- Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532352851
感想・レビュー・書評
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グリーンスパンは神か?
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上巻。グリーンスパンの歩みを。
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2008/2/7 購入
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日本経済新聞「エコノミストが選ぶ経済・経営書」2007年ベスト1位
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先代のFRB議長アラングリーンスパンの自叙伝。グリーンスパンの凄さは卓越した経済分析力だけでなくホワイトハウスとの連携の上手さにもあるんだなと本書を読んで思った。1987年に就任して2006年に退任するまで実に19年間にわたって議長の座にあったグリーンスパン。在任中にソ連が崩壊して、その後浮き沈みしながらも世界経済を牽引してきたアメリカ中央銀行の議長をそれだけに期間勤めてきたのだから世界経済の「皇帝」であったと言えますね。よくストレスで倒れなかったね。「根拠なき熱狂」の時の舵取りは批判が多いですけど。彼の在任期間中の大統領はフォード、カーター、レーガン、父ブッシュ、クリントン、息子ブッシュの6人。それぞれの大統領を比較して論じているところが権威の大きさを物語っている。読みどころはやはりグリーンスパンの晩節を汚したとされる90年代後半のバブル処理の部分。アジア通貨危機を契機にLTCM危機、ロシア危機などの外生的要因があったり、FRBには株式市場には介入しないという伝統的な方針があり、政治的非難を恐れたことなど理由はいろいろ書いてあるけど、議会から独立している以上、大衆の期待に応えなければならない議会とは違うスタンスで政策を決定すべきだというのが一般的な解釈なのでしょうか。本書を通じて学べるのはアメリカの経済史とFRBの意志決定における哲学。分析結果だけをそのまま鵜呑みにするのではなく損益をよく考えた上で意志決定するのがFRB流だそうです。ブラックマンデー、LTCM危機、ミレニアムブーム、9・11テロの際の意思決定に関しては議会やマスコミに叩かれていただけに「俺はこんだけ頑張ってたんだ!」っていう主張が強くて非常におもしろい(笑)。
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原著は一冊なのに翻訳になると上下巻に分かれてしまうことは多いが、本書に関しては上が回想録、下が今後の見通しなどを章立てにしたものになっており、とても読みやすい。スタン・ゲッツと共に音楽を学んだ青年時代からブラック・マンデー、議会との対立や歴代大統領の思い出(どうもブッシュ親子に対してはいい思いがないようだ)などがつづられている。FRBの基本的な政策としては、経済状況を反映して長期金利が下がったのを確認して短期金利を利下げしていくというもので、景気を刺激するために利下げを要求してくる政治家との対立には困らされることが多かったようだ。また、インフレ圧力を抑えきれなくなることを常に懸念しており、利上げ段階では念を入れて「ここまで」と思った段階+一回分の利上げを行なう■金融政策で利上げという抗生物質の投与を止める時期が早すぎると、インフレという感染症がぶりかえすリスクがあるのだIT技術により、企業が抱える不確実性が減少した。それまでは在庫を余分に抱え、従業員を余計に雇って予想外の事態や経営判断の間違いに備えていたが、このヘッジがだんだんと不要になってきた。