憲法論点教室

制作 : 曽我部真裕  赤坂幸一  新井誠  尾形健 
  • 日本評論社
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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784535518414

作品紹介・あらすじ

よくある質問への解説から、効率よく答案作成のコツをマスター。疑問を抱えたままに終わらせず、憲法への苦手意識を払拭。憲法の勉強をワンランク上のステージに導く紙上オフィス・アワー。「普通の」法科大学院生や法学部生のためのFAQ。

感想・レビュー・書評

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  • 本書は、主として「普通の」法科大学院の学生や、法科大学院を目指す学部生が誤りやすいポイント、あるいは迷いやすいポイントについて、できるだけ明快に問題点を整理し、「では、どう考えればよいか」という考え方の方向性を示してみようという意図で執筆された憲法の副読本である。
    本書の執筆者の多くは、法科大学院で憲法の講義を担当している若手の教員であり、「よくある質問」のコンパクトな解説を提供するものとなっている。
    最先端の憲法学の研究内容も反映し、優れた判例・学説のメタ解説となっている。特に、冒頭いくつかの違憲審査基準をめぐる論点の解説が、よく整理されており有益である。

  • 【今後読みたい文献】
    プロセス演習憲法第4版
    論点探究憲法
    憲法上の権利の作法
    LAW IN CONTEXT憲法
    法学セミナー2011年の駒村氏の論文
    法学教室2007年4月号から2009年3月号の憲法の解釈という論文
    安念潤司「判例で書いてもいいんですか?」中央ロージャーナル6巻2号(2009年)
    法学教室375号65ページ。
    法学セミナ「かき分け、話分け法学鍛錬術」
    蟻川つねまさ「法令を読む」法セミ2010年

    【特記事項】
    ・違憲審査基準は図式的に用いるな。きちんと権利制約の種類や個別状況を吟味せよ。
    ・目的や目的と手段の関連性も、事案の分析をよくして当てはめよ。
    ・目的と手段の関係も、その手段が何らかの目的になるなど階層構造があり、どの段階で目的をとるかがカギとなってくることもある。
    ・三段階審査論について。何事にせよ、その理論固有の話と、その提唱者たちが個別に何を言っているかは峻別すべし。
    ・長谷部たちは、猿払への回帰の危険、論証責任の視点の欠落などを理由として三段階審査論に否定的。
    ・採点実感では、比例原則を採用する場合はその理由を示せ、となっている。
    ・「適用違憲」とは、てきようされた「法令」(処分行為ではない)の違憲性を論じるものとする語句の使用法が広まっている。
    ・行政裁量に対する裁判所の適切な統制のために編み出された理論が、判断過程審査。行政の判断結果ではなくそのプロセスに、考慮不尽、他事考慮、衡量不均衡がないか審査する。
    ・そして立法裁量に関しても、それを重視する立場からそれを限定する場合まで、状況に応じて使い分け。その際に判断過程審査を用いる場合も。しかし、立法府がどの程度真摯に努力したらいいのかなど、程度が不明確であることは否めない。
    ・公共の福祉に関しては、あまり立ち入らずに「すべての個人を等しく尊重するのに必要な措置』としたうえで学者たちによる類型を4つ程度挙げて、審査基準の定立に移っていくことができる。
    ・法人の人権共有主体性について長々と論じない。団体の性質、目的、問われている権利の質、誓約の程度などを論じるように。
    ・間接的・付随的制約論は、猿払事件をきっかけに注目されたが、同判決を担当した香城敏磨最高裁調査官によてtリードされた。直接的制約=表現の内容に関する規制、間接的制約=内容中立規制とした。また間接的制約=付随的制約としているが、学説はこの両者に違いを見ている。
    ・あることが13条の幸福追求権の内容に含まれるかどうかを検討する際、「これは人格的存在として不可欠だから」などと論じるのは薄っぺらいから、判例が認めている、容貌をみだりに撮影されない権利などから類推していく帰納的論述が可能。
    ・平等審査がかんけいしているとき、目的と手段を峻別してそこに平等元原則をもちこめるが、しかしあまりそれにこだわって、平等本丸を見逃すな。また、平等で行くか、他の権利侵害という構成でいくか、両者で行くかいろんなパターンがあると思うが、場合によっては平等で行くより端的に生存権侵害など権利侵害を訴えたほうがいい場合もある。
    ・政教分離が問われる場合、すぐに目的効果基準を定立するのではなく、目的効果基準でいくべきなのか、あるいはそれ以前の段階なのかを吟味すべし。
    ・職業選択の自由において、審査の厳格どの決定の際に挙げる考慮要素は、当該事案をねんとうに置きながらも、一般的、類型的なものに留めておくべき。薬事法判決のように、当該ほうりつの律法事実に踏み込む目的の検討や他の規整手段との比較は当てはめに回すべき。
    ・司法権とは法律上の争訟を解決する権限のこと、とするのは不十分。なぜなら司法権は憲法上の概念であり、それを下部の法律上の概念で説明するのはダメ。少なくとも司法権とはこれこれを解決する権限であり、法律上の争訟とはこれこれを意味するものと解される、とするべき。そしてこのこれこれとは、事件性である。
    ・客観訴訟は、事件性が擬制されるので許されるとする佐藤説がよい。高橋説は事件性不要論。
    ・団体内部に関する訴訟で、判例は部分社会の法理を用いてそもそも法律上の争訟たりえないとしているが、学説は、これは法律上の争訟とはいえるが、いろんな理由から裁判所の審査権が及ばない、とする。
    ただし、法律上の争訟性が肯定されても団体の紀律権を尊重するという観点から審査範囲や基準が限定されることがある。
    ・試験問題で憲法上の論点を指摘するよう求められた場合、。とにかく列挙するのではなく、重要だと思うものを、説得的にその主張を展開することが大切。判例と異なる枠組みを使う場合は、なぜそうするのか、判例の判断枠組みや事実認定評価にどう問題があるのかを示すべき。判例と学説が一致していない場合は、判例に従えばいいのではなく、学説による分析も要求されているとみてよい。
    ・試験問題で、原告主張、被告主張、自説とあった場合、被告主張は簡単でいい。
    ・原告は厳格基準、被告は緩やか、自分は中間という甘ったるい答案を書くな。
    ・立法不作為の合憲性の問題と、立法不作為が国賠法上違法となるかの要件の問題は峻別すべし。

  • いかにも司法試験受験生を意識した内容。
    はしがきにもあるとおり、ロー生から寄せられた質問でよくあるものをFAQとしてまとめることを趣旨とした本です。
    なので、取り上げられるテーマも、いかにも憲法の答案作成で悩みやすい部分であって、違憲審査基準や三段階審査の話や、適用違憲・一部違憲の話などについて、全28テーマを各テーマ10ページ弱でコンパクトにまとめてある。

    こういうふうに紹介すると、試験対策としてかなり有用に思えるのだが、実際の中身は玉石混淆だと思う。
    いろんな先生が書いているので、非常に分かりやすい部分もあれば、答案作成に「間接的・付随的」には役立つのかもしれないけど、なかなか難しいものもあり、なかには論文でも書かないだろ、というようなものもあり。
    シンプルな解説と謳ってるわりには、結構高度な議論が満載なので、見た目のソフトな感じとは裏腹に、内容はハードです。

    個人的には、同志社の松本先生の執筆部分が分かりやすくてよかった。
    「当事者主張想定型の問題について」というテーマで、いかにも試験対策的なテーマも取り上げてくれてます。

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著者プロフィール

京都大学大学院法学研究科教授

「2022年 『判例プラクティス憲法〔第3版〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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