不安のありか

著者 :
  • 日本評論社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784535983915

作品紹介・あらすじ

誰もがもつ不安やその病である不安症について、実際の臨床ケースや映画・ドラマなどのフィクションを題材に解説。木皿泉氏推薦!

感想・レビュー・書評

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  • 医学部分館2階書架 : WM460/HIR : https://opac.lib.kagawa-u.ac.jp/opac/search?barcode=3410169451

  •  さすが、作詞も手掛ける著者だけに、文章も平易で分かりやすく、サクサクと読むことができる。専門的な話から、臨床体験を交えた実話まで、話題が幅広く多岐にわたるのも面白い。

     著者は映画好き?『ジョーズ』『エイリアン』を例に「疑似恐怖」について語ったり、身体言語について『結婚しない女』を出してきたり。ベタな王道ハリウッド映画から、古き名画まで、引用する作品も範囲が広い。映画は人の人生を描いたものでもあり、こうした人の精神疾患の例として引くにも良い題材ということがよくわかる。
     体験談では、ふんぞり返って話を聞いてて患者を怒らせたなんて、ちょっと笑える話も出て来て楽しい。

     が、総じて、心を病む前の人、あるいは心を病んだ人の周辺の人が読むに適した内容。いままさに不安を抱える人、病んだ人が読んで、心のよりどころ、脱出の手立てを掴めるようなものではないような気がする。

    「ニュース番組の娯楽化」という章では、久米宏が『ニュース・ステーション』のメインキャスターとなった時が、ニュース番組の娯楽化の始まりだったと、面白い説も展開。以降、我々が世界の悲劇にブラウン管を通じて接しても、“疑似恐怖”としか感じていないと。 まぁ、しかしそれはリアルタイムで鮮明な動画となったという程度の差こそあれ、昔の人が物語や童話で、世の常を学んで来たのと同じことだとは思う。
    「他人の悲劇を疑似恐怖として体験しているという、認めたくない事実を認めないわけにはいきません。」
    と言うほど、悲観することでもないという気がする。

     人の強い弱いも、現れた症状、あるいは結果だけでは語れないとする指摘も、なるほど。著者は「人の強さ、弱さというのは、それほど単純には判断できない」と言う。決定的な症状(たとえば死に至る結果)の前に、「心身のエネルギーが枯渇した徴候としてうつ病を発症していたなら、助けられたかもしれない」と医者として残念に思うと。
     そんな点で、男女の性差も必要なのではと思うところ。

    “女性の鋭敏さを弱さととらえることもできるかもしれませんが、これを「他者への救助信号を発しやすい」あるいは「他者からの援助を引き出しやすい」と解釈することもできると思います。そうすると、逆に、男性よりも女性のほうが生体として生き延びる力をもっているようにも感じられます。”

     なんでもジェンダーフリーととやかく言ううなと。男と女、ちゃんとそれぞれ役割ってものがあるんだからと。さらには、昨今うるさいxxxハラスメントについても、チラと書いてある。

    「言葉は、時に、人々の物事のとらえ方(視点)をコントロールすることがあります。そして、その視点が注目されると、それにつれて、関連した言葉が増殖することがあります。
    ハラスメント(harassment)は、そういう言葉のひとつです。」

     と記したその後に、

    「子どものうちから、心の「かすり傷」を恐れずに人と接して、「かすり傷」の癒し方を学ぶことが必要であるように感じています。」

     ってのは「xxハラ」とかで、あまり過保護にし過ぎるなってことも言ってたりするのかな? まぁ、これは読んでみた私がそうだそうだ!と自分勝手に解釈したに過ぎない部分かもしれないけど。

     いやいや、なかなか豊富な話題満載の楽しい一冊でした。

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著者プロフィール

国際医療福祉大学三田病院精神科 病院教授

「2019年 『不安のありか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

平島奈津子の作品

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