- Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560090626
作品紹介・あらすじ
アウシュヴィッツで26歳の若さで命を落とした天才画家の知られざる生涯。ルノドー賞、「高校生が選ぶゴンクール賞」を受賞した代表作
感想・レビュー・書評
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アウシュヴィッツで命を落とした若い画家。検索すると彼女の絵画が少し見られる。アルフレートの顔ばかりたくさん描いたなど、文中の描写に沿った絵もあった。幸運にも作品が残り、日本の絵画展で紹介されたこともあったようだが、読むまでシャルロッテ・ザルモンの名を全く知らなかった。どうやら世界的にも埋もれた画家になっているようだ。これが文学作品なら、ネミロフスキーがまさにそうであるように、書籍としてすぐ手に取ることもできるのだが…
この悲劇的な画家について、短い文章と所々に作家(フェンキノス)自身が自分語りをするという独自の方法で濃密に描いている。家族の多くが自殺するという「血」(そのような血筋というものが本当にあるのだろうか?偶然にしては確率が高すぎるにしても)を逃れたかもしれないシャルロッテが、ユダヤ人であるという違う血から命を落とすことになるとは。言葉がない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ヒトラーの時代、26歳の若い妊娠中の画家が殺された、という実話を基に書かれた小説。ほぼ全文が一文、一行と言う形をとっている。
研ぎ澄まされ、息をするのさえ憚られる程の繊細な、しかし全身に響いてくる力強い一行一行の構成が悲惨な状況に少し風を吹き込んでくれる。 -
★4.5
アウシュヴィッツ強制収容所で命を落とした、26歳の画家シャルロッテ。極限までに削ぎ落され、全ての文章が1行という異例の形態。が、シャルロッテが感じたことや置かれた状況は、余計な形容が無くても真っ直ぐに伝わってくる。そして、ユダヤ人としての境遇も辛いけれど、彼女の家系に根付く自死の連鎖がまた辛い。遺伝の問題だけでなく、身近に自死した人がいると境界を越えやすいのかもしれない。そんな中、生きることを選んだシャルロッテは、自身の全てを絵画に注ぎ込む。彼女の作品「人生?それとも舞台?」をいつか見てみたい。 -
散文の形でありながら、感じるのは読み易さというよりも、密度の濃さ。会話と地が追いかけっこするような文章のリズム。
26歳でアウシュビッツで断たれた命ということも痛ましくつらいけれど、彼女がたどってきた家族の歴史、家族との関係、彼女の人生そのものも重く濃く、痛ましいと感じるほど。彼女の絵から立ちのぼってくる愛しい人へのすさまじいまでの想いに、くらくらしてしまう。
痛ましくつらくとも、これが彼女の全人生。ある意味では羨ましい。 -
“創造するために生きなくては。
狂わないために絵を描かなくては。”(p.259) -
まるで詩のような文体は簡潔で潔く、すっと入ってくるように読めた。無駄を省いた言葉の美しさ。シャルロッテの悲しみが真っすぐ伝わってくるようだった。
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絵に自分の全てを託すとか常人はやろうと思っても出来ないって言うか、本気で命を狙われているみたいな極限状態が自然とそうさせる以外出来ないと思いますわ!
自分は感受性ゼロの悲しきモンスターなのでシャルロッテさんの作品の良さわかりませんが、稀有な環境が生んだ稀有な才能による命懸けの作品なら人の心を揺さぶるパワーがあるのだろうな。 -
自死は周囲の人間にも多大な影響を与えてしまう。
作者自身の想いも途中で語られ、何故このような形での作品になったのか示してくれる。