デザインについて:バウハウスから生まれたものづくり

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (158ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560084816

作品紹介・あらすじ

アーティストの心得を説く

 アニ・アルバース(1899‐1994)は、20世紀のテキスタイル、工業デザイン、版画、ジュエリーの分野で活躍したアーティスト・教師。ドイツのバウハウスで出会った夫のジョセフ・アルバースとアメリカに亡命し、ブラックマウンテン・カレッジやイェール大学などでモダニズムのデザイン教育に携わった。その作品はニューヨーク近代美術館をはじめ有名な美術館に収蔵され、日本でもユニクロのコラボTシャツでその名を轟かせている。
 本書は、アニ・アルバースによるデザイン哲学が語られている、珠玉のエッセイ集だ。素材そのものからもたらされる機能美を称えつつも、ものづくりに機械化がすすむ時代において工芸家が求められる心得を説く──バウハウスの精神をもとに、無名性、アートという不変な存在、いろいろな化学繊維の誕生、美術館の建築への関わり、中南米の織物、ジュエリーづくり、触覚の大切さなどを記すアニの文章には、デザインについて普遍的な問題を読者と共有していこうとするシンプルな情熱が貫かれている。そのメッセージは、21世紀初頭の「工学化」した現代においても魅力的だ。

感想・レビュー・書評

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  • 自然の中に行って木々に触れたい、海や川に行って足を浸したいと思った。
    感触の話が好き。
    私達が手にするのはいつも人の手が介入した「完成品」で、そこに虚しさ、つまらなさを感じていたのかも。
    家に飾ってある花も良いけど、自然の中で誰の手も介入していない花を見たくなった。

    自分自身が流行りの服に惹かれない理由が分かったかもしれない。
    流行りの服より自分の好きな服が私にとっては最高。
    対象は変わっていくけど、自分の中の好き!こそが不変なのではないかと思っている。


  • 読んだ時に抱えていた辛さを解いとくれた。
    考える、行き詰まる、その先はないと思っていたけれど、ただ目の前の素材に向き合うこと、触ってみること、そうしよう、そう思った。

  • 本文は120頁程度で組みもゆったりなのでサクサク読める。途中平織に関する専門的な分析が出てくるものの、その他はあらゆる手仕事に通ずる理念が、やわらかい語り口でちりばめられていて読みやすい。

    全編を通して主張していることがヴィクター・パパネックにそっくり……というか時期的にはアニ・アルバースのほうが早いのでこちらが母型か。欲望のままに大量消費することが許された(ように見える)“幻の時代”を迎えるにあたって、デザインが果たすべき役割について真摯に見つめたプロセスが収められている。

    アニ・アルバースはバウハウスに学生として在校したものの、当時は女性ということでテキスタイルしか学ぶことができなかったらしい。校長グロピウスは、男性は三次元的思考、女性は二次元的思考に向いていると決めつけていたらしい。時代が時代だったといえばそれまで。あらゆる意味で優性主義が支配していたんだろう

    彼女の警句は、半世紀の時を超えていまだにそのまま通用してしまう。いつだって正論は時代の大波にさらわれてしまうけれど、そこから世界中へと細々とつながっていく経脈も捨てたものではない。

    日々の選択だけが、世界を形づくる社会。「消費行動は、すでに投票行動」と言ったのは三宅洋平。スマホから目をあげて、アーバンな現実とネイチャーの神秘の両方を直視して、ひたすら手を動かさなければならない。

    p.47
    「私たちは世界を建設するよりも世界の知識や物をどん欲にかき集めてばかりいます。

    状況への生産的な対処法をもっと早くから学んだほうがいいはずです。状況を支配できなくても、状況に導かれることはできるのだから。状況に限界があることは私たちの独創性や柔軟性を活かすチャンスであって、もう駄目だとあきらめて、限界にただ留まってしまっていては本当に駄目になります。

    危機的な情勢では、柔軟な対応が必要です。私たちの教育は人間が何か行うために備えることよりも、ただ知識重視でかえって知識が増え過ぎて自分の役目を見失い、ただ高い教育を受けることが目的になっています。知識量ばかり誇っていて、過去のことなど反射した光でしかないことを忘れています」

    p.47
    「アート制作は心を強くします。誰も到達したことがない地へ進み続ける心の強さ。人は孤独で、自分の行動に責任があります。孤独な状態は内面を突きつめる精神的な時間で、意識と自分自身との闘いです。

    自己決断を学びながら、人間は独立していきます。やろうとすることにとやかく疑問を投げかける権限など誰にもないのです」

    p.127
    「ものを少なく持つという命題は、デザイナーや工芸家にとって基本となる新しい責務であり、いろんな用途に使えるものをデザインすることを示唆しています。デザイナーや工芸家の姿勢は、自分の趣味と才能を披露しないで静かに役立つことへと変わらなくてはなりません。特化したものよりも、一般が使えるものに。また短命な流行を追いかける代わりに、より永続するものに注目しましょう。絶え間ない変化にぶれないことは、必ずしも停滞や倦怠状態を意味するものではないのです。気分や流行を超越するという意味です。この安定感は、限定感や貧弱さとは違います。つかのまの権益など超越するデザインのことです。純粋なかたちは決して飽きられません。誰一人として大自然に飽きないのと同じです。過剰な装飾やマンネリに陥ることなく、大自然の素晴らしさを吸収しましょう。過剰な装飾やマンネリはデザインをかえってつまらなくします。大自然の巧みな創造に驚きながら、その深遠を感じて、私たちの表現言語に置き換えましょう。

    派手で見栄えがいい、興奮するものを作って売るのは簡単ですが、いずれ風化して宴の跡のような空虚さだけを残します。長い間残ったものや残るものは、ちょっとした流行には決して従わないはずですから。優れた作品は、センスが光る象徴として、儚い価値しかないガラクタに埋もれず、生き残ってきました。

    大量消費生産でめまぐるしく変わる一時の需要や工業の流行に幻惑されず、過小評価されやすい状況にも左右されることなく、心の根底に抱いている真実の価値観に向かって、デザインしましょう」

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784560084816

  • ベラのルゴシは死んだのさ(莫迦言ってます)

    白水社
    http://www.hakusuisha.co.jp/book/b212991.html

    Bauhaus - Bela Lugosi's Dead - YouTube
    https://www.youtube.com/watch?v=zq7xyjU-jsU

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著者プロフィール

1899~1994年。テキスタイル・アーティスト、工業デザイナー、教師、ジュエリーデザイナー、版画家。ドイツのベルリンに生まれる。ベルリンとハンブルグで美術の指導を受け、ワイマールとデッサウのバウハウスで学び、バウハウスの講師になる。バウハウスで、アーティスト・色彩理論家である夫ジョセフ・アルバースに出会う。アメリカ移住後、1933~49年にブラックマウンテン・カレッジの准教授、その後はフリーランスで制作。ニューヨーク近代美術館、ハーバード大学美術館、イェール大学美術館などに所蔵作品多数。

「2015年 『デザインについて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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