- Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560098387
作品紹介・あらすじ
誰も取り締まらない、誰も訴えない、誰も報じない、だから誰も知らない。公海上で横行する違法・脱法行為の数々を暴いた衝撃のルポ。
感想・レビュー・書評
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陸上での生活と違い、海上はまるで何世紀も前の奴隷のような暮らしを強いられている。しかも現在進行形で…。船員は乗船する時点でパスポートと携帯を没収され、社会から完全に隔離されてしまう。もし全船員がスマホを所持することができて、問題があれば写真や動画をインターネット上に即座にアップロードし、被害者の声を世界中に届けることができるなら、どれほど多くの人々が救われるだろうか。
そして政府は他国から航海中の船の査察が求められると、その船が籍を置く国の登録局が即座に船籍を剥奪し、問題に対して無関係を決め込む。旗国は管理監督を行わず、金さえ払えば船籍登録を受け入れる。金儲けしか考えていない腐った人間のなんと多いこと。
最終章で述べられる日本の捕鯨船についても結局は同じで、日本政府が年間予算を組み、調査名目として膨大な金額が捕鯨のために使われている。政府役人も予算が減らされないよう必死になるし、あまりにも多くの人間が関与して甘い蜜を吸っているため、日本から捕鯨を無くすことは無理だろうと思う。
シーシェパードやグリーンピースの実績はたしかに感心する部分もあるが、彼らが日頃から追いかけ回している悪人たちと同じことをしているではないかと疑問に思う部分もある。
なぜ陸と違って海上では不条理が続くのだろうか。なぜ人間を奴隷のように扱い、自由を剥奪して命を弄ぶことが許されるのか。なぜ殺人鬼は捕まらず、無法地帯と化しているのか。考えるほど暗く悲しくなってしまう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ルポルタージュ
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最後が日本の捕鯨かよ
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上巻にまとめて記載
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非常に良いノンフィクションに出会った。大作で読了に時間はかかるが、読む価値はある。海の人権問題がいかに深刻かよく分かり、ほとんどの人にとって本でしか経験できない事となるだろう。ドキュメンタリーテレビなどになるはずもない内容だし、売れそうもないので映画にもならない。この本でしか得られない経験になるし、今の世の中の闇をこれでもかと思い知らされる。
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法が及ばず、搾取され、ごみと化す海で生きる人びとの倫理と道徳のコンパスは、陸に住む我々とは違う方角を指している。
何も最初から、タイの巻き網漁船は借金で縛りつけた出稼ぎ労働者たちをコキ使っていたわけではない。
国の景気が良くなり人手不足となったため、働いてくれる外国人労働者に気前よくお金を払っていたのだが、次第に仲介ブローカーが出てきて一変する。
売春宿を兼ねたカラオケバーで文無しの男たちを通わせて、借金漬けにしたら一丁上がりで、気付いたら海の上。
おまけに船上でシバキ倒して働かせても儲けはわずかの火の車状態。
天井まで120cmしかない狭苦しい巻き網漁船の船員室で、カンボジアの少年たちがわざわざハンモックを吊るして寝る理由がわからず床で寝ていた著者も、その夜わずか10分でアドレナリンに蹴飛ばされて、床にうじゃうじゃ這い出してきたネズミを見てすべてを了解する。
悪臭の描写もエモい。
「部屋に漂うむうっとする臭いを喩えるならば、使い古したアメフトのプロテクターに残っていた汗を搾り取り、そこに尿と魚をすり潰したものを混ぜて煮詰めた臭いだ」
主に商船の海上警備にあたる武装警備員が常駐する武器補完船を取材するため船に乗り込んだ著者は、軍隊上がりの筋骨隆々のマッチョな傭兵たちに囲まれ、最近はメッキリ海賊行為が減って出動要請がかからず、"魂の圧力鍋"と呼ぶ行き場のない退屈という重力に曝されたストレスで、男性ホルモンがいまに癇癪となって吹き出しそうな男たちにおそるおそる話を聞いている。
脅威を感じたら、とっと引き金を引くにかぎると警備員たち。
「(棺桶となって)6人に担がれるよりも、(法廷で)12人に裁かれる方がマシ」なのだと。
「海は資源を採取したりごみを捨てたりする場所ではない。人間が手出しするべきではない広大な聖域であり、できれば保護して繁栄させるべき生き物たちの楽園なのだ。海とは、わたしたちの懐と腹を満たすものではない。他者への思いやりを広げ、生物多様性を育み、人間には自分たち以外の地球の住人たちと調和して生きる力があることを証明する場でもある」 -
ここでは、シーシェパードが日本の捕鯨船を追うシーンが多く出るが、政治的駆け引きと最新鋭の装備を使い追いかけっこをする。
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東2法経図・6F開架:368.6A/U85a/2/K