- Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560084878
作品紹介・あらすじ
大作曲家と犬たちの愛情物語
本書はワーグナーの生涯のうち、リガを夜逃げし出世作となる『リエンツィ』を書いた時期からバイロイト祝祭の開始までという、もっとも重要かつ激動の時代を、当時共に暮らしていた犬たちに視点が寄り添う形で記している。ワーグナー自身の手紙や覚え書き、自伝といったオリジナルなテキストと、同時代から現代にいたる研究書や評伝をもとにした記述を大胆にリミックスした、物語のように読める斬新な評伝である。
動物には理性がないと決めつけ、人間より一段下に見るような傲慢な考え方とは、ワーグナーはいっさい無縁だった。幼いころ、犬がらみで衝撃の体験をしてしまったワーグナーは、通りすがりの他人の馬車馬の扱いや家禽の運送方法にまで心を痛めるようになる。犬たちも、元の飼い主を捨て、自分からワーグナーのもとにやってきた。彼の人生の重大な局面のあれこれは、犬をはじめとする生き物たちの存在があったからこそ起こったのであり、著者は、生き物たちとの交流とそこから生まれた思想が作品に影響を及ぼした可能性まで、さまざまに考察する。
笑いと涙と感動に満ち、時には呆れつつも心揺さぶられる、敬意と皮肉とユーモアにあふれた一冊。
感想・レビュー・書評
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2016年8月30日に開催されたビブリオバトルinいこまで発表された本です。テーマは「ペット」。
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ワーグナーの人や生涯にあまり関心がなかったのだが、なぜか読んでしまった。ワーグナーの生涯を通じ、常に傍らに犬がいたらしく、ワーグナーが残した手紙や自伝その他にも犬についての記述が多くあるらしい。それをたどって、犬からみたらワーグナーの生涯はこんな感じだったのでは…と、いろんな資料から編み直されたユニークな評伝。
ヴィスコンティの「ルートヴィヒ」で、ワーグナーが大きな白いふさふさの犬とじゃれあっているシーンがあり、ヴィスコンティの伝記によるとどうやら撮影には牧羊犬(ピレネー?)が使われたらしいが、この時期に実際にワーグナーのそばにいたのは牧羊犬ではなく、スイス・ハウンドという犬で(ふさふさでもない)、借金取りから逃げ、妻とも不仲になり、ひとりで借りた家の大家さんの犬と妙にウマがあって一緒になったものらしい。
ワーグナーがひとりでライン河畔のビープリッヒという小さな町にやはり家を借りて住んでいたことがあるというのを初めて知った。そこで「指輪」の最初の構想を得たのかも?数年前、いろいろ苦労してマインツからエーベルバッハ修道院を目指したとき、ここも通ったので懐かしくなった。
ここでは大家のブルドッグが鎖につながれているのをみて悲しみ、放してやり、犬も自分のものにしてしまう。
ワーグナーは他人の妻だけでなく犬も奪いがちだったのか(笑)
この本で最初と最後に登場するのは、やはり巨大なふさふさの犬で、ニューファンドランド犬という犬種らしい。これはデカい!ワーグナー夫妻と子どもたちがニューファンドランド犬と写っている写真も残っている。ヴィスコンティはこの犬をみてピレネーぽい犬をキャスティングしたのかな。 -
すっごく面白い。翻訳もこなれてて読みやすい。