- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784562072392
作品紹介・あらすじ
古代バビロニアの粘土板、北欧神話、大航海時代の世界図、金星探査画像、ロンドン地下鉄路線図、津波マップ、アフリカ分割図、トールキンの物語の地図等々、さまざまな角度から、「地図」と人間の営みについて読み解いていく。
感想・レビュー・書評
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ふむ
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「世界を変えた地図」とは、地図が人の認識を変え、行動を変え、歴史を変えたということ。下巻の副題は「ロンドン地下鉄からトールキンの中つ国めで」。上巻に続き、その地図が出現するまで見えなかったものを可視化する二次元の表現物が次々取り上げられます。メルカトル図法を引き合いに出すまでもなく、もともと三次元のものを二次元に落とし込む訳ですから、そこには省略とか解釈とか意図とか作成者の編集が入ることが必然なのであります。なので「世界を変えた地図」は地図の作者が、世界をどう捉えたか?だけではなく、人々にどうとらえさせようととしたか?という欲望の表出でもありました。先住民から強奪の方法として、領土問題の主張として、戦争勝利の武器として、さらにはユートピアを現実のものとする設計図として、下巻では地図の禍々しい要素を強く感じました。ボーア戦争のコレンゾ、第一次世界大戦のティプヴァァル、パッシェンデール、第二次世界大戦のダンケルク、オハマビーチは現在のウクライナでの戦争と地続きですし、ゲッペルスのプロパガンダ地図やイスラエルの建国地図もまさに2023年の問題として現存しているように思います。本書には取り上げられていませんが、日本の大東亜共栄圏の地図も太平洋戦争の燃料だったかもしれません。地図が世界を変えていくように、世界は地図を変えていく。地図は不変じゃないことを知りました。