ビザンツ帝国の最期[新装版]

  • 白水社
5.00
  • (2)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 43
感想 : 3
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560094358

作品紹介・あらすじ

ひとつの国の滅亡の過程をつぶさに描く

 1453年5月28日、ビザンツ帝国皇帝コンスタンティノス11世は、コンスタンティノープルを包囲するオスマン・トルコ軍に対し最後の戦いに臨もうとしていた。出陣に際しての演説は、「たとえ木や石でできた者であっても涙をとめることができなかった」と言われるほど感動的なものだった。翌未明、城壁がついに破られたと悟った皇帝は、死に場所を求め敵中に突入する──
 悲愴で劇的な、長らく語られてきた帝国滅亡の場面である。だが悲しいかな、この出来事を伝える記録は偽作であることが今日では判明している。では実際にはどうであったのかを、当時の他の記録を見ていきながら、その背景にあるビザンツ人の価値観や複雑な国際政治の現実を、最新の研究成果を盛り込んで分析したのが本書である。
 同じキリスト教の西欧諸国は、かつて十字軍で都を征服した敵でもある。一方、かなりの期間、ビザンツ人とトルコ人は必ずしも敵同士ではなく、日常レベルでは平和に交流していた。両者のはざまで、皇族から都市民衆まで個々人が、危機に際してどういう選択をしたか、著者は包囲戦の百年前から帝国滅亡後の人々の動向まで描いていく。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み

  • ビザンツ帝国の最期[新装版] - 白水社
    https://www.hakusuisha.co.jp/smp/book/b607730.html

    -------
    「ビザンツ帝国 生存戦略の一千年」此方も復刊しないかな?

  • これはとても面白かった。名著だと思う。ビザンツ帝国の最期50年ほどの歴史をロマンではなく人々が自分たちの生活のために行う駆け引き、保身、国内の権力闘争の結果として生き生きと書いていて、カトリック、イスラームとの宗教上の軋轢もあくまでそれらの手段であり、戦争と交渉によって使ったり引っ込めたりされる様子は面白い。ビザンツ帝国、オスマン、ジェノバやヴェネツィアなどの諸都市、ローマ教皇、それぞれの内側に派閥や駆け引きがあるかなり複雑な過程なのだが、引き込まれてするすると読まされてしまうのはすごい。同じ名前の人が何人もいるのでたまに混乱はするし、もちろん個々の人物の内心まですべてが分かるわけではないけれども。
    普段は国や宗教の大きな枠でしか歴史は顧みられることはないけれど、末端の市民や兵士たちまでを含めて人間臭い考えと行動の集積が巨大な流れを結果として生むのだなと感じられてよかった。これって、訳者が否定していた「歴史のロマン」になるのだろうか。でも、面白いものは面白いんだもの、しょうがないよね…。

  • 最末期のビザンツ帝国の構成した様々な個人の動向を中心に、15世紀始めの首都包囲から滅亡までを描く内容。単純化できない多様な意思決定の叙述や滅亡後の離散の状況など非常に興味深い点が多かった。

全3件中 1 - 3件を表示

著者プロフィール

ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校ヘレニック・インスティテュート教授(ビザンツ史専攻)。ビザンツと西欧の関係、とくに十字軍、イタリア・ルネサンス、1453年以降のギリシア人ディアスポラを専門とする。著書は他に『ビザンツ帝国 生存戦略の一千年』(白水社)など。

「2022年 『ビザンツ帝国の最期[新装版]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ジョナサン・ハリスの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×