国旗で知る国際情勢

  • 原書房
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本棚登録 : 29
感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784562053971

作品紹介・あらすじ

「旗」で世界を知る。ベストセラー『恐怖の地政学』の著者が、「旗」に表現された様々な意味――国民性や価値観、歴史と地政学的条件を紹介していく。そしてなぜ私たちは「旗」にこれほど愛着を覚えるのかを明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • こんな本が書けたら、訳せたらなあ。夢です。

  • 本書は旗にまつわる物語を紹介した本だが国旗辞典ではない。国旗だけではなく国連旗やオリンピックの旗についてのエピソードもある(原題を訳せば『命を懸ける価値がある 旗の威力と政治』といった感じか)。選ばれたのは「最もよく知られた国旗のいくつか、やや知名度の低い国旗のいくつか、そして、単純に最も興味深い歴史を持ついくつかの旗の物語」である(12ページ)。初めの2つの章を別にすれば、本書には特定の国旗が章タイトルとなっている章はない。地域や宗教を切り口にして、旗にまつわるストーリーをつづっていく。

    英国生まれの著者がユニオンジャックではなく星条旗を第1章に持ってきたのは、星条旗が世界で最もよく知られている国旗だからだ。けれどもひょっとしたら、米国人が自分たちの国旗に対して抱く愛着――あるいは執着の強さに著者が敬意を表したのかもしれない。「アメリカでは旗の製造は大きなビジネスで、毎年5000万枚が売れている」という(38ページ)。外国産の旗も多いようだが(予想どおり大半は中国製だという)、外国製の星条旗を売ることが違法とされる州もある。

    国旗の取り扱いは国によってさまざまだ。英国のユニオンジャックは慣習的に国旗として扱われているだけで、「国旗法」のような法律があるわけではない。もちろん、星条旗を神聖なものとして崇める米国には「国旗法」があるし、国旗の上げ下げから古い国旗の燃やし方に至るまで細かいルールが決められている。ちなみに日本では1999年に成立した「国旗国歌法」の第1条が日章旗(日の丸)を国旗として定めている。

    多くの国旗に使われている色はせいぜい3色程度で、描かれている図形も複雑なものは少ない。フランスやイタリアの三色旗(トリコロール)を思い浮かべてみればよい。興味深いのは、同じ色でも国や地域、あるいは宗教によって違った意味合いがあるということだ。もちろん共通部分もある。旅先で「イスラムにとって緑は大切な色なんです」という話をよく聞く。とは言え、イスラム教国のすべての国旗に緑が入っているわけではない。例えばエジプトの国旗は赤白黒の三色旗に黄色のマークが描かれている。

    本書に登場するたくさんのエピソード(そして原題)が示すように、旗というシンボルには大きな力がある。旗は人びとを1つにまとめることができる。ただし、旗のメッセージは見る人の立場によって受け止め方が違ってくる。旭日旗(第6章でふれている)が日韓や日中の間に争いの種をまいていることは誰でも知っているだろう。旗のメッセージが強力であるという一例である。

    著者は、第9章で国連旗や「地球の旗」――そんな旗があることを本書で初めて知った――を紹介しながら、「それぞれ異なる旗を持つにせよ、ひとつの家族であることを思い出させてくれる」と本書を締めくくる。国旗を見てエピソードを読むことで、普段の生活ではまったく思い浮かべない国や地域に住む人たちのことが思い浮かぶ。今後さらに重要になってくるだろう「ひとつの地球」という意識を高めるためにも、本書はとても有益な本だと思う。

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著者プロフィール

1959年イギリス生まれのジャーナリスト。コソボ紛争、アフガニスタン侵攻、アラブの春の反政府デモ等、世界各地の紛争地域で取材を重ねる。著書に『恐怖の地政学』など。

「2020年 『地政学でわかるわたしたちの世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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