- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560073179
感想・レビュー・書評
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残念ながら生で土方巽の舞踏を見る機会はなかったけれど(年齢的にもさすがに難しかった)映像作品はいくつか見ました。もうかなり昔だけど友人のやってたアングラ劇団を手伝っていた頃に公演場所になったのがたまたま、まだ当時は目黒にあったアスベスト館で、そこで私も舞台に立ったことがあります。土方はとっくに亡くなっていたけど、奥様の元藤さんはまだご健在でした。
いわゆる暗黒舞踏の系譜は今も続いているけれど、やはり土方巽は唯一無二だと感じる。あの独特の動き。単に白塗りもしくは金粉まみれでマッチョな人たちが狂乱群舞しているのとは一線を画している。あの、静物のような無機質感。それでいて圧倒的な存在感。
文章は初めて読みましたが、あの舞踊の印象そのままの文章でした。自伝(回想)とも小説ともつかない独白が延々続くだけなのだけど、まるで自動筆記のような、日本語としては間違っていないのだけどどこかちぐはぐで、それでいて意味がわからないかというとなんでかわかる、という不思議な文体。シュールレアリズムもしくはマジックリアリズムとも受け取れるけど、ただ単に、土方の眼には世界がそのように見えていただけなんでしょう。生きている人間も死んでいる人間も植物も動物も無機物もいっしょくた。
身体でも肉体でもなく「からだ」という言葉が頻繁に使われているのだけど、なにかこう、自分自身ではなくちょっとよそよそしい「いれもの」みたいなニュアンスを感じて独特。ときどき、踊る土方の姿が浮かぶ。文章を読みながら以前見た「風の景色」という映画の映像が時々脳内で再生されました。
解説は澁澤龍彦。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
976夜
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歪んでいる。彼の舞踏がそのまま文章になったよう。