病める舞姫 (白水Uブックス 1017)

著者 :
  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560073179

感想・レビュー・書評

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  • 残念ながら生で土方巽の舞踏を見る機会はなかったけれど(年齢的にもさすがに難しかった)映像作品はいくつか見ました。もうかなり昔だけど友人のやってたアングラ劇団を手伝っていた頃に公演場所になったのがたまたま、まだ当時は目黒にあったアスベスト館で、そこで私も舞台に立ったことがあります。土方はとっくに亡くなっていたけど、奥様の元藤さんはまだご健在でした。

    いわゆる暗黒舞踏の系譜は今も続いているけれど、やはり土方巽は唯一無二だと感じる。あの独特の動き。単に白塗りもしくは金粉まみれでマッチョな人たちが狂乱群舞しているのとは一線を画している。あの、静物のような無機質感。それでいて圧倒的な存在感。

    文章は初めて読みましたが、あの舞踊の印象そのままの文章でした。自伝(回想)とも小説ともつかない独白が延々続くだけなのだけど、まるで自動筆記のような、日本語としては間違っていないのだけどどこかちぐはぐで、それでいて意味がわからないかというとなんでかわかる、という不思議な文体。シュールレアリズムもしくはマジックリアリズムとも受け取れるけど、ただ単に、土方の眼には世界がそのように見えていただけなんでしょう。生きている人間も死んでいる人間も植物も動物も無機物もいっしょくた。

    身体でも肉体でもなく「からだ」という言葉が頻繁に使われているのだけど、なにかこう、自分自身ではなくちょっとよそよそしい「いれもの」みたいなニュアンスを感じて独特。ときどき、踊る土方の姿が浮かぶ。文章を読みながら以前見た「風の景色」という映画の映像が時々脳内で再生されました。

    解説は澁澤龍彦。

  • [ 内容 ]
    暗黒舞踏の創始者として熱狂的な支持を集めた、今は亡き土方巽の伝説的な舞台の数々を生み出す原風景となった少年時代を、幻想的なタッチで著した舞姫物語。
    本書は、著者の豊かな感性が屈曲と変節を重ねながら自らの肉体と同化していく様を、記憶の彼岸に佇んでいた舞台の感動とともに甦らせる。

    [ 目次 ]


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  • 976夜

  • 歪んでいる。彼の舞踏がそのまま文章になったよう。

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著者プロフィール

1928年生まれ、1986年没。秋田生まれ。舞踏家。1959年、「全日本芸術舞踊協会・第6回新人舞踊公演で「禁色」を発表。以後、前衛的な舞踊作品を発表、日本のダンスシーン、演劇シーンに多大な影響を与える。

「2016年 『土方巽全集 2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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