ミス・ブロウディの青春 (白水Uブックス 203 海外小説永遠の本棚)

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  • Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560072035

作品紹介・あらすじ

いまが私の人生の最良の時なのです

 一九三〇年代のエディンバラ、女子学園の教師ジーン・ブロウディはお気に入りの生徒を集め、彼女たちを「一流中の一流」にするための独自の教育を授けた。数学が得意で癇癪持ちのモニカ、セックス・アピールで有名なローズ、体操に夢中のユーニス、発音がきれいで空想好きなサンディ、美人で女優志望のジェニー、いじめられっ子のメアリー。少女たちはブロウディ先生の薫陶を受け、進歩的な思想、芸術の教養から肌の手入れ法や美しい歩き方、先生自身の恋愛体験まで、あらゆることを教わった。先生を中心に団結した〈ブロウディ組〉の六人は、親衛隊として、先生の追放を画策する校長に抵抗したが、その中からひとりの裏切り者が……。圧倒的な個性と情熱で生徒を導く女性教師と、彼女に魅了されながらもやがてその支配を脱していく少女たちを、巧みな構成で描いた名作。

感想・レビュー・書評

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  • 白水社のメールマガジンか、本に挟まっていた広告かで、
    チラリと目にして、面白そう!となって、読んでみた。

    舞台は1930年のエディンバラ。

    女子学園の美しい教師ジーン・ブロウディは
    お気に入りの生徒を集め、
    『一流中の一流(クレーム・ド・ラ・クレーム)』
    にする為、独自の教育をはじめるが、
    そのうちの一人が実は…

    このブロウディ組(セット)の関係性を、
    ファシズム政権やエディンバラの宗教改革の歴史などと
    引きくらべたり、関連を導き出したり、
    パロディや隠喩を読み取れる
    幅広い知識と、鋭い洞察力があれば、
    本作品よりさらなる深淵なメッセージを読み取ることが出来、
    より実りある読書体験となることでしょう。
    (参考文献は訳者後書き)

    わたくしは、多分一番表っかわの部分の
    鑑賞しか出来ていない気がたまらなくしておりますが、
    それでも十分に楽しみました。

    自分が出来なかったことを誰かかわりにって、
    でも思った通りには上手くいかないのよね。

    他の人の人生まで自分のものにしようとしたらいけないよ。
    (このことは星一徹君、オスカルの父上にもしっかり聞いてほしいの。)

    読了後、BBの本屋さんをブラブラ、
    あれれ?違う出版社(河出書房新社)からも
    新しく出ていた。

    今、スパークが熱い、のか?(詳細は不明)

    でも題名だけで言えば、
    河出書房新社の『ブロディ先生の青春』よりも、
    白水社の『ミス・ブロウディの青春』のほうが、
    感じが出ている。

    でもミスの表記云々で河出書房新社の方は
    ちょっと気を遣ったのかな?

    また、河出書房新社の方は立ち読みしかしてないのに
    色々言って申し訳ないけれど、
    帯に「好きだから云々」とあったけれど、
    それも、そんな単純な感じでは無いの、よ!(たぶん)

  • 自分は特別な存在だと信じていても失敗や後悔はある。先生になったら過去の反省を生徒に伝えれば特別な女性なるはずだ!と思う気持ちはわからないでもない。似たような母親もいるけれど結局は別人格。上手くいかないょ。それでも先生は老年になっても生徒との繋がりもあるし憧れられてもいた。先生冥利には尽きる人生だったのではないかな? 読んでいる時よりも感想を書いている今になって案外面白い作品だったと思っている。ミュリエル・スパークは他の作品も読みたい。

  • 青春は幾つになっても・・・
    「ミス・ブロウディの青春」を6/24から6/26にかけて読んだ。最近は平日は疲れて眠くて、休日にまとめて、ということになっている・・・
    スコットランド、エディンバラの女学校の変わり者先生ブロウディは、ブロウディ・セットと呼ばれることになるお気に入りの生徒を5人くらい周りに作っている。「青春」とはこの生徒たちの「青春」なのかと思いきや、タイトル通り、先生の「青春」なのだ、と読み進めるほどにわかってくる。その筋と、セットの生徒たちが大人になってからのそれぞれのそれからがパッチワークみたいに(この比喩合ってるのか?)織り重なっていく。
    まずは、先生がエディンバラの下町?に連れて行き、職業安定所の脇を通る場面から。あ、そうそう、時代設定は大戦間の恐慌後。
     ゆっくりと、けいれんするように動く列が生きもののようにふるえるのが見えるように思えた。その列が一匹の竜の身体で、この町にいる権利はないのにどうしても出て行かず、といって殺そうとしても死なない、そんなふうに見える。
    (p59)
    続いて後日談の方から。女優としてまあまの成功をおさめていた40歳近いジェニーはローマで雨宿り中、同じく雨宿りしていた「あまりよくは知らぬ」(見知らぬではない?)男と奇妙な体験をする。
     その感じというのは、肉体的とも精神的とも言いきれぬ、すべてを含むような感覚で、ただひとつ言えるのは、そこには、彼女が十一歳の時以来忘れていた罪のないよろこびがあった、ということである。
     この短いハプニングは、おどろきと、どんなものにも可能性がかくされているんだわ。という気持ちで彼女をいっぱいにするのだった。
    (p122)
    ラスト近くからも一箇所。
     先生が亡くなったあと、先生の名前と思い出は、夏のつばめのように口から口へと飛び交っていたが、冬になるとどこかへ飛んでしまった。
    (p191)
    「直喩の勝利!」みたいな味わい深い一文・・・
    先生の「変わり者」とセットの一人サンディの「裏切り」もこの小説の読みどころの一つなんだけど、今回はそっちにあんまり頭振れなかったような気が。前者は、先生はムッソリーニの信奉者で黒シャツ隊の写真なんかも持っていたけど、別に生徒たちにそういう教育を教え込んでいたということでもなし。この時代ファシズム側にも一定の理解とあるところまでの共感者はいたみたい。そしてファシズム側にもなんらかの可能性はあったのではないか。前に読んだ「日の名残り」でもそう思ったけど。
    後者はもっと読み込んでないけど、一番セットの中で中心に描かれているサンディが最終的に「裏切る」のだからそこは読み落としてはいけないところなのかも(汗)。ただ、死の直前になってようやく先生がサンディの「裏切り」を直感する、というところは巧みだなあ、とは思った。

    この作品は1969年に映画化もされている。そして木村氏(短編集も訳した)による新訳もあるみたい。そっちは「ブロディ」になっている。
    (2018 07/01)

  • 文学

  • キリスト教文明の人々は、森羅万象の中にキリスト教的な摂理を見いだせたときに、したりと膝を打つ。当たり前といえばあまりに当たり前のことを納得させられる作品。(本作の場合、神の摂理を人が代行した時、とばっちりに見舞われるという部分が、神の摂理)。
    50年も前に書かれたものとは思えぬポップな小説で、イギリスの小説でこういう軽妙な印象を受けたことは珍しい。内容まで軽くはないので、その点の心配は無用。
    ロンドンに対するエジンバラの立ち位置や、宗教改革の歴史などに通じていると、より一層ニンマリしながら読めるのだろうという予感はする。

  • 本屋さんで、新訳とこの旧訳の最初の1ページを読み比べて、こなれた印象の新訳に比べて、旧訳の、おそらく後ろから訳しているであろう、一文長めな感じの文体が、古い小説には合ってるんじゃないかという気がして、こちらにしてみた。
    作品世界も、ストーリーも、けっこう好みなんだけど、細かいところがちょっと読みづらい印象。そりゃあしかたないよな。40年ほどの間に、日本に入ってくる(英語そのものも含めた)英語圏の情報量も格段に増え、日本語そのものも当時とは変化してるわけだから。
    んで、ちょっと後悔して、さっき本屋さんで、新訳の最後の一行を立ち読みしてみた。そしたら、うーん、旧訳は旧訳でよかったのかもしれない、と思い直した。
    だって、人生の最良のときは、必ずしも光り輝いているとはかぎらないと思うから。

  • 書籍についてこういった公開の場に書くと、身近なところからクレームが入るので、読後記はこちらに書きました。

    http://www.rockfield.net/wordpress/?p=5909

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著者プロフィール

1918年、エディンバラ生まれ。長篇に『ブロディ先生の青春』、ブッカー賞候補の本書など。英国文学賞ほか受賞。大英帝国勲章を受章。2006年、逝去。タイムズ紙の「戦後、偉大な英国人作家50人」に選出。

「2016年 『あなたの自伝、お書きします』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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