なぜ中国人は財布を持たないのか

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532263560

作品紹介・あらすじ

爆買いで日本の商品を買い漁った次は、教育、そして就職・・・・・・
実は日本が気になって仕方がない中国人。その思いは彼らの行動も「日本的」に変えつつある。
ステレオタイプでは語れない、新しい中国人のすがたを探るルポタージュ。

◆「稲盛和夫に触発され、創業時の思いや苦労を社員や社員の家族たちに伝える取り組みをしています」「アメリカは遠いうえに治安が悪いけど、日本は安全だし近い」「中国では文化祭がないので、日本のアニメに出てくる光景が羨ましい」「日本の医療は素晴らしい。中国では信用できないので、日本で定期的に検診を受けます」……。
本書では、数多くの「実例」に基づき、「ネット大好き」「草食系」「お金より社会貢献」という、今の日本人によく似た「新しい中国人」の姿を浮き彫りにする。

◆低成長時代を迎えた中国では、新たな問題が浮上しつつあった。過労死、若者の草食化、オタクの急増、パクリ被害に遭う・・・・・・。海外渡航の増加で、世界の広さをしった中国人は、今何を考えているのかを明らかにした。

◆著者は、中国に関する数々の書籍を刊行するジャーナリストで、客観的かつ鋭い分析を得意とする。「中国人エリートは日本人をこう見る」(2012年5月、850円)は、7刷・累計30,500部。著者の書籍は、市民や社会の実像を念入りに取材したものが多く、今回も豊富な取材による「生の声」を紹介。中国人の実像は、日本の文化に触れる中、大きく変化してきている。人口13億人を抱える中国の大きな変化を捉えることは、今後のビジネスの成否を大きく左右するカギとなる。

感想・レビュー・書評

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  • 中国は実に凄いスピードでキャッシュレス社会を実現した。スマホでの決済。これは9月に旅行で見た全員がスマホに見入っている景色に一致する。そしてスマホ決済でのレンタル自転車。ここまで普及した背景が逆に中国の不信感が強かったことから来るという皮肉に迫る。中国に対するイメージがいかに偏見に満ちたものなのか、国民が政治的にも自由に発言するような社会になっているということも驚き。ますます社会主義国とは何なのかと思わされる。なお中国の少子化は日本以上に深刻化する可能性がありそう。2015年の特殊出生率は1.05だとは驚き。一人っ子政策を2013年に廃止したが、全く効果がなく、日本と同様に子供を望まない夫婦、子供のいない夫婦が増えている。その時の経済反動は怖い。

  • 東2法経図・開架 B1/9/356/K

  • 非常に中立的な中国観だと思う。
    実際、多くの日本人の中国観は、かなり現在の中国とズレている。

    GDPは既に日本の2.5倍になっている。
    マスコミも識者も、中国を未だに、見下しているような報道をしていますが、
    実際、このやり方は、日本にとっては、何一つ良いことがない。
    実際、IT・AI分野では、もう逆立ちしても、中国の技術に追いつけなくなっている。
    教育の分野でも、中国の多くの大学は、この10年で躍進している。
    もう東大はアジアTOPではなく、北京か精華大になっている。

    日本の大学生は一日平気39分しか勉強しないが、
    中国の大学生は2時間以上勉強する。

    あと数年で中国の沿岸部の平均所得が、日本の中級都市の所得に追いつく。ここ数年で中華系企業の日本企業の買収が加速しているが、買収した後の収益は、以前よりも良くなっている。

    日本は、人口減少(消費者減少)、超高齢化(財政負担)、労働者減少(労働力不足)で、
    これから、経済成長する可能性は、おそらくない。
    AI技術うんぬんと言っているが、そもそも、それらに対応する人材がいない。
    それはIT分野の深刻な人材不足からも、よくわかる。

    この20年、何も抜本的政策行わなかった結果、世帯所得は平均25%減少した。
    これからも、減少するのは間違いない。
    こういう報道は、日本のマスコミからはされない。
    中国のメディアは国営だが、日本も大して変わらない。良くないことは、あまり報道されない。

    個人的には、中国は台頭したという意見は、現実を見ていない。

    中国は、これから、台頭すると思う。
    大学生は毎年1000万人出現している。激烈な競争の元、学習意欲が高い子ばかりである。

    では、日本はどうだろうか?7割の中高生が、将来に希望が持てないという。多くの子が、自分に自信がないという。

    こんな状態で、いったい、これから、日本はどう成長すればいいのか。中国に見習うべきは、見習った方がよいと思う。

  • いや〜、この本は二つに分かれますね。
    私的には、賛成です。中島さんの考え方です。
    強くなるべきです。

  • なんで持たないのかっつうと、現金は偽札が多くて信用できないし、何もインフラがなかったからこそスマホ決済が一気に普及した。
    これがまた、他人を信用し、他人に信用されることへの価値を生み、良い方向に回っていると。

    まあ、それはそうなんだろうし、著者が自分で何度も中国に行って肌で感じた内容でもあるから一面、中国が「普通の国」に向かいつつあるというか、日本人から見て普通の人が増えてきたのも間違いはないんだろうな。

    10億人のうちの何人か知らないけど。

    上に政策あれば下に対策あり。

    しかし例えばそのネットが、強烈な監視社会を生んでいることも間違いないし、現在、個々人がその中で思われている以上に自由に発言できているとしても、ある一瞬でそれが地獄に変わる可能性を全く無視してるよね。

    著者と、意見は合わないな。

  • 七月に中国に行く飛行機の中で読んだ。北京の故宮の裏で体の前に空き缶を置いた物乞いがいた。まさかと思い脇を見たらwechat pay のバーコードがありビックリした。本に書いてある通りだった。

  • 一時期と比べると日中の関係もずいぶんとよくなった。中国に精通したフリージャーナリストの著者が紹介する中国の最新動向。同じ職場の人の発言が少しだけ紹介されている。

    2018年6月に上海に行ったのだが、QRコード決済を始めスマホをフル活用したサービスが非常に便利であることを実感した。誰もがQRコード決済を使うようになると、それを前提に社会が動くことでそれまで思ってもいなかったところで使われるようになる。実際に体験したものとして、レストランのテーブルに付いているQRコードを読み取ると、メニューが出てきてそこから選ぶと、そのテーブルにオーダーしたものを持ってきてくれる。すでに決済は済んでいるので食べ終わったら出ていくだけ。ユーザも便利だし、お店でもレジやオーダー取りの人件費を減らせるし、回転数も上げることができる。同じように新幹線の肘掛にQRコードがあり、それを読み取ると車内販売メニューが出てきて、オーダーするとワゴンで自分の席まで運んでくれる。日本の新幹線のようにワゴンが来るのをじっと待っている必要はないのだ。当然、決済は済んでいて品物を受け取るだけ。スーパーもQRコードで読み取ることで無人レジになっているし、自販機もQRコードになっているおかげでお金の回収やお釣りの補充も必要ない。お金が入っていないので盗難リスクも少ない。外国人はパスポートを見せる必要があったが、中国人は新幹線のチケットもスマホだけで乗れるらしい。中国でQRコード決済が流行った理由として、お札が汚かったり、偽札が出回ったりといったことが理由として挙げられて、日本では流行らないといったようなことが言われるが、使ってみるとああ単に便利なんだと感じた。本書では偽札問題の解消がQRコード決済の最も大きな効用かもしれないと書いているが、長期的に見た場合はおそらくはそれは背景のひとつにすぎなくなっているのではないかと思う。
    今、中国ではスマホが欠くことのできないインフラとして動いているのだ。

    本書でも紹介されているが、2017年3月の段階で、WeChat Payの利用者が約8億3千万人、AliPayの利用者が約4億人と言われている。スマホ決済額は600兆円にまで届くらしい。

    QRコード決済に加えて、さらに大きな変化が芝麻信用による信用システムである。AliPayが自社決済システムの利用履歴等から独自の信用スコアを付けており、そのスコアにより保証金がなくなったり、合コンの参加資格になったりといったことが起きているらしい。おかげで中国人のマナーがよくなったという噂だ。ポイント付与にも便利で、店員へのチップとして例えば三元渡すと十元の金券がキックバックされるなど店員のモティベーション向上にも使われているらしい。

    中国からのインバウンド消費の移り変わりにも触れらている。当初、爆買いをしていた中国人の好みも多様化し、日本に求めるものが癒しになっていたりするらしい。和歌山県の高野山などが人気らしい。

    また、稲盛和夫の盛和塾が中国の企業家の間で人気で、勉強会もよく開催されているらしい。

    一人っ子政策からの転換と人口構成問題、男女比と結婚問題、都市戸籍の問題、地価高騰、などの問題にも触れられる。
    隣国中国については変なわだかまりなく、当たり前の敬意と誠意をもって付き合っていかないといけないのかなと思う。

  • 『なぜ中国人は財布を持たないのか』 中島恵 著

    スマホ決済によるキャッシュレス化
    「都市部に限らず、内陸部でも中国人はスマホ決済を使いこなし、便利な生活を謳歌している。目覚ましいITの進化は彼らに自信と余裕をもたらした。」著者は前書きにてこう書いた。いま中国でスマホ決済が急速に発展していることは、日本でもたくさん報道されているが、いったいどのぐらい発展しているのか。
     本書はスマホ決済の由来、利用状況と中国国民がスマホ決済を受け入れた理由について書いた。まず、スマホ決済によって、現金を経由せずに金銭のやりとりができるため、現金払いの不便なところを挙げた。中国は大きい金額の紙幣を発行していないので、もっとも大きな額は100元(日本円に換算すれば1700円程度)で、物価が高騰していながらも、たくさんの現金を持たなければならなくなっている。もう一つの理由は、中国の紙幣は極めて汚いからだ。ボロボロで臭くて、なかなか財布に入れたくもしないのだ。次に、中国人によって、スマホ決済はもう不可欠な存在となっていることを示した。具体的には、いま大人気のシェア自転車を利用する際に、スマホ決済で払わなければならない。そして、現金の代わりに、スマホ決済は中国人の日常生活にすっかりと定着した。映画館からホテルまで、病院からドラッグストアまで、デパートから路上の屋台まで、スマホ決済は圧倒的な主役になっている。つまり、スマホ決済が使えないところはありえず、商売にならないのだ。ビジネスの場面で、名刺交換の代わりに、スマホ決済機能付きのSNSアカウント交換が主流になっていて、年金や慶弔金なども全部スマホ決済で行き来をしている。最後に、中国人がこんなに早くスマホ決済を受け入れたのは、スマホはある程度で、中国社会にまだ整っていないインフラの役割を演じているのだという。偽札問題や詐欺問題により、大手会社が運営し、金銭のやり取りを関与するスマホ決済は国民のお互いに対する不信感を埋めることができると書いた。
     

  • タイトルにありますが、実際に中国に行ってみると、中国人はなぜ財布を持つ必要がないかがわかります。その答えは、お金を持たなくとも、スマホに電子マネー(We chatか アリペイ)があれば、支払いに困ることは無いからです。

    驚くべきことは、この変化はせいぜい、2016年頃から起きたことで、それまでは日本と変わらない生活か、日本よりも手間のかかることが多かったと思います。偽札が多いため、差し出した紙幣は、どこへ行っても偽札チェックがあるからです。今では、このような目に合うのは、今も紙幣を使う、外国から来た旅行者がメインでしょうね。クレジットカードよりも時間がかからず楽です。

    私の勤務する会社は5年ほど前からアジアの本社が事実上、シンガポールから上海に移ったので、アジアでの会議といえば上海に行っていましたので、この5年間の変化がよくわかります。毎年2回は行っているのですが、それでも変化は毎回感じます。

    つい最近まで、中国はバブルで崩壊するかも、という本も出ていましたが、中国は政府のトップがよく研究していて、経済がどんどん発展する仕組みを考えているようですね。羨ましい点であります。

    以下は気になったポイントです。

    ・スマホの普及当初は、ウィーチャットやショッピングなどに活用する人が多かったが、2014年にテンセントがウィーチャットペイ(徴信支付)という第三者決済サービスを開始すると、ウォレット機能を使って決済するようになった、これによりスマホは「財布」となり生活必需品となった(p27)

    ・スマホ決済の最大の利点は、屋台などの場合、利用者双方に手数料が発生しないこと、またクレジットカードのように読み取り端末を置く必要もなく、小規模な店舗は経済的負担が少ない、ただQRコードを用意すれば、その場で入金確認ができる、銀聯カードよりも便利(p29)

    ・お金は日本人にとっては大事なものである、そのお金はきれいな袋で渡したいという気持ちがあるが、中国には結婚式のお祝い用の「真っ赤な袋」はあるが、普通の生活では殆ど使用しない(p42)

    ・賄賂が渡しにくくなった、のもスマホ決済による効果である、現金は痕跡が残らないが、スマホ決済なら残る(p47)

    ・スマホ決済により、中国はこれまで実現できなかった、騙されにくい社会、に向かいつつある(p50)

    ・アリペイの仕組み、まず消費者が商品を注文、スマホからアリペイに代金を支払う、アリペイは販売者に注文連絡をして商品を発送、消費者は受けとると問題ないかを確認して、アリペイに連絡、購入する場合はアリペイから販売者へ代金支払われ、不満なら返品とともに代金もアリペイから戻る(p52)

    ・芝麻信用は、保証人制度に代わる自分を助ける画期的な評価基準になりえる(p61)

    ・5Sに加えて、安全(Safety)を加えた「6S運動」に取り組んでいる(p136)

    ・2015年末、中国政府は79年末から、36年間続けてきた「一人っ子政策」を廃止し、すべての夫婦が二人以上の子供をもてるようにする、という政策転換をした。13年には夫婦どちらかが、一人っ子ならば二人目を認める、という政策の効果がなかったから。1987年より出生数は落ち込み、2015年には合計特殊出生率は「1.05」日本の 1.46よりも大幅に下回る。2011年まで生産年齢人口が増加してきたが、12年に減少、総人口も2020年がピーク(p167)

    ・中国では、不動産が無いと都市戸籍を持てず、子供の戸籍、教育にも支障が生じるので、中国の都市部では一人の子供を産むことも難しい(p178)

    ・日常生活のインフラの質は、そこで暮らす人々のマナーに大きな影響を及ぼすだろう、スマホでスマートに生活できるようになり、社会全体のインフラも整いだした。特に、上海のショッピングセンターのトイレは2014年と16年で見違えるほど(p197)

    2018年4月30日作成

  • 中国ですでに普及しているスマホ決済をタイトルとしつつ、それを含めた最新の中国事情をレポートする。3年前に中国を訪れたが、これを読むと僅かの間に変化のスピードが加速化している様で驚き。高度成長期の日本も他国に似た驚異を与えたかもしれないが、今の中国が違うのはITの恩恵によるリープフロッグで、追いつくのではなく、一気にジャンプアップしつつある事。もっとも案じるべきは、追い抜かれる事よりその事実にすら気付かない事かもしれないが。本書は中国の急激な進歩や意識の変化だけでなく、その課題や、日本との文化対比にも触れられており、バランスが保たれた内容だった。

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著者プロフィール

ジャーナリスト。
1967年、山梨県生まれ。北京大学、香港中文大学に留学。主な著書に『中国人エリートは日本人をこう見る』『中国人の誤解 日本人の誤解』『なぜ中国人は財布を持たないのか』『日本の「中国人」社会』『中国人は見ている。』(以上、日経プレミアシリーズ)、『「爆買い」後、彼らはどこに向かうのか』(プレジデント社)、『中国人のお金の使い道』(PHP研究所)などがある。

「2023年 『中国人が日本を買う理由』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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