対デジタル・ディスラプター戦略: 既存企業の戦い方
- 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 (2017年10月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532321659
作品紹介・あらすじ
破壊された市場の「空隙」をねらえ!
あらゆる業界をのみ込む「破壊の力学」と、
それを支える「デジタル・ビジネスモデル」を解明。
勝ち残りをかけた既存企業の戦い方を明らかにする。
ITとは無縁だと思われていたタクシー業界やホテル業界。デジタル・ディスラプター(破壊的イノベーター)が現れ、業界の競争基盤を破壊してしまうと、いったい誰が予想しただろうか。いまや「デジタル・ディスラプション」は、あらゆる業界をのみ込もうとしている。
既存企業は、デジタル化がもたらす破壊の力学にどう対応すればよいのか。本書は、既存企業の視点からこの問題について網羅的に論じ、自らディスラプターとなる(ディスラプトされるのではなく、どうすればディスラプトできるかを考える)ための実践的なロードマップを示す。
カギは「バリューチェーン」ではなく「バリュー」そのもの
デジタル・ディスラプションが起こるのは、「市場や社会のなかにある、満たされていないニーズ」を満たす「新たな価値提案」がデジタル技術によって可能となるため。デジタル・ディスラプターは、既存ビジネスと同じバリューチェーンをつくらなくても、デジタル技術を用いて容易に既存ビジネスと同じかそれ以上の価値を提供する。それを支える「デジタル・ビジネスモデル(デジタル技術の進展によって可能になった新しいビジネスモデル)」を明らかにし、既存企業が採るべき「4つの対応戦略」を詳説する。
・既存企業は、なぜ、どのようにして苦戦を強いられるのか?
・デジタルがもたらす「新たな価値提案」とは?
・ディスラプターは、どのような「デジタル・ビジネスモデル」で攻めてくるか?
・破壊された市場で、既存企業が利益を享受できる「価値の空白地帯」とは?
・既存企業が採るべき「4つの対応戦略」とは?
・反撃に打って出るために不可欠な「3つの組織能力」とは?
感想・レビュー・書評
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インターネットの波に続くデジタル化の波によって、既存企業のビジネスのバリューチェーンを破壊するデジタル・ディスラプターがさまざまな業界で生まれている。
デジタル・ディスラプターの特徴は、既存のバリューチェーンのすべてを改善するのではなく、その一部においてバリューを生んでいる部分だけを切り出し、そのバリューをデジタル化の力を使ってこれまでとはまったく異なる水準にまで高めることある。
筆者はこのことを「バリューチェーンではなくバリューに注目する」という言い方で表現しているが、まさに既存企業の盲点がここにあるのだと思う。
実は、このような取り組みは、新興のIT企業だけができることではなく、実は既存企業であってもその対抗策を練ることはでき、その方法を本書では以下の4つに整理している;
①収穫戦略―破壊された事業であってもライバル企業の動きを押さえつつなるべく残りの収穫物を採り切る
②撤退戦略―既存企業のサプライチェーンが有効なニッチな既存市場に絞り込んで生き残る
③破壊戦略―デジタルを用いることで提供できるバリューを積極的に創出する
④拠点戦略―破壊された市場やその近傍で生み出されるバリューベイカンシーをできるだけ長期間押さえる
対策自体は、既存の戦略に見られないような新しいものではなく、むしろ市場における競合と戦うための従来の戦略にもみられたようなものだと感じた。
ただし、デジタル・ディスラプターはこれまでのバリューチェーンとはまったく異なる発想をとり、デジタル化によりバリューを生み出すことのできる領域に特化して戦いを挑んでくるという特徴を踏まえたうえでこれらの戦略を活用することが最も大切なのだと思う。
デジタル・ディスラプターに着目するのではなく、何がどのように破壊されつつあるのかという、デジタル・ディスラプションの内容に着目すべきという筆者の指摘が、非常に重要であると感じた。 -
目的: デジタリゼーションが進む世の中において、商社や自分の部署、車両販売店がどのように戦っていくべきかを学ぶため。
目的達成度: 4.5
★気付き・学び → アクション・意見
1. デジタリゼーションが進み、既存のビジネスがディスラプトされる現在の環境下では、優れたカスタマーバリューを生み出さなければ、生き残ることは不可能。
その優れたカスタマーバリューを生み出すために必要なのはビジネスアジリティーと呼ばれる下記の能力。
1) ハイパーアウェアネス
関連するデータや洞察を収集し、会社が置かれている状況において大きな意味を持つ変化を察知する。
2) 情報にもとづく意思決定力
データ解析をして知見を吸収し、適切な人材を引き込みつつ、一貫して正しい決定をくだす。
3) 迅速な実行力
うまくいってなかったり、時代遅れになったりしているアプローチを捨てて迅速に実行し、すばやく規模を拡大する。
→ 個人レベルではハイパーアウェアネスを身に付けるためにもデジタル化に関する情報収集は意識的に継続する。
2. デジタルボルテックスのなかでより効率的に戦うには、各従業員の従事している仕事が、最終的にカスタマーバリューと結びついている必要がある。
→ 突然自社の強みが強みではなくなり、大企業でも経営難により中国企業に買収されるような時代に、各従業員の仕事が収益の源泉であるカスタマーバリューに結びついているか否かは重要であると改めて認識した。
★感想
3つのカスタマーバリュー、4つの対応戦略、3つのデジタルビジネスアジリティーと言う重要な3つの項目に関して簡潔に、かつ具体例と共に分かりやすく記載されており、勉強になった良書であった。
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タイトルにひかれて深く考えずに購入しました。まず翻訳は非常に質が高く、全体的にとても読みやすかったです。また書かれていることについても、大きな違和感を持つような箇所はありませんでした。ただ本書からは一貫して「底の浅さ」を感じました。書かれていることが浅いといいますかとにかく薄い。巻末に早稲田大学の先生による12ページの解説がありましたが、そのくらいのページ数で十分伝わります(お時間ない方はこれだけ読めば十分)。なにか「カタカナ言葉」で無理矢理バリューアップを図ろうとしているかのようにも見え、正直ほとんど感銘を受けませんでした。面白い本ですと2ページに1回くらいの頻度で赤線を引くのですが、本書は全部で3箇所しか赤線を引きませんでした。
本書の最後の方に著者が書いているように、この本自体も「アジャイル」に作ったと言うことなので、内容が浅くなるのは致し方ないとは思います。またこの本は今後も?アップデートされるということですので、読者の意見を参考に内容を深めて欲しいと思うのですが、特に気になった点はデジタル技術を使った意思決定のパートです。本書によれば、デジタル・アジリティを身につけるためには、「情報に基づく意思決定力」が必要とのこと。そしていくつかのデジタルサービスを事例に、それらがどう人間の意思決定を改善できるかが淡々と記述されていますが、正直言って人間に対する洞察が浅すぎます。IMDにも意思決定の専門家の先生がいらっしゃるかと思いますが、そのような専門家の意見を聴きながら、人間がいかに単独もしくはグループで意思決定をあやまるか、あるいは様々な心理的なバイアスに影響を受けるかを理解した上で、デジタル技術がそれをどう改善できるか深掘りしてほしいと思いました。本書のなかでも人種や性別の偏見を受けない意志決定、という記述はありましたが、これは初心者でも言えることであって、「集団思考」「追認バイアス」「新近性バイアス」「アラーム疲れ」など技術の助けを借りたとしても人間が意思決定を間違える可能性は常にあります。意思決定×デジタル技術、というのはテーマとして非常に興味深いので、是非今後深掘りして欲しいと思いました。 -
日本語訳があまりにも…。
とても読みにくく、全く頭の中でイメージを構築できず、わかりにくかった。 -
スタートアップではなく既存企業のデジタルディスラプターを語ってる点で新鮮な一冊。
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詳細は紙に記載。
デジタルがもたらす3つの[カスタマーバリュー」
?コストバリュー
?エクスペリエンスバリュー
?プラットフォームバリュー
4つの対応戦略
1.収穫戦略
2.撤退戦略
3.破壊戦略
4.拠点戦略
デジタルビジネスアジリティ
1.ハイパーアウェアネス
2.情報に基づく石決定力
3.迅速な実行力 -
既存企業が、いかにスタートアップに勝つかという視点は、あまり見ないテーマ。
デジタルの破壊を、デジタルボルテックス(渦)と表現。
デジタルは、
コストバリュー、エクスペリエンスバリュー、プラットフォームバリューの3つを可能としている。
スタートアップがバリューバンパイアとなり襲いかかってくる。
既存企業は、以下の戦略がありえる。
収穫戦略、撤退戦略、破壊戦略、拠点戦略
デジタルのアジリティーは、以下の3つ。
ハイパーアウェアネス、情報に基づく意思決定、迅速な実行力 -
DXの具体的な実例がフレームワークとともに記載されており、一読に値する。
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うだうだ書いてあるが最後の訳者あとがきに簡潔にまとめてある。
既存企業がデジタル・ディスラプターに対してどのように立ち向かうかは、4つの対応戦略しかない。これを見る限りでは、ディスラプションに逆らうことはできず、立ち向かうか・喰われるかの2つしかないと分かる。
1.収穫戦略
既存事業の顧客体験や価格を改善して既存事業を守る戦略
2.撤退戦略
中核事業分野を諦め、利益が出るニッチ領域に集中する戦略
3.破壊戦略
既存の中核事業に対して自らディスラプションを起こす戦略
4.拠点戦略
ディスラプションと対峙するポジションを市場内に確保する戦略
既存企業のバリューチェーンは、物理世界に拘束されていて、企業と企業のつながりで成り立ってきた企業の場合、変えるのが難しい。
自らディスラプションする組織を立ち上げるのがよい?
自分なりの答えを探したい。