」という言葉が人口に膾炙するにつれ、誤解も多くなった。その代表的なものは、「ソフト・パワー=善・先進的」、「ハード・パワー=悪・時代遅れ」とする単純な二分法である。
提唱者のナイ自身は一度もそんなことを言っていない。彼は、時代の変化につれてソフト・パワーの重要性が高まってきたと主張しているだけで、ハード・パワーがもはや必要ないとも、ソフト・パワーが無条件に善だとも言っていないのだ。
本書にもこんな一節がある。
《ソフト・パワーは規範的な概念ではなく記述的な概念であり、ほかの力の形態と同じく、良い目的にも悪い目的にも使える。ヒトラー、スターリン、毛沢東は、支持者からみて強力なソフト・パワーをもっていたが、だからといってその力を良い目的のために使ったといえるわけではない。腕をねじあげるより、考え方を変える方が良いとはかぎらないのだ。》
ソフト・パワーとハード・パワーを適宜使い分けて賢明に国を動かしていく「スマート・パワー」の大切さについて、豊富な実例を挙げて説得的に論じた好著。とくに米国のもつ「力」について詳細に論じており、昨今の「アメリカ衰退論」への反論としても読みごたえがある。 -
【由来】
・孫崎享「情報と外交:P88
【期待したもの】
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【要約】
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【ノート】
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ソフトパワーとハードパワーを如何に組み合わせてスマートなパワーを維持・発展していけるのか。日本の例も述べられている中で、その技術・教育といったものは世界に誇れるが、欠けているのは、情報やインテリジェンスといった要素か。単に多様な情報に流されるのでなく、如何に必要な情報を見極めてかみ砕き、かつ考え・思想をもってソフト→スマート・パワーにしていけるのか、個々としてもしかと受け止めていかねばと思う。
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サイバー攻撃を含む一連のサイバーセキュリティ問題について、外交政策の視点からの考察は一読に値する。技術的視点から「できることだけやる」という従来の「情報セキュリティ」中心の対応では、グローバル化したサイバー脅威の対策として「何か大事なもの」を欠いているような印象だったのが、本書を読んで少しすっきりした印象。
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ソフトパワー程のインパクトはない。今までのまとめ的内容。
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ナイのこれまでの議論、ハードパワー、ソフトパワー、それらを結合したスマートパワーの議論がレビューできる。その議論を踏まえた上でのアメリカが進むべき道が記されている。