- Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560058336
作品紹介・あらすじ
「誰であろうが説得してしまう術」として知られるレトリックとは、どのようなものか?本書は、いにしえの訴訟記録や文学作品のほか、二十世紀の政治家の弁論や宣伝広告においてのコピーなどからも具体的な事例を拾い、ギリシア時代から育まれてきたレトリックの歴史と仕組みを、わかりやすく解説する。
感想・レビュー・書評
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この本の冒頭で「コラクスの両刀論法(ジレンマ)」という逸話が紹介されている。ティシアスという人物が教師コラクスにレトリックを学んだ。「コラクス先生、先生は私に何を教えてくださると約束して下さったのでしたかな」「誰であろうが説得してしまう術じゃ」。それに対してティシアスは、「そうでしたな。そうすると、もし先生が私にその術をちゃんと教えて下さったのであれば、(私は誰でも説得できる能力を身につけているわけですから)謝礼金を受け取らないように先生を説得することもできるわけですよね。反対に、もし先生がちゃんと教えて下さらなかったのであれば、約束不履行ということになり、この場合はもう私には先生にお金をお支払いせねばならない理由はなくなってしまうわけですな」という言う。これに対してコラクスも似たような反論を行う。このやりとりは裁判の中で行われており、判事たちはあきれて「この師にしてこの弟子あり」と述べるにとどまった。という話。
レトリックというと、僕は文章の修辞技法というイメージが強かった。この本では、文彩、論法と説得という点でレトリックの解説が行われている。先に挙げた逸話は、文彩というよりも論法の側面が中心である。この本であげられている文彩や論法は、無意識ながら実際に自分が使っているものが非常に多い。だからこそ、適したレトリックを適した場面で使用するには、きちんとレトリックを学んでおく必要があるのではないだろうか。と、この本を読んで感じた。ただ、レトリックを学ぶための本としては、この本は難しいというか、整理されていない印象を受けた。読み物としては面白いので、レトリックへの関心を深めるという意味では、この本を読んだことはとてもプラスになったと思う。 -
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