特務(スペシャル・デューティー): 日本のインテリジェンス・コミュニティの歴史

  • 日経BP日本経済新聞出版本部
3.63
  • (4)
  • (9)
  • (9)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 168
感想 : 15
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (499ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532176860

作品紹介・あらすじ

●日本は日米同盟を深化させ、「ファイブ・アイズ」加盟への道を進むのか。
●「自主防衛」を選び、インテリジェンス・コミュニティを完全に再構築するのか。
●あるいは中国との協調関係を選び、中国が反対するレーダーシステムや衛星の導入を抑制し、米国よりも中国と情報協力するのか。
* * *
冷戦終結後、日本の安全保障戦略家たちは日本のインテリジェンス改革に取りかかり、日本の安保組織を再構築しはじめた。
第二次世界大戦の完全な敗北、アメリカへの服従、国民の軍部不信といった戦後日本のインテリジェンス・コミュニティへの足枷が、どのようにして「新しい世界秩序」のなかで外され、2013年の特定秘密保護法と国家安全保障会議(NSC)創設に至ったのか。戦前から現在まで、日本の100年におよぶインテリジェンス・コミュニティの歴史を、インテリジェンスの6要素――収集、分析、伝達、保全、秘密工作、監視――に焦点を合わせて考察する。そして直近の改革が日本の安全保障にどのような結果をもたらし得るのか、過去の改革がどのような帰結だったのかを明らかにしていく。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 日本における諜報の変遷を、アメリカの立場で検証している一冊。
    現在アメリカにとっての極東地域同盟国の一つ日本ですが、戦前戦中のアジアでは全ての白人国家と渡り合える唯一の黄色人国家でした。
    それには諜報・防諜の技術が必要であり、日本でも活用されてきました。
    本書の焦点は戦後の日本に当てられています。
    戦後日本の情報の扱い方がどのようなものか、詳細に解説されています。
    どうしても難いものとなりますが最近の総理大臣や拉致問題など記憶に新しい話題も絡んできますので、多くの日本人が関心を持てる内容であると思います。
    情報を得て未来を予測し要領良く行動する術は個人でも重要ですが、国家規模となれば必要です。
    日本は民主主義で代議制の国なので、有権者である国民が今後のインテリジェンス・コミュニティの舵取りについても第一歩の判断をすることになります。
    その判断の一助になること請け合いの一冊です。

  • 戦前・戦中の「特務機関」に限らず、明治維新から現代まで日本の諜報への努力とそれに対する評価。
    ぶっちゃけ、邦題は「諜報」とか「インテリジェンス」の方が好ましいようにも思うが、現代が「スペシャル・デューティー」だから仕方ないか。

    そして、後藤田正晴と安倍晋三がキーマンなんだなと再認識するとともに、健全な民主主義国家の諜報機関として、議会による監視の強化は避けて通れないというのはわかるが、野党のレベルの低さを考えると、現実的とは思えなくてなあ……

  • 読み進めれば面白そうなんだが、ごめん、無理だった。

    海外物のこういう本の前置きの長さ、訳文の読みづらさに辟易。

  • 戦前からの日本におけるいわゆるスパイ史。
    軍の諜報機関が解体され、スパイ天国にされた我が国が漸く普通の国に戻れるところまでになった。
    これら一連の流れが非常に解りやすくまとめられており、ありがたい著作。

  • 日本のインテリジェンスの変遷がよくわかり、抽象的な事象と具体的な事例のバランスが取られた一冊。
    日本のインテリジェンスとそれに基づく危機管理、意思決定などに興味がある方向け。

    日本語訳者の小谷賢氏も日本のインテリジェンス史に関する書籍を出しているので併せて読むと理解も深まると思われる。

    収集、分析、伝達、保全、秘密工作、監視という6つの要素から近代以降の各時期の日本のインテリジェンスを評価している。

    また、将来の日本のインテリジェンスの能力拡充や対外的協力体制構築の方向性についても示唆を与えてくれる。

    日本は(どの国でもそうだが)、内外の政治情勢、技術的な進歩、そして「失敗」に影響を受けてインテリジェンスを進歩させてきた。

    戦前戦中と陸軍中野学校に代表されるようなヒューミントの発展を成し遂げたし、シギントについても善戦した。
    一方、スパイゾルゲのような事例から、防諜は不完全のようにも思われる。
    また、陸軍海軍の間で情報共有が消極的だったようにサイロ化も否めない。

    戦後は元軍人によるインテリジェンスの再興は見送られ、警察を中心にインテリジェンスを再スタートさせた。
    アメリカへの偏重とそれに対する不信などがありつつも、あらゆる経験を得た。
    ソ連にはスパイ天国として活動を許した。
    MiG25の強制着陸ではレーダー探知能力の問題点に加えて警察、自衛隊、法務省、外務省で官僚の管轄争いを演じた。
    後藤田、中曽根、その他キーパーソンがスパイ防止法、外務省のインテリジェンス強化などを図るもいずれも道半ば。

    その後も阪神淡路大震災で首相がテレビで第一報を知るなど危機管理の甘さも残存。

    防衛省に情報本部を設置するも結局のところ警察に情報がたどり着き溜り場ができる状態。
    国家の意思決定や政策関心とインテリジェンスコミュニティ各省庁の連携は程遠い。
    拉致問題の解明は政治家の北朝鮮との関係改善という思惑が邪魔して遅れたとの見方もある。

    町村、安倍などの政治家により特定秘密保護法制定、NSC設置などにより、情報保全強化と日米情報共有の推進、インテリジェンスコミュニティのサイロ化排除や一体化などが進んだ。

    それでもヒューミント不足、NSSの専門的な分析人員不足、未だに残る省庁間の権限争い、サイバーセキュリティ対策、など課題は依然として残っている。

    今後は情報共有の協力国の軸を見定め、それに向けて日本も自助努力し、サイバー、宇宙利用など技術的な進歩も含め発展させる必要がある。

    今までは失敗からの手直しを続けて来たが、
    例えば台湾情勢などを念頭に、
    どんな失敗を回避すべきかを考えながら必要な力を備え、「普通の国」を目指していきたい。

  • 6章、7章

  • 多くの関係者インタビューをもとに、日本のインテリジェンスの歴史やその問題点を分析する良書。NSS立ち上げ後も内調とのアクセス争いがあることなど、収集・分析機関間の争いや政策との関係が引き続き問題であることがよく分かる。結局は、不確実性を含むインテリジェンスを政治家・政策部局がどれほど重視できるのかという文化の問題かもしれない。以下興味深い点。
    ・戦前のインテリジェンス・コミュニティでは秘密工作の方が分析よりも高く評価された。
    ・東條英機はインテリジェンス不信。ナチスドイツのソ連侵攻に関する情報を信じようとせず。防諜組織も持っていなかった。
    ・合同情報会議は1986年に創設。この頃、内調室長の総理ブリーフは週一回だった。
    ・1985年、中曽根総理がスパイ防止法を作ろうとして失敗。
    ・1998年、官房長官を議長とする内閣情報会議が創設。しかし、縦割りや政策側との混線問題は取り組まれず。
    ・1997年に防衛庁情報本部の創設。
    ・インテリジェンス改革の促進要因:テポドン実験など安全保障環境の悪化・米国の圧力
    ・町村は「政治指導者によるインテリジェンスの放棄」の状況を変えようと決意。
    ・2005年でも内閣情報官の総理ブリーフは週一回。
    ・NSSは内調に頼るのではなく外国の情報源を開拓しようとした。ソニーピクチャーズへのサイバー攻撃について米から情報を得たのはNSS。
     

  • 日本の諜報防諜活動の通史。
    個人の視野ですが類書は未見。
    類書を日本人が書いてない所が謎と言うか戦後日本の精神の歪みだと軽く絶望。
    戦前の特務機関の活動から戦後細分化され再出発した各情報組織の活動や繋がりを整然と著述。
    玄洋社東亜同文書明石小野寺土肥原中野小平青桐三島金大中別室ムサシ別班拉致米国支配等々ブツ切りで見聞きしたワードが繋がり納まり快感すら感じた。
    特に戦後編は米国の日本情報共同体への浸透支配や日本の対米情報依存に対する抵抗と自立の歴史と読め、
    なぜこれを米国人が書くと悔しくもあり、米国知識層の厚みに戦慄もあり。

  • 【目次】(「BOOK」データベースより)
    第1章 インテリジェンスの推進/第2章 特務の拡張ー1895~1945年/第3章 敗北への適応ー1945~1991年/第4章 失敗の手直しー1991~2001年/第5章 可能性の再考ー2001~2013年/第6章 インテリジェンス・コミュニティの再構築ー2013年以降/第7章 日本のインテリジェンスの過去と未来

全15件中 1 - 10件を表示

リチャードJ.サミュエルズの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×