- Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
- / ISBN・EAN: 9784535552845
作品紹介・あらすじ
日本の経済論争はなぜ不毛なのか?その真因は、エコノミストの多くが、こともあろうに拠って立つべき経済学を理解していないことにある。「世間知」だけでものを言う「経済専門家」たちの誤りを、実名を挙げて喝破する。
感想・レビュー・書評
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同じ著者の『経済対立は誰が起こすのか―国際経済学の正しい使い方』の続編的著作。『経済対立...』は日米構造協議あたりの議論が中心でしたが、本書は2000年前後から2002年頃の構造改革議論をカバーしています。今回もTVにコメンテーターとして出演するエコノミストがいかに経済学を無視した感覚的な理論を展開をしているか、経済学の常識からトンデモ学説の誤謬を検証しています。経済学の基本概念を整理して、基本的な枠組みから経済現象を捉えることで、問題点を的確に把握する重要性を再認識しました。
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ゼロ金利、構造改革時代の経済議論を批判的に見た書。自分が勉強不足なので、何が正しくて何が間違いなのかは分からないが、物事を批判的に見る必要はありそうだ。
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世の中の全体経済を観察すると、デフレの不況の状態にある。これを解消する考え方に、(1)「構造改革」主義、(2)財政政策主義 (3)金融緩和主義の三つがある。
構造改革とは、市場の機能を規制の緩和、権益(レント)の排除によって、市場を自由にすることである。この自由市場を守るためには、政治力が必要になる。独占企業の独占価格を排除し、参入規制をなくすこと、政府が政府補償、保証を出来る限りなくし、市場に任せることを「政治力」を持って作り上げる必要がある。
野口はこの前提について、異論を持ってはいない。構造改革については、マクロ経済の安定、すなわち、消費者物価(CPI)の1〜2パーセントの上昇と失業率の低位安定があってこそ、構造改革は生きてくるとしている。
財政政策については、その効果を、マンデル・フレミングの理論から疑問視している。が、その効果まで否定しているものではない。
デフレは、財政の窮乏を導くことにもなる。税収は、名目経済成長×税率であるから、経済成長なき、長期デフレの状態では、税収は増えることは無い。現状、政府は、歳入歳出の一体改革を、進めているが、歳出の削減を当然の前提とし、同時に歳入の増加を認めるとことは、極めて慎重である。歳入について、極めて慎重である「主義」を財政政策主義とすれば、この考え方は、マクロ経済についての政策放棄である。
後者の歳入増加の見込みは、経済成長が、マクロ政策によって「人為的」にできることなのかどうかによって、分岐する。人為的な操作では可能であるというのが、野口の言辞だ。その方法は、金融政策と政府の政策協定によって、民間にデフレ退治の政策宣言が、必要だということを述べている。
論争の形をとっているので、異説の理解にも資することが出来ると思う。本書の巻末に、マンデル・フレミングの説明もあり、理論的な追求にも資することができる。一定の枠組みで考えることが、好きなヒト向きな経済本だろう。