- Amazon.co.jp ・本 (577ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560046036
作品紹介・あらすじ
円卓の騎士ランスロと王姫の恋が波瀾を呼びやがて一国の命運を決する華麗にして悲壮な「アーサー王の死」、聖母と純な軽業師の心暖まるふれあいを描いた「聖母の軽業師」、エディプス伝説の中世版ともいえる「教皇グレゴリウス伝」など、人びとの息遣いが感じられる奇蹟と愛の物語10篇を収める。
感想・レビュー・書評
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13世紀フランスの散文ロマンス、流布本三部作の3つ目、フランス版「アーサー王の死」の全訳を収録。アーサリアンにはこれだけで買いだ!(マロリーの全訳が出るまでは、こっち読むしかなかったのよ)<br />
作者不詳のフランス版「アーサー王の死」は「聖杯の探索」のラストシーンからスタート。ぜひ「探索」とあわせて読みたい。ボオールが帰還して聖杯の探索が終了すると、ランスロは再びグニエーヴルの元に戻ってしまう。幕間劇のようにエスカロの乙女の悲劇、毒林檎事件が起こりグニエーヴルの人気の失落、騎士たちの不審、モルドレの暗躍でグニエーヴルとランスロの関係が暴露され、アーサー王国崩壊が始まる。怒涛の展開と諸行無常。<br />
フランス版「アーサー王の死」はマロリーの直接のもとネタでもあるので、大筋はマロリーと同じだが、マロリーによりも幻想性が強く、ファンタジックに感じる。(マロリーはあえて幻想性を排除しようとしていたように思うが)<br />
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「アーサー王の死」以外に10篇の他の中世フランスの作品も収録されている。短編小説程度の長さの「小樽の騎士」がお勧め。とんでもない悪党騎士が改悛する話なのだが、この騎士の悪党ぶりがすごいです。強盗、殺人、強姦、神聖冒涜何でもあり。ピカレスク小説みたいで大変おもしろかった。「聖母の軽業師」も素直にいい話。部分ですがクラリの「コンスタンチノープル遠征記」(筑摩から全訳出てます)もおもしろい。<br />
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※フランス流布本系は「散文ランスロ」「聖杯の探索」「アーサー王の死」の三部作の場合と、「メルラン」「聖杯の由来」を加えて五部作という場合もあります。詳細をみるコメント0件をすべて表示