- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784535586468
感想・レビュー・書評
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近年なにかと話題になり、制度改革が訴えられる生活保護について、その基本的な制度の仕組みや、当事者へのインタビューをまとめた本。著者は、元々大企業にて理系の研究職をしていた人物だが、現在はフリーのライターとして活躍している。著者が生活保護に関心を持ったのは、自身も車椅子に乗って生活する身体障害の当事者であり、まわりの障害者の友人たちの少なからぬ人が生活保護を受けて生活していたことと関係がある。著者は、震災前から生活保護を受けている(あるいは受けようとしている)友人の相談に乗ったりしていたが、震災以降、それが急増したという。そして、そうした状況について調べ、まとめ、理解を広めるためにも、記事を書かないといけないと考えた。
この本では、生活保護を受ける当事者の声なども紹介されており、その生活歴や心の中が語られていることは、それ自体貴重な情報でもあるが、しかしこの本の一つのポイントは「生活保護バッシング」についてである。
あるいは、バッシングまで行かないまでも、世間の生活保護に対する無理解や、権利としての生活保護(生存権)という考え方が浸透していないことなどが課題として取り上げられている。
僕も、仕事柄、生活保護を受けて生活している人とよく関わるが、往々にして、そうした偏見は、「部外者」(ここでは生活保護を受けていない人)だけでなく、当事者にも内面化されていたりする。だから、生活保護を受けることで肩身の狭さを感じたり、自分を責めたりするし、それによって余計に社会参加が遠のいてしまう。そうしたことは珍しくない。
本書では、こうしたバッシングや偏見、そしてそれに伴って保護基準の引き下げが行われてきた状況なども解説している。
正直、現在の日本社会において、生活保護について否定的な言説が生じるのを完全に食い止めることができるかどうか考えると、絶望的な気持ちになるのだが、それでも世論に対して、一石でも(二石でも)、投じるような本書の意義は大きいだろう。
(本書の書籍化の元になったダイヤモンド・オンラインでの連載は、2017年10月現在も続いており、続編が発売される日も遠くないだろう)
ところで、どうでもいいことを一つ書くと、「生活保護のリアル」という名前で連載していたのが、なぜ「生活保護リアル」という名前で書籍化したのか、よく理解できない。語呂が悪いし、言葉の意味もわからない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
あまりなじみのなかった生活保護がよくわかった。
精神疾患などで働きたくても働けない人はいる。
そういう人にとって、生活保護は命綱。
憲法でも保障されている。
しかし実情をよく知らない(私もそうだった)人間に叩かれがちな生活保護を、自身車椅子生活の著者が、わかりやすく伝えてくれる。
根底には、当時の安倍政権をはじめとする、政治への怒りがある。 -
生活保護を受けるための条件を詳細に説明している。
また、受ける側、役所側、それぞれからの実例を挙げている。
これらから生活保護の実態がわかるように構成されている。
現場の話を見るほど読んでいて辛くなる。あれほどマスコミに叩かれた芸能人も、実際は違反は無かったなどの話もあった。
生活保護費の削減に、あれほど煽って来たマスコミは、やはり信用ならないな、と痛感させられた一冊。 -
生活保護の実態を、丹念な取材で描いていきます。
不正受給や、受給者の生活ぶりのバッシングばかりがクローズアップされていますが、実態はかなり違うようです。
国の取り組みにも問題がありますが、私たちの認識も変える必要があるでしょう。 -
生活保護受給者の実態だけではなく、ケースワーカーの立場や制度そのものへの解説もある。
しかし厳しいな。自分も一歩間違えば、転落するかも知れないという恐怖は常につきまとう。 -
生活保護の生々しい実態が書かれている。現実を知るにはいい本
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とりあえず生活保護=不正受給、のイメージはぬぐえた本。
生活保護の仕組み自体なんかもっとよくならないのかなあ。
ベーシックインカムとまではいかなくても、・・うーん、考えてみよう。 -
ダイヤモンド連載の生活保護該当者及びシステムのリポート。不正受給者はわずかであり、実際の声を拾い上げようとしている。出てくる人物たちは、事故や犯罪に関わった人たち、あるいは障害や母子家庭などの不可抗力と思われる人が多いとする。生活保護だけでは、自立するだけの貯金ができず、次のステップの資金がないためぎりぎりの生活のままで過ごしてしまう可能性が高いとしている。そのため、経済の低迷に伴い、生活保護受給者あるいはその該当者の数だけが増えて行くことになる。
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生活保護の実態を知るのに最適な一冊か?
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生活保護が最低の生活を守る制度であり、人生再チャレンジのきっかけとなればいいな。