ダークサイド・スキル 本当に戦えるリーダーになる7つの裏技

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  • 日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532199913

感想・レビュー・書評

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  • ・CND:調整・根回し・段取り

    ■担当役員をすっ飛ばしてトップとダイレクトにつなげる
     KYな人間をうまく活用した事例としては、日産自動車のクロスファンクショナルチーム(CFT)が参考になる。
     カルロス・ゴーンさんが一九九九年に日産に来たとき、部門の垣根を取り払ったCFTをつくって問題解決をはかったことは知られているが、CFTが最初から機能したわけではない。大きな組織なだけに、部分最適のセクショナリズムが横行していて、一つのCFTに八人ぐらい各部門から集まってくるのだが、それぞれ部門の利益代表という意識が強く、部門同士の罵り合いから始まったそうだ。
     では、どうやってそれを機能するようにしたかというと、一つには、たとえば生産に係るCFTのレポートを生産担当役員に提出する、ダイレクトにエグゼクティブコミッティに提出するようにしたのである。要するに、担当役員も部分最適になっているから、それをすっ飛ばしてトップに直にレポートを上げるようにしたため、担当役員から槍が入るのを防ぐことができ、風通しがよくなって、わりと何でも言いたいことが言える体制ができたのだ。
     また、ゴーンさん本人の働きかけも強かった。CFTのメンバーを集めて、とにかこのチームの働きが重要だと熱く語り、なかには本当に涙を流す人もいたそうだ。トップの継続的なコミットメントほど、現場のチームを勇気づけるものはない。
     もう一つは、メンバーの年齢である。全員四十代の課長クラス。二十代、三十代だとまだ全体を見るだけの経験が足りない。かといって五十代の部長クラスになると、あちこちにしがらみがあって身動きが取りにくいし、十年先、二十年先のことはあま真剣に考えられない。その意味で、四十代というのはちょうどいい年齢なのである。
     部門内で同化現象が起きるのは避けられない。研究開発部門の中で同化が起こり、製造部門の中で同化が起こり、販売部門の中で同化が起こるだから、日産は部門横断的なCFTを仕組みとして導入したわけだが、それと同じことが会社全体でも求められている。


    ■毅然とした態度で在庫を燃やす
     良品計画名誉顧問の松井忠三さんには、パート3の対談でも登場していただくか、在庫の話が強烈に印象に残っている。
     松井さんが二〇〇一年に社長に就任したとき、良品計画は三十八億円もの赤字を計上した。これをなんとかしなければいけないという状況で、松井さんは象徴的なことをいくつかやっている。そのうちの一つが、売れ残りの在庫の山を全部かき集めて、社員の目の前で燃やしたのだ。在庫といっても、デザイナーにしてみたら、自分が手がけた作品を目の前で燃やされたわけだから、涙を流す人もいたそうだ。普通に考えれば、赤字でお金がない状況だし、セールをすればいくばくかの現金になる。それを一切認めず、中途半端なことはしないということを、在庫を燃やすことで社員全員にわからせた。
     それまではマーチャンダイザーが欠品を嫌って多めに発注したりして、いろいろムダがあったのだが、そういうのはダメだ、認めないということを身をもって示したわけだ。しかも、一度ならず、二度同じことをした。それでようやく会社の体質が変わったのである。
     結果的に、二〇〇〇年に五十五億ぐらいあった在庫が、数年後には三分の一の十七億円まで減った。荒療治だが、印象は強烈だ。嫌われる覚悟がなければ、とてもできないことである。


    松井 サラリーマンですから、やっぱり上から怒られるのは嫌なんです。出世にも響くでしょう。そうすると、みんな上を見て仕事をするようになる。だから、僕の二冊目の本「無印良品の、人の育て方」(角川書店、二〇一四年)には「いいサラリーマンは、会社を滅ぼす」というサブタイトルがついている。そうやって根回ししながら上を見て動き回る人が出世する会社だった。上手に根回しする人と、上手に提案書を書く人が出世するという文化でした。そういう政治力学を変えていかないと、会社として健全な会社には絶対になりません。


     当時、部長以上が三〇〇人いたので、その人たちを対象に、アメリカで開発された「センシティビティトレーニング」というきわめてハードな意識改革研修をやりました。ところが、この研修で意識が変わることはありませんでした。意識というのは、根強く残っている会社の価値観ですから、これを変えるにはエネルギーが要る。結論からいうと、意識は行動を変えないと変わりません。意識を変えてから行動が変わるのではなく、行動を変えることで意識を変えるのです。この順番は逆ではいけない。
     行動は日々の政策で変えていくしかない。日々の政策で変えていって、ようやくこれに納得してくると意識が変わってくる。したがって、意識改革運動は最初には絶対できない。当時の西友の間違いは、意識改革運動を最初に持ってきたことでした。僕は先兵で頼まれてやりましたから、ダメだということがよくわかるんです。


     たとえば、月曜日の午前中に営業会議が行われる。いちばん大事な会議です。ここで決まったことを、午後から部会で、部長が部員にかみ砕いて説明し、さらに自分の方針を加えて今週の作戦を考える。ところが、営業会議で決まった内容を部会で伝える段階で、伝わる内容が半分以下になってしまう。部長が自分の興味あることしか伝えないからです。
     部会で部長がそんなことをやってもらっても困る。だから、営業会議が終わると、本社の全社員のパソコンに情報が流れる仕組みになっています。四つの頭文字をとって「DINA」と呼んでいますが、この画面を見れば、「締め切り(Dead line)」と「指示(Instruction)」と「連絡(Notice)」と「議事録(Agenda)」が全部見られるようになっているわけです。これを閲覧した人のところには○がつくようになっていて、部員全員が見たら、部のところに○がつく。×がついているということは、まだ見ていない人がいるということなので、部門長は誰が見ていないかをチェックして、その人に見るように指示を出す。こうしておくと、営業会議で決まった内容を部長がわざわざ伝える必要はなくなります。会議終了後、三十分ぐらいすると見られるようになっているので、上から下まで直接コミュニケーションする形に近づいて、五合目社員や粘土層の問題は発生しなくなるわけです。


    木村 いわゆるポジションでマネジメントするのはもう機能しなくなっていますよね。

    松井 そうです。そうすると、みんなが納得してくれるようなことをきちんとやる人、行動で示してくれる人。カリスマ的な人望はなくても、普段の言動が正しくて、信念がブレない人。要するに、どこにでもいる市井の人。ただ、チームをまとめる力だけはしっかりもっていて、基本を疎かにしない人。そういう人が大事で、そこに個性が乗ってきます。したがって、経営のスタイルは個性の数だけあるんです。でも、昔のように、一将功成りてというか、ガツガツやっていくだけの人たちがリーダーでうまくやれるかというと、決してそんなことはない。そんな時代ではないということです。

  • 面白い

  • 20221010読了

  • 一般的なビジネススキルではない,人間臭くてどろどろとした,それでいて欠かせないダークサイドなスキルが必要だよねと説く本.
    大企業の中間管理職向け.

    著者は経営共創基盤パートナーの方
    大小様々な企業と仕事をしてきたがどんな企業ても「和を持って尊しとなす」「阿吽の呼吸」「ムラへの帰属意識」はどの企業でも共通.でもそれだけじゃ難局は切り抜けられないよねと切り出す.

    やや飛ばし気味で2時間弱.
    この手のビジネス本を久々に読んだ気がするけど.
    即効性がありそうなワードが散らばってて効用感を得やすく満足しやすい.
    摂取量はほどほどにすべきだと思うが.

    ====================

    ・上司を操る
    ・Kyなやつを優先
    ・使えるやつを手名付ける
    ・堂々と嫌われる
    ・煩悩に溺れず欲に溺れる
    ・踏み絵から逃げない
    ・部下に使われ使い倒す.

    人件費や研究開発費の削減(雑巾絞り的削減)は将来のキャッシュフローを捨てて今を補う行為

    ダークサイドスキル→MBAで学ぶようなロジシン、財務会計、資料作成スキルではないがビジネスで必須なスキル。組織を動かす、人を見る、空気を支配する、厳しい決定をするなど。

    コンサバティブ=保守的な

    カルロスゴーンが来たばかりの日産
    →U字型コミュニケーション組織だった.

    オーナー企業のトップは子孫への皺寄せを避けるため長期的な経営戦略を考える.サラリーマン統治型企業のトップは5-10年で会社を去るものなのでそこまで考えない。(逃げ切り)

    CND 調整、根回し、段取り

    JFE元社長「みなさんの今日の活動はPLのどこに紐づいていのか説明できますか?」

    KYな人→非同質的、多様性

    北風と太陽
    →行動を強いるのが北風、行動を促すのが太陽

    自分は全知全能になれない
    →借り物競走
    →ゼロックス元会長 「I don't know」
    "必要なスキルを全部身につけてから昇進するのではなく、ポジジョンが与えられるので足りないものをどんどん借りてこなければいけない"

    ブライトライン→会社の組織図
    ダークライン→社内外の人脈、自分なりの神経回路

    "本当の意味での意思決定は情報が不完全な状態で行われなければならないものだと思う"
    →情報がないから先送り はただの甘え。見えない部分は経験と勘

    親近感と敬意は両立しない

    "いつもニコニコしているカード一択では、部下に好かれるかもしれないが、たいていなめられる"

    小欲を捨て、大欲に立つ

    踏み絵や覚悟が試される場こそ逃げない.

    ”「人は見たい現実しか見ない」というカエサルの言葉は人間の本質をよく表している.みたい現実だけを見ていれば気持ちはいいかもしれないが,現場からの成長は望めない.見たくない現実まで直視し,慌てることなくいかに客観性を保てるか.この勇気を持つこと.”

    PL/BS/CFが読めるとはどういうことか?
    ・儲けのメカニズムが読み取れること
    ・きな臭い部分を発見できるかどうか
    ・施策と数字が紐づいているかどうか

    家庭とプライベートは別
    後者は孤独を,自分を見つめ直しPDCAを回す時間

    印鑑の多さは他責文化の成れの果て

  • 事業経営力強化研修課題図書。読みやすく、実践的な内容が多く参考になった。特にKYなやつを優先、重宝せよという話は非常に参考になった。

  • 人を動かすための実践学。
    「影響力の武器」を現場で使うときのパターン集とも言える。自分なりのシナプスを作っておくために昼飯は色んな部署の人と取りに行く等具体的や行動がとれるようになる。
    自分の知る役員の方が、年に一回部署の多くの方と1on1をとる理由が分かった。その人のためではなく、自分のシナプスを広げるためだった。
    早速近くの部署の人間と飯に行ったが早速効果が出始めた。一歩行動してみよう。

  • ブライトスキル(ロジカルシンキング・財務会計知識・プレゼン力・エクセル活用スキル・資料作成など・・)に目が向きがちだが、ダークサイドスキル(人や組織を思うまま動かす力・空気を支配する力・使える人を正しく見極める力・嫌われても押し通せる力など・・)が改革には大事だということがとてもよく理解できた。
    そしてその力をつけていくには、真に事故に向き合い己を知る事が大事だということも。

  • ミドルが上げる情報で上は操作できる、KYになり、KYを活用せよ、自部門以外に神経回路を伸ばせ、など書かれていることはそうだね、と概ね同意できる(逆にあまり新しい発見はなかった)。
    ただ、それを成すためのアドバイスが一生その会社を働くことやトップを目指すイコール成功、といったあたりを前提で書かれているため、読み手を選ぶ印象。
    また、筆者の自分語りが割と目について辟易…

  • 終身雇用とかハンコリレーとか、一昔前の仕事に馴染みのある人用の本?今の自分には馴染みのない内容だった。そう思って読んでいたら、後半は内容が頭に入ってこなかった。「人は見たい現実しか見ない」って本文中に出てきたけど、そういう状態になってたかも。それを乗り切ってちゃんと読んでたら成長できた?

  • 社内にオフィシャルな組織とは別に自分なりの神経回路をつくっておくこと。
    他責にせずにどんなに待遇が悪くても与えられた仕事の中でリスクをとりベストを尽くす。

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著者プロフィール

㈱経営共創基盤 (IGPI) 共同経営者 (パートナー) マネージングディレクター
慶應義塾大学経済学部卒、レスター大学修士(MBA)、ランカスター大学修士(MS in Finance)、ハーバードビジネススクール(AMP)
ベンチャー企業経営の後、日本NCR、タワーズペリン、ADLにおいて事業戦略策定や経営管理体制の構築等の案件に従事。IGPI参画後は、製造業を中心に全社経営改革(事業再編・中長期戦略・管理体制整備・財務戦略等)や事業強化(成長戦略・新規事業開発・M&A等)など、様々なステージにおける戦略策定と実行支援を推進。
IGPI上海董事長兼総経理、モルテン社外取締役、りらいあコミュニケーションズ社外取締役
Japan Times ESG推進コンソーシアム アドバイザリーボード
グロービス経営大学院教授、大学院大学至善館特任教授
主な著書に『ダークサイド・スキル』(日本経済新聞出版)、『修羅場のケーススタディ』(PHPビジネス新書)などがある。

「2023年 『企業変革(CX)のリアル・ノウハウ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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