- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532177188
作品紹介・あらすじ
〇中国は振り子のように歴史を繰り返す。強固な共産党支配の貫徹、米国に取って代わる覇権追求がいつまでも続くことはあり得ない。「中国共産党は建国以来、やがて米国に取って代わることを企んできた。その野心を隠して西側を騙してきた」という「100年マラソン」説 は誤りだ。中国は今後、どういう要因によって、どう変わるのか。それを正確に予想することこそ喫緊の重要課題だ。
〇世界も大きな変化に見舞われている。コロナ・パンデミックを契機に、世界の経済政策のトレンドが「自由貿易、小さな政府、ネオ・リベラリズム」から「政府の経済介入強化、大きな政府、配分重視」の方向へ転換した。同様の変化は1930年代にも起きた。世界も中国も「歴史は繰り返す」。
〇2020年、中国に大きな変化が起きた。米国と長期持久戦を闘っていく方針を固めたのだ。「米国は衰退に向かっている」という判断が「持久戦を闘えば、時間は中国に味方する」という楽観を生んだからだ。だが、「時間は中国に味方する」ことはない。貧富の格差、不動産バブル、「隠れた政府保証」がもたらす弊害、財政難、少子高齢化などの難問を抱えているためだ。GDPで米国を抜くことはなく、中国経済は崩壊しないものの、「中所得国の罠」への道をたどる。
〇政治面でも軌道修正が避けられない。共産党支配によるタテ単軸制御型システムの限界――「何でも党が指導」体制ではもうやっていけない。老いた文革世代がリードする「中華民族の偉大な復興」という看板は若者から支持されずもう降ろすとき。
〇米中対立は世界の関心事だが、「米中対立」は迫り来る世界の大変化の前奏曲に過ぎなかったことになるような事態が生じる可能性がある。国家権力としての米国と中国(米国政府と中国政府)は共に国内政治経済で抱える問題ゆえに衰退する可能性がある。世界的なインフレの回帰、金利上昇による債務負担増に伴う主要国(日米欧中)の国家財政の破綻懸念が高まる。さらに、国内の分断、貧富の格差の拡大、気候変動リスクに主権国家は揺さぶられている。米中対立が深刻化し、自由貿易体制が縮小し、経済ブロック化が進めば、1930年代同様、世界は大きな試練を迎え、既存の国際秩序が根本から崩れる「グレート・リセット」が到来する可能性がある。
〇そして日本は、米中対立が長期戦になることを覚悟し、台湾有事への対応、安全保障と経済関係のバランスをとるべきこと、自由貿易ルールの遵守、中小国の横断的連帯、米国の動きに先手を打ってイニシャティブを発揮することを説く。
感想・レビュー・書評
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「中国の膨張主義は永続きしない」。こう語る、現代中国研究家である著者が、中国が抱える問題点や政治的課題等について解説する。また、米中対立が続く中、日本の生き残り策を提言する。
第I部 2020年という転換点
第1章 対米長期持久戦に向かう中国
第2章 急激な保守化・左傾化――転換点で何が起きたのか
第II部 時間は中国に味方するのか
第3章 突出する「デジタル・チャイナ」――その光と影
第4章 「共同富裕」と貧富の格差
第5章 3期目・習近平政権を待ち受ける試練
第III部 「振り子」としての中国
第6章 文革世代では中国の新時代を拓けない
第7章 中国はまた変わる――「中国=振り子」仮説
第IV部 国際秩序のグレート・リセット――日本はどう生きていくべきか
第8章 米中対立にどう臨むか
第9章 「グレート・リセット」がやって来る?
第10章 日本はどう生きていくべきか詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
https://indus.andrew.ac.jp/opac/volume/1304769 -
新型コロナウイルス感染症の流行以降、米国と中国との対立があらわになった。これから中国はどう動くのか?同国で今起きている変化、課題を読み解き、その未来を見通す書籍。
2020年、米国は、コロナ・パンデミックの責任は中国にあると批判し、新疆ウイグル自治区での人権侵害批判も強めた。
一方、中国の対米政策も、米国と「長期持久戦」を闘っていく、という方針に大きく転換した。その理由は、次の2つだ。
・米中関係の回復は望めそうにない、と見切りをつけたこと。
・対米観に大きな変化が生まれたこと。かつての米国は仰ぎ見る存在だったが、中国の経済発展につれて、「中国の方が優れている」という考えが生まれるようになった。
中国国内では、“持てる者と持たざる者”という「資産」格差の問題が生まれている。その原因は、次の通りである。
・不動産価格が高騰し、不動産バブルが生じたこと。
・ゾンビ企業(自力では借金を返済できない不良企業)の処理を先送りし続けてきたこと。
中国はリーマン・ショック後、成長が低下する度に景気刺激(投資)を行い、高い成長率を維持している。だが、資金の多くは借り入れであるため、過剰債務が問題となっている。
中国は、「左派」(一党独裁、計画経済重視)と「右派」(権力の監督、市場の働きを重視)の間を揺れ動いている。1980年代は経済、政治の両面で改革開放が進むなど右旋回し、WTOに加盟した2001年頃から左派・保守派の声が優勢になった。
今後、中国が西側に親和的な方向に変化しても、それで「歴史の終わり」にはならない。民主化や権力の分散により党・政の腐敗が深刻化し、再び個人集権に向かう可能性がある。 -
東2法経図・6F開架:332.22A/Ts36b//K