- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560093900
作品紹介・あらすじ
蛇行を繰り返す線路、不自然な円形の区画、広大な空き地。当時の地図から戦争の痕跡を探る。朝鮮、満洲、台湾、サハリンの地図も掲載
感想・レビュー・書評
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「地図専門家」が記す地図にみる戦争の刻印の数々。
いやすごいです。同じ場所の地図を見比べ、地図記号や等高線から地上の変化や当時の様子を類推する。古書店や図書館など古地図集めを精力的に行っているもよう。
そんな本を著した著者は中学生の頃から国土地理院の地形図や時刻表に親しみ、1991年に独立し旅行ガイドブック等へのイラストマップ作成、地図・旅行関係の雑誌への連載をスタート。現在は一般財団法人日本地図センター客員研究員、日本地図学会「地図と地名」専門部会主査などを務める。
<戦争の傷跡>
広島は空襲直後の消失部分は縦線で表記、東京鎌田では戦火の延焼防止のため建物を取り壊した「建物疎開」のあとは、奇妙な帯状の広い道路に、昭和7年と昭和22年の名古屋城周辺の地図では、昭和22年は城の建物が消され「名古屋城跡」に、などなど。
<植民地と領土>
韓国南西部全羅道の港湾都市群山(グンサン)の昭和6年の地図には、干拓が行われ、山形、福島、岩手、岡山、熊本、などの文字とともに「不二興業会社干拓地」の文字も。これは移住者が出身県別に10戸単位で集められ出身地が地名になっているという。1964年の韓国地図をみるともちろん違う表記になっていたとある。
昭和7年12月発売の「少女倶楽部」の付録では「学習日満地図」が。古書店でみつけたという。本では満州部分のみだが、実物では続けて樺太から朝鮮・台湾を含む地図だとある。欄外には鳩山由紀夫氏の祖母で当時の文部大臣鳩山一郎婦人であった鳩山薫さんの言葉「少女倶楽部のやうなよい雑誌が、日本中にひろまることが、やがて日本中の少女を立派にすることと思ひます」と印刷されているとある。その後の歴史を考えると複雑な感慨だ。
<地図が隠したもの>
戦争中のもので、外部には知らせたくない軍用施設などは内部地図では表記するが、外部用には表記しない。
日光の昭和8年の地図では、清滝にある古河鉱業の「精銅所」の文字が消え住宅地に偽装されている。
外国のものもあり、
ベルリンの1997の地図には90.9メートルの山が等高線であり、これはベルリンの瓦礫の山を戦争未亡人など「瓦礫女」といわれる女性が積み上げて、現在も小山となっているもので、「瓦礫山」と名付けられたものだという。1967年には植林がされ今は森になっているという。
白水社HPで2009.5月から2011年1月まで連載された「地図で読む戦争の時代」に大幅に加筆修正したもの。
著者1959横浜市生まれ
2011年の増補改訂版
2023.11.25発行 図書館 -
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