- Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560028933
作品紹介・あらすじ
キリストの遺体を包んだ布として崇められてきた「トリノ聖骸布」は、1988年の科学的年代測定により後代の偽物と断定された。では誰が、どうやって、何のためにこの「奇跡の布」を作ったのか。6年にわたる調査の結果、ついに歴史の謎が解かれる。
感想・レビュー・書評
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キリストの遺体を包み、その姿が浮び出たと言われているのがトリノの聖ヨハネ大聖堂に保存されている聖骸布だ。1988年に炭素年代測定が行われこの布の制作年代は95%の確率で1260年から1390年のものだと鑑定された。以上・・・
本書で挙げられている謎は実はここから話が始まる。聖骸布が偽物だとして誰がどうやって作成したのか。聖骸布の歴史は意外と浅く十四世紀後半にフランスにこつ然と現れた。フランスの小貴族ド・シャルネー家が来歴を明らかにせず展示したのだが当時フランス中に聖遺物が氾濫した時期だったらしい。15世紀にサヴォイア王家に譲り渡されそのままイタリア統一まで引き継がれて行く。まず聖骸布が本物だとしたらどうやって像が布に移ったのか?奇跡だ。以上・・・
聖骸布は普通に見ても人の姿ははっきりしない、しかし写真のネガを見ると詳細がはっきりする。また単純に魚拓ならぬ人拓をとったとしても聖骸布と同じ像にはならない。像は布に対してほぼ平行に投影されているのだ。これまでに聖骸布のレプリカを作ろうと言う試みが数多く失敗してきたのは立体から平面に転写しようとするものだった。
ここで作者のアイデアはそのものズバリ、カメラで印画したということだ。当時すでにピンホール・カメラの原理は知られており、感光材自体も知られていたが定着する方法は知られていなかった。著者たちはもし当時カメラと現像の原理が知られていればと言う前提で立体像から平面への転写に成功する。布の観察の結果、像は絵の具などは使われておらず表だけに現れ、裏には出てこないこれについてはあぶり出しと言うアイデアで一応説明にはなっている。
では誰が?と言うところでルネサンスの生んだ天才、レオナルド・ダ・ヴィンチが登場する。確かにダ・ヴィンチに出来なければ他の誰にできるのか。しかも聖骸布の顔はダ・ヴィンチが自分の顔を元にして作ったとして、これも「最後の晩餐」にこそっと自画像が入ってたり、「モナ・リザ」も自画像が下絵になってると言う説を持ってきたりと、なるほどそうかと思わせるものはある。しかし本書の明らかな欠陥は仮定に仮定を重ねるも何も証明していないところで、これでは雑誌ムーの特集や少年マガジンのMMRと大差はない。シオン修道会、テンプル騎士団、ダ・ヴィンチとくればダ・ヴィンチコードが思い出されるが、何とこの映画にもこっそり出演してるあたり元ネタにはなったのだろう、やはり面白いアイデアでは有るのだが。
ルネサンスのころは錬金術と科学は表裏一体だったというのは良しとしても、ルネサンス自体がオカルトと切っても切りはなせないとまで言うのはどうだろう。例えばボチッチェリの「ヴィーナスの誕生」を本書ではオカルトの護符として紹介している。一方「一四一七年、その一冊がすべてを変えた」では原子論が発展するきっかけとなった唯物論と無神論を説いたギリシャの詩人ルクレティウスの「物事の本質について」に描かれている詩をオマージュにしたのが「ヴィーナスの誕生」で有ると紹介している。同じものを見ているのに世界観はほぼ180度近く違う。ルネサンスというのはそれくらい興味深い時代でその中でもダ・ヴィンチの存在は飛び抜けている。良いアイデアなんだけどなあ・・・。 -
聖骸布の謎を追う!これは神の起こした奇跡なのか?それともヒトの作り出したものなのか?
ダヴィンチが出てきます。宗教でなく、文化としてキリスト教を見ている感じ。