博物館学への招待 (文庫クセジュ 849)

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (186ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560058497

作品紹介・あらすじ

芸術作品や歴史的遺物が、展示され、保存されている空間。すなわち、博物館の成り立ちについて、本書は面白いエピソードを織りまぜて概説しつつ、博物館学の基礎知識をわかりやすく紹介してゆく。フランスの名誉学芸員による、記念碑的名著。巻末には、「欧米の博物館・美術館案内」を付した。

感想・レビュー・書評

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  • ふと博物館について知りたくなったので読んでみた。

    博物館について、主に西洋における歴史や建築、内装、資料の保存、さらに教育的機能までが、一通り概説されている。これを読んでから博物館に行くと、少しは楽しみ方が増えるだろう。ただ原著は1971年に書かれたもので、フランスにおける博物館を念頭に置いていることもあり、現代における博物館との違いが散見される。しかし、そこからも博物館の変遷を感じ取ることができるので、それもまた面白い。

    例えば、本書の中で子供の教育のために体験可能な展示を増やすべきだと述べられている。自分は子供の頃、よく博物館に連れて行ってもらったけれど、今の博物館には子供向けの解説文が添えられた体験型の展示が多いように思う。土器の破片をパズルのように組み合わせるものとか(もちろんレプリカ)、スイッチを押すと地図上のランプが点いたりとか。科学博物館でも、実際に地震の揺れを体験するものなどがあった。

    そういった体験型の展示は悪いとは思わないのだけれど、個人的には良いとも思わない。子供の頃にそういうのを見ると、子供じみた展示だなぁ、と冷めてみていたものだった。それを今になって考えてみると、体験型の展示は得てして理解をもたらさないということに原因があるように思う。むしろそれらは知的に見せかけた遊具になっている。恐らくは、まず子供に興味をもたせなければならないという考えがあるのだろう。それに関しては、確かにその通りである。興味を持たなければ、学ぼうという子供も現れないとは思う。

    しかし博物館は興味をもたせるだけでいいのだろうか。博物館に来る子供の中には、校外学習でいやいや来る子供もいれば、好きで来る子供もいる。前者に対しては興味を持ってもらうことに腐心すべきだが、後者に対してはむしろ大人の実力というものを大いに見せつける必要があるのではないだろうか。それは別に長い解説文を書けというのではない。展示を数時間見て回るだけで全てを覚えるような子供など、まずいない。そうではなく、そこに広い世界があることを感じさせるだけでいい。それが子供にとっての目標になるはずだ。

    そしてもう一つ、博物館の教育的な面で不足があるとすれば、それは生物学的な教育ではないだろうか。大抵の科学博物館、あるいは自然史博物館では、生物学的な展示と言えば膨大な標本の類に言い訳程度の生きた動物を付け加えて展示をしているくらいで、動物園を含めても、それらがカバーしているのはせいぜい分類学、生態学、進化学、動物行動学くらいだろう。だが現代の生物学をリードしているのは、主に分子細胞生物学である。分子細胞生物学の分厚い教科書は、ほとんどがこの半世紀で発見されたものだ。しかし博物館における扱いは皆無といっていい。ロンドンの自然史博物館には、古い顕微鏡が並べられていたり、脳のホムンクルスが展示されていたりしたが、あれでも未だ足りないと感じるのに、日本にはそのような博物館があることさえ聞いたことがない。

    その原因は、博物館の閉鎖性にあると思われる。まず分子細胞生物学に精通した学芸員が養成されていない。それに展示品を収集するルートもない。だが見せるものが無い訳はない。大学のオープンキャンパスに行けば、生きている細胞が顕微鏡の下にいたり、大腸菌が緑色に光っていたり、発生過程のニワトリの卵の中を覗けたりするのである。それらを広く一般の人々に知ってもらうための存在が博物館のはずである。そのためには国も動くべきで、細胞の培養が可能な設備を整えるために補助金を出したり、生命科学系の学生が学芸員になりやすい環境を作ったりする必要があるだろう。そのような博物館ができれば、ゲノムバンクプロジェクトや再生医療における生命倫理的な課題などの議論も広がるのではないだろうか。

  • 難しそうな部分は流し読みでしたが・・・
    この本を読むと博物館に行きたくなってくる。
    あえて何回か行ったことのあるところにまた行きたい。
    きっと博物館のたくさんの工夫に気づく・・・と思う。

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