- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532324520
作品紹介・あらすじ
中国の一帯一路戦略には、通商・金融以外にもう一つの顔がある。それはデジタル戦略だ。一帯一路デジタル経済国際協力イニシアチブ(デジタルシルクロード)は、一帯一路の情報通信分野における構想である。これに対して米国などは、安全保障上の懸念、知財の窃取、およびプライバシーの面において中国由来の技術は潜在的に高いリスクを抱えていると指摘している。しかし、こうした視点だけでは中国による影響力拡大の目的を理解するのに不十分だ。なぜ多くの国がこれらの技術を受け入れるのか、低コスト機器に付随するリスクは何か、または中国の技術を通じた影響力はどのように効果を上げるのかを明らかにする必要がある。
そこで本書は、デジタルシルクロードについて、国際政治におけるパワーをフレームワークとして、経済、安全保障、及び技術という要素、インド・太平洋という地域の地政学からその目的と影響力を明らかにする。
地政学、安全保障、国際政治におけるパワーの行使という独自の観点から、中国の一帯一路のデジタル分野での取り組みであるデジタルシルクロードの影響力を読み解き、インフラ整備、5G、デジタルプラットフォームの拡大を示すと共に、中国の技術・経済・外交的な影響力拡大の状況と対抗策を示す。
感想・レビュー・書評
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中国、一帯一路の情報通信分野における構想、デジタルシルクろーどは、中国による技術の社会実装に関する価値を世界に拡大する戦略であり、経済発展、安全保障、国内治安の安定を優先課題とする権威主義的体制の国々を中心に支持を受けてきている。
本書では、デジタルシルクロードの形成過程をたどりつつ、主としてスーザン・ストレンジの「構造的権力」(枠組みを形作る力)の概念を活用して、その全体像を明らかにするとともに、日本の取るべき方策を考える。
中国の国家戦略、研究開発の推進、プラットフォーム企業の海外展開、技術標準の獲得、投資の回収といった事例が豊富に紹介されていて、大変参考になる。
日本の提唱する"自由で開かれたインド太平洋戦略"は、多くの国々の支持を得ることができるのだろうか?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
h10-図書館2022/03/18ー期限4/1 読了3/20 返却3/21
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国際政治学の典型理論の視点から中国の国家戦略を整理している点が特徴。また最終章で自由で開かれたインド太平洋 (FOIP) の外交路線を踏まえて日本のとるべき立場について考察している点が面白かった。
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東2法経図・6F開架:319.2A/Mo12d//K
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中国による情報通信の利用を批判するには、国内の人権侵害や他国からのデータ窃取のように行為自体が不当という面と、覇権争いの中で国外での影響力拡大への懸念という面と両方あると考えるが、本書では後者に力点を置いているようだ。
相手側に影響力を及ぼすという「関係性パワー」と、国際社会のルール形成という「構造的パワー」に区分して分析、という整理。国際的ルール作りでは中国の影響力は不十分とのこと。ただ、権威主義体制では中国型システムが魅力的、そのため民主主義対権威主義の対立構造で議論すれば権威主義体制の国は中国陣営に加わってしまう、との指摘は重要だ。
本書全体としては、内容盛り沢山のあまり整理されていない印象を受けた。情報通信技術や国際関係の一般論と、中国個別の状況。中国国内と対外関係。これらが入れ替わりで出てくる。ほぼ同じ記述が2箇所にある。また、「2000年代以降になると米国は対中強硬姿勢」と言い切ったり、アリババと当局の緊張関係があるだろうに両者を一体視したり、気になる記述もあった。